第23話


「じゃーあ、罰ゲームだね」


 私はゲームに勝利した。


 いよいよ、運命の罰ゲーム。

 お仕置きの時間だ。

 ううん、お仕置きされたい。

 でもそんなことははしたないから言わない。


 私がお願いするのはこれ。


「ねえ、膝枕して頭撫でて」


 まるで猫のように。

 愛でて。

 

「……」


 黒崎君は何も言わずに私を見つめていた。

 もちろんいいってことだよね。

 その膝を、太ももを、お借りします。


「えへへ」


 黒崎君の太ももは意外とがっしりしていて、あたたかい。


 やさしさに包まれるような感覚だ。


 そして、私の髪を撫でる彼の手はとても男らしく、でもやっぱり優しい。


 私はなんとも言えない多幸感に包まれながらうっとりと目を閉じる。


 さて、次はどんなお願いをしようか。

 ハグ?

 それとも添い寝?


 ううん、今日は最後までしちゃうんだから。


 罰ゲーム一個とは言ったけど、またゲームで勝てばいい話。


 えへへ、幸せ。

 ずっとこうしていたい。





「……寝てる」


 ゲームのプレイ中に彼女は寝落ちしてしまった。

 疲れていたのだろうけど、急に肩にもたれかかってくるからドキドキしたよほんと。


 まあ、今の方がもっとドキドキしてるけど。


「……寝顔可愛いな」


 今は俺の膝の上で眠っている。

 きっと目が覚めたら飛び起きて逃げられるんだろうけど。


 まるで猫みたいに可愛い。

 さらさらした髪も、くすぐったいけど心地よい。


 ずっと、こうしてたいな。


 いつも、猫が好きかと聞かれる度にドキっとさせられる。


 好きだよって言う度に胸が締め付けられる。


 まあ、もちろん猫も好きなんだけど。


 でも、俺は。


「……音無のこと、好きだな」


 もし起きてたらとんでもないことになるが、聞こえてないみたいだからこうして言える。


 俺はもう、この子が好きだ。


 だからこそ、ずっとこうしてたいから何もしない。


 嫌われたくないから。


「でも、音無はおれのことどう思ってんだろな」


 眠る彼女に聞いてももちろん返事はない。


 だから俺も、静かに目を閉じた。


 彼女の髪を、そっと撫でながら。


 


 

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