第2話

男が目を覚ますと、森の中にいた。

辺りはすっかり暗くなっており、横たわる男の側で焚き火が煌々と輝いている。その向こうにはうっすら人影があるようだった。

俺はどうなったんだ。不思議なことに一度失った体の輪郭を感じる。

しかし体は自由に動かなかった。どうやら手足を縛られているらしい。それに全裸だ。何がどうなっているんだ。

男がとにかく動こうともぞもぞしていると、焚き火の向こうの人影が立ち上がり、こちらへ向かってきた。やがてそれははっきりとした人間の形になり、男の前に現れた。

異様な格好をしている。身につけているのは動物の毛皮であろうか。しかし見たことのない斑点だ、なんの動物であろうか。それに毛皮一枚被ったその格好は、まるで博物館で見る石器時代の人間を模した人形のようだ。ぎょっとして見上げると、その人間の顔には入れ墨がしてあり、歌舞伎の隈取のような赤いラインが引かれていた。

「おい、これはなんなんだ」

男が縛られていることを抗議すると、入れ墨は無言で手にした槍のような棒の石突で男の腹をついた。

痛い。なんなんだ、ここはどこだ、こいつは誰なんだ。

男がのたうち回っていると、入れ墨はウオーと奇声をあげ槍を振りかざし、石突で男を滅多突きにしてきた。

「やめろ。何をするんだ。痛い、痛い」

男は叫んだが、入れ墨は手を緩めない。

やがて男は大人しくなった。

入れ墨はそれに満足したのかようやく手を緩め、そして毛皮を脱ぎ全裸になった。

その下腹部には、起立したイチモツが見たことのない角度で天を突いていた。

くそっ、なんだ、なんなんだよ。

動けなくなった男をうつ伏せにすると、入れ墨は男の腰を掴んで引き上げ、そしてそれにゆっくりと自分のイチモツを沈めていった。

「ああああああああ」

言葉にならない嗚咽が男の口から漏れる。

しかし手足は縛られ、体の骨も折れてしまったのか全く力が入らない。

やがて入れ墨の息は上がり始め、フーフーという息遣いと、肉と肉がぶつかる音だけが暗い森に響き渡った。

一体何が起きているんだ。男の視線が痛みで天を仰ぐ。

すると夜空には二つの月が輝いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る