第25話

「おいおい、やったじゃねえか」


 学校に着くと、高市が真っ先に俺のところへやってきた。


「なにがだよ」

「いやー、まさかお前に先越されるとはなあ。でもおめでとう」

「だから何の話だよ」


 話が見えてこない。

 何がおめでとうなんだ?


「ま、とにかくよかったよ。頑張れよ」

「お、おい待てよ」


 高市は何もはっきりさせないまま行ってしまった。


 ちなみに今朝も音無と一緒に登校してきたんだが、いつもより心なしか皆の視線が気になった、気がした。

 高市の発言と何か関係があるのだろうか。

 

 というより、今もずっと見られてる気がする。

 クラス中から。


 もしかして、俺と音無が毎日一緒だから付き合ってると誤解されてるとか?


 うーん、それならありえなくはない。

 最近までずっと一人で行動していた音無が急に男と一緒に登下校を始めたんだからそんな勘繰りはされて当然とも言える。


 まあ、俺は別に勘違いされて困るわけでもないし放っておけばいいけど。


 音無は、迷惑してないかな。

 

「なあ音無」


 周囲のざわつきなど気にも留めない様子で席について本を読んでいる音無に話しかけてみた。


 すると、


「……なに?」


 無表情なまま、音無がこっちを見た。


「あ、あの」

「どうしたの?」

「あ、いや。なんでも」

「そ。そろそろ授業だね」


 なんともそっけなかった。

 俺は、もしかしたら音無が何か誤解を与えるようなことを周囲に漏らしているんじゃないかなんて考えていたがそんなはずはやっぱりなさそうだ。


 音無はそういうことに興味はないんだもんな。

 結局、下心を覚えてるのも勝手に期待してるのも俺だけなんだ。


 ほんと、こんな気持ちを知られたら一緒になんかいてくれないだろう。


 音無の俺への気持ちがわからないうちは、あまりへんなことは考えないようにしないとな。



「……」


 黒崎君が、学校で自然に話しかけてくれるようになった。


 やっぱり昨日、一夜を共にしたから仲が深まったんだね。

 嬉しい。

 私、ほんとなら今ここで抱きついて昨日みたく膝枕してほしいって思ってるけど。


 学校だから、我慢する。


 黒崎君も、ほんとは昨日みたいに私にキスしたいはずなんだけど我慢してくれてるんだし。


 えへへ、しちゃったもんね。

 起きた私にもたれかかるようにキスしてきた黒崎君の積極的な気持ち、とても嬉しかった。


 そのあとすぐ、寝たふりしちゃう照れ屋さんなところも、大好き。


 昨日は頑張ってくれたから。

 今日は私からがんばるね。


 お仕事終わったらー、さりげなく。


 キスしちゃお。

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