第22話

「……」


 音無と二人で俺の部屋に来た。


 音無から「早く部屋、行こ?」と誘われたからなのだが一体ここで何をするつもりだというのか。


 狭い部屋でできるスポーツとは、卓球とか?

 それとも俺の知らないゲームがあるのか?


 なんて考えていたせいでうっかりしていたが、冷静になると今はとんでもない状況だということに気づく。


 夜に女の子を部屋に連れ込んでしまっている。

 しかも親もいない二人っきりの家で。


 これはやばいなんてものではない。

 恋人同士であればこのまま電気を消して、なんてことも十分あり得る展開だ。

 もちろん、俺たちは恋人ではないのでそんな大それた真似をしようとは思っていないし、思っちゃいけないんだろうけど。


 音無はこの状況をわかってるのか?

 

「あ、あのさ音無……何するつもりなんだ?」


 辛抱できずに聞いた。

 この際、何をしたいか言ってくれた方が俺の邪念も晴れるというもの。


 しかし、


「言わないでも、わかるじゃん」


 もったいぶられた。

 それに音無は心なしか息が荒く顔が赤い。

 風呂上がりだからなのか、それとも風邪気味なのか、それとも別に火照る理由があるのか。


 とにかく、言わないでもわかる遊びとはなんなのか。

 まずはそれを当てなければ。


「……ちょっと待っててくれる?」


 俺はおもむろにテレビの下の棚を漁りはじめた。


 そして引っ張り出してきたのはゲーム機。

 最新のものではないが、俺たちが小学生の頃に流行ったものだ。


 きっと音無も一度はやったことがあるだろうし、部屋で二人で遊ぶなんてゲームしかないだろう。


「ほ、ほら懐かしくない?」

「……ゲームするの?」

「あ、あれ違う?」

「んー」

「ええと、だけど楽しいと思うよ? 嫌じゃなかったら一回、どうかな」

「……やってみる」


 どこか不満げだが、音無は俺の隣へ。

 どうやらやりたかったことはゲームではなかったみたいだが、今はゲームでもやりながら音無の真意を確かめていくしかない。


 ゲームを繋いで電源を入れる。

 ぷよぷよした可愛いキャラを落として消すあのゲームだ。


「あの、俺もそんなに得意じゃないけど」

「私も。じゃあ、負けたら罰ゲームとかどうかな?」

「あ、いいね。どんなのにする?」


 軽いノリで返事をすると、音無は嬉しそうに頷いた。

 そして、唇を人差し指でスルッとぬぐいながら言った。


「負けた人が、勝った人の言うこと一つ聞くとかどうかな」

 

 

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