第54話

「音無、会計済ませておくから先に出といてよ」


 夕方。

 コンビニにきた俺たちはアイスやおやつをカゴに入れてレジに並んでいた。

 彼女と連日のコンビニデート。

 それはもう、優越感と充実感でいっぱいのはず。


 しかし俺は、入り口の近くの棚にあるアレをどうやって音無にバレないように買おうか必死だった。

 もう事後なので今更照れる話でもないのかもしれないけど、アレを買うことで四六時中えっちなことばかり考えているんじゃないかと疑われるのが嫌だというのもある。

 

 まあ実際今日はずっとそうだったし。

 だからバレないようにこっそり買っておこうと、音無に先に外へ行くように促す。


「なんで? そんなに私と一緒に買い物してるの嫌?」

「そ、そんなことないって。いや、外涼しいから先に行ってたらどうかなぁって思っただけで」

「私に隠れてあの店員さんと仲良くなろうとしてない? ねえ、してない?」

「し、してないって」


 確かに今日の店員さんは若い女性だが、大好きな彼女の前でナンパしようなんて考えるはずもない。

 しかし音無はなぜかイライラしていて、俺を睨む。 

 このままではまずいと思い、一度列から離れて音無と店の隅の方へ。


「ご、ごめんって。ほんと何もないんだよ」

「じゃあ、なんで先に一人で外にいかそうとしたの?」

「そ、それは……」

「正直に答えてくれたら怒らないもん。でも嘘ついたら怒る」

「……実は」


 店内なので小さな声で。

 俺はアレを買いたかったのだと正直に告白した。


 そしてアレを買っているのを見られると、えっちなことばかり考えてるんじゃないかと思われるのが恥ずかしかったからだと。


 そう話すと、音無のこわばった表情がだんだんと柔らかくなっていく。


「ふふっ、なあんだ。じゃあ、それは私が買っておくから黒崎君は外で待っててくれる?」

「え、なんで?」

「ほら、急にそんなこと言われたらびっくりするでしょ? 私、一人で外にいるなんて寂しいのに」

「ご、ごめん」

「ううん、大丈夫。でも、私を困らせたから罰として一人で外で待ってること。ねっ?」

「う、うん」


 いつになく明るく話す音無の様子に、俺は少し首を傾げながらも外へ。


 アレを買うのは恥ずかしいから嫌がると思ったけど、音無はそうでもないようだ。

 まあ、何にせよ今日からは安心して音無と夜を過ごせる。


 ああ、楽しみだなあ。

 これから毎日こんな生活が続くなんて夢のようだ。


 少し薄暗くなった空を見上げながらニヤけていると、レジ袋を下げた音無がコンビニから出てきた。

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