第39話 撮影、会
温泉宿に向かう途中、僕ははる・紀にお礼を言った。
くじ引きをいい感じに盛り上げてくれたことと、
さくらと上手く絡んでくれたことに対して。
「あらっ、鉄矢Pはちゃんと分かってたのね」
「感心、感心。スキャンダルは命取りだからね」
ちょっと、恐縮。
「でも、本気でないなら気を付けなよ!」
「さくらって子、君のところのアキレス腱だね!」
「さくらが……」
アキレス腱。跳躍力の源ともとれるし、弱点ともととれる。
「……どっちの意味でしょうか?」
「んー、両方、かな。強みにも弱みにもなる、かな」
「そういう点では、Pの腕の見せどころね、きっと」
本当に真剣な表情で言われてしまう。大きなプレッシャーだ!
「まぁ、なんにせよ。友好を育みたいものよ」
「君のユニットのみんなとも。君、自身とも!」
「うっほっ!」
両腕に胸を押し付けながら言われてしまう。
やわらかいプレッシャーだ。
温泉宿に到着。
8人で受付の人に元気にあいさつする。
「はいはい。こちらこそ、よろしくね。
注意事項がここに書いてあるから、よく読んどいてね」
かわいらしいおばあさんだ。
注意事項は細かいが、どれも常識の範囲内。
普通に温泉に浸かって出る分には問題ない。
ただ、料金設定は細かくて複雑。聞いた方がはやい。
「あの、人数のことなんですが。2枠とも8人で使えますか?」
「うん、もちろんいいよ。その場合、間の15分についてだけど。
規定により清掃はしないけど、利用料が発生します。合計4万円ですね」
計算すると、1人当たり5000円。
それくらい、どうってことないさ、どうってこと……。
「撮影する場合は公開するしないに関わらず、追加料金が必要です。
無料貸出のライトは防水だけど、温泉に浸けるのはお断りだよ。
撮影、するのかい?」
追加料金は、カメラ1台につき1万円。ってことは、合計10万円になる。
さすがに赤字になってしまう。よし、辞めておこう!
僕より先に、はる・紀。
「もちろん、お支払いいたします!」
「ライトは3つ借りてもいいですよね!」
「はい、まいど。ご自由にどうぞ!」
こうして、大枚を叩いて撮影することになってしまった。
カメラマンは不在だけど、急遽開催となった水着での撮影会。
みずほとのぞみが興奮気味に言う。
「どうしよう。私、水着で撮影なんて、はじめて!」
「ほんとう。自信ないよぅ」
あまり緊張されるといい動画にならない。今からでも撮影を中止にしようか。
「わぁーい。温泉。水着。鉄矢Pといっしょ!」
「温泉ビギナーにはさまざま助言するから、期待してくださいね」
さくらとこだまがタッグを組んだ。
やっぱり、中止だ、中止。撮影中止だーっ!
絶対に何かが起こるんだから!
「大丈夫よ、私たちがリードするから。Pはドンッと構えていてね」
「みんな、Pに水着姿を見てもらおうと、張り切ってるんだから。私たちも!」
はる・紀の支援だなんて、よけいに心配だ。
僕の両腕に2人して胸を押し当てている時点で、心配だ!
はる・紀が自演しながらみんなを指導する。
「いい? こうしてここにたってジャンプ!
カメラ外で普通に脱いだら、元の位置に戻って大きくジャンプ!」
脱ぎ方は普通だけど、あとが普通じゃないって。
ミニめの白ワンピを僕の頭から被せるんだから。
まだ、生温かいのに。少し、酸っぱいのに。
「胸の大きい子は、大きくジャンプするのよーっ。揺れるからーっ!」
「なるほど。参考になります!」
何のアドバイスだ。こだま、前のめり過ぎ。
「今のを編集すれば、一瞬で水着姿になるからね!
じゃあ、最初はひかりちゃん! やってみて」
「はっ、はい。ウチ、頑張ります!」
ひかりがカメラの前でジャンプ。着地すると、直ぐに浴衣を脱ぐ。
それを僕の頭に被せて、元の位置に戻る。最後に、再び大きくジャンプ!
「どうですか、今の?」
僕の評価は満点だ。ただし、脱いだ浴衣を僕に被せたのはいただけない。
はる・紀の評価は?
「そうね、はじめてにしてはいいけど、30点? 問題は、浴衣よねぇ」
辛口だ。たしかに、浴衣僕にを被せたのはよくないけれど。
「被せ方がよくないわ。もっと内側が顔にかかるようにしないと!」
あっ、そっち! たしかに、酸っぱさは微塵もなかった。
「なるほど、なるほど。参考になります」
『参考になんかしなくていいよ、ひかり!』という僕の叫びのなか、
水着での温泉撮影会は続く。
___________________ここまでの経路 3月16日その39
=====(熱海駅周辺)====2145温泉宿
温泉宿 2145===(水着での温泉撮影会)==
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