第50話

「ぺろぺろ、ぺろっ」


 音を立てながら美味しそうにアイスを食べる音無は今、俺のベッドの上でゴロゴロとしている。


 寝ながらアイスなんて行儀が悪いじゃないか、とかそんな注意をする気にもなれない。


 あまりにも無防備で、無邪気に俺のベッドに横になる音無を見て俺は自分の欲望を押さえ込むのに必死だった。


「黒崎君は、食べないの?」

「え、ええと、どうしようかな」

「食べたくないの?」

「そ、そんなことはない、けど」

「そっか。食べたくなったらいつでも言ってね」


 音無はまた、美味しそうにアイスをペロリと舐める。


 俺はもう、あちこちが熱くなって頭の中はぐるぐる回ってて、アイスどころではない。


 正直、アイスを取りに立ち上がることすら躊躇ってしまうほど。

 俺の下半身はもう、色々限界だった。


 こんなところを見られたら、ドン引きされる。


 なんとか鎮めないと。


「食べないの?」

「え、ええと、ま、まだいいかな」

「そっか。じゃあゲームでもする?」

「そう、だね。うん、そうしよっか」


 渡りに船、というか。

 音無の方からゲームのお誘いをしてくれたおかげで俺も気が楽になった。


 ずっと俺のベッドに寝転んだままアイスを食べている彼女を横目に何もせずに耐えられる自信はなかった。


 ゲームでもして気を紛らわせていたらそのうち眠気もくるだろう。


「よし、それじゃ何のゲームしよっか?」

「私、これのスコアを競いたいかな。どう?」

「うん? いいけど、それって」


 音無が見せてきたゲームは、俺のベッドの枕元に置いてあった携帯機型のゲームと、パズルゲームのソフトだった。


 一世代前のものだけど、このパズルゲームが未だ現役とあって今でも持っている人は結構多いんだけど。


「これ、一人用だけど」

「知ってる。だから交代でやって、スコア競うのはどうかなって」

「あ、ああなるほど。でも、俺がやってる間退屈しない?」

「んーん、全然。見てるのも楽しいし」


 そう言って、音無はカセットをゲームに入れてベッドにうつ伏せになった。


「じゃあ私からね」

「う、うん」

「見ないの?」

「え、でも」

「隣、来ないの?」

「あ……うん」


 当然この状況で彼女のゲーム画面を見ようと思うなら、隣に横になるしかなかった。


 俺は恐る恐る、ゆっくりと彼女の横へ。


 そして俺の重みでベットがきしむ音を立てながら。


 音無は楽しそうにゲームを始めた。

 


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