第51話
「ふふっ、また私の勝ちだね」
二人でベッドに横になって何度かゲームを終えた。
結果は音無の全勝。
俺はというと、すぐ隣に音無が寝転がっている現状に冷静さを失い、ゲームどころではなかった。
ずっとうつ伏せだったのだって理由はもちろん、わかるだろう。
「そういえば、勝ったご褒美とか考えてなかったね」
「そ、そうだね。でも負けたから、音無がしたいこと決めてもいいよ」
「じゃあ、私から黒崎君にお願いしよっかなあ」
ゲームの電源をそっと落としながらベッドに仰向けになる音無に俺はまたドキドキさせられる。
ベッドの上でのお願い。
それってもしかしてもしかすると、なんて妄想が頭から離れない。
体中をドクドクさせながら音無の言葉を待つ。
「今日は一緒に寝ない?」
その言葉に、俺の胸がぎゅーっと締め付けられた。
「い、一緒に……」
「ダメ? せっかく楽しかったし。お話しながら寝たいなって」
「あ、ああうん。そう、だね。い、いいよ」
音無に下心なんてない、はずだ。
彼女はただ、俺との時間を楽しいと感じてくれていてだからこのまま話をしていたいと言ってくれてるだけだ。
そうだ、そうなんだ。
だから俺がここで下心を見せたらダメだ。
まあ、もちろんそんな流れになったところで肝心のアレがないからどうすることもできないわけだし。
もう夜中だから、今からコンビニに買いに行くことも無理だ。
よし、踏ん切りがついた。
今日は彼女と一緒に楽しく夜を過ごそう。
「じゃあ、そろそろ電気消す?」
「うん。そうしよっか」
気持ちを切り替えた俺はそのまま部屋を消灯。
そして暗くなった部屋の天井を見上げるように仰向けになると、隣から音無の声が聞こえる。
「ふふっ、狭くない?」
「う、うん全然。音無こそ」
「京香」
「き、京香こそ狭くない?」
「全然。でも、もうちょっとそっちいっていいかな」
音無が俺の方へ寄ってきた。
そして、俺の左腕に何か柔らかい感触が。
その時俺の心臓がまた、ドクンと大きく脈打った。
「ええと、あ、暑くない?」
「んーん。こうしてたい」
俺の腕に抱きついて離れない音無。
俺はもう、硬直して動けない。
動いたら負け。
もう、自分を抑えられない。
さっきまでのスッキリした気持ちなんてどこにいったのか、俺の頭の中はひどい妄想で溢れかえっていた。
しかしもちろんダメなものはダメ。
このまま彼女に襲いかかるなんてことは、したくてもできない。
まだそんな準備もしていないわけで。
でも、もしも都合よくアレがあったら俺は彼女をこのまま抱きしめてしまうのだろうか。
都合よく。
アレが降ってきてくれたら。
そんなことを思っていると。
枕元からカサカサと。
何かが落ちてきた。
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