第45話 脳筋な娘と私
「そう言えば気になったのですがメルウはどんな生活を送ってるのですか?」
抹茶を飲みながら私がメルウに尋ねると彼女は少し考えて朝方の行動から答えてくれました。
「そうですね。朝方は宿のお掃除をして、食材を集めて地下室に持ち運ぶことをしていますね。昼は宿の経営をしてお客様の予約を受け付けて…夜は泊まりに来たお客様に料理を出したりかな。」
「しっかり仕事してるのですね。」
「えへへ〜…。お母さんみたいに頭回らないけどね。」
そういえばメルウの基礎職業は料理士なのですよね。
料理の腕もすごく上がってて私とフィニーはびっくりしてましたが、ずっと接客してたなら納得です。
外見も美しく豊満な体になっちゃってやせ細った体が嘘みたい…そういえば宿に入る前に周囲を探索して気になったのですが聞いてみても良いのでしょうか。
「メルウ、薪置き場はあるのに薪割り場がないのは薪を譲ってもらってるからなのですか?」
「あ…、ナツメよそれは…。」
フィニー?なんで気まずそうな顔してるのですか?
「え、薪割り場?薪って素手で作るんじゃないの?」
…薪割り場がなくて薪を作る?
えっと、メルウちゃんそれは一体どういう…。
「フィニー、メルウの補助職業ってまさか…。」
「すまん、止めようとしたんだが格闘家になりたいと言って止められなくてな…。」
だから素手で薪割りを…なんか若い頃の自分思い出しますね。
いや、今は若いどころではなく生後0歳なのですが。
ひとまずメルウに普段行う薪割りがどう言うものか説明すると彼女は頭の後ろを掻きながら申し訳なさそうな表情で話し始めた。
「だから、マルンは『素手で薪割ってるの?マジおもろ。』って言ってたのか〜…。」
「多分、マルンさんわざと教えなかったのですね。」
マルンって時折ギャル口調になるのですね。
そう言えばギャルって単語この世界で通じるのでしょうか。まあ、ギャル云々は置いておきましょう。
「それでなんでメルウは素手で薪割ろうと思ったのですか?」
「えっと、お母さんが昔素手て薪割っててかっこいいなーって思って頑張ってみたんだよ。」
メルウ、頑張る方向性間違ってますよね。
「それでね。なかなかお母さんみたいに薪割れないから、お父さんに『筋肉つけたら割れるんじゃないか?』って言われて筋トレし始めて割れるようになった感じですね。」
「…フィニー、後でお話があります。」
「…すまん。」
まったく、脳筋で解決でしようとしないでください。
昔の私も脳筋だった?フィニーそんな表情で訴えかけないでください本気で怒りますよ!
それにしてもまた私の昔やらかしたことが響いてますね。他の子供たちも影響受けてないと良いのですが…。
「あぁ、それなら大丈夫だ。他の子供たちはちゃんと普通に育っているぞ。」
「心まで読まないでください。まったく…。」
その言葉を聞いてか少しメルウが不安そうな表情をして訪ねてきました。
「お…おかあさん私変な子かな?」
「あ、傷ついたならごめんなさい。でも違うのですよ。私の行動が孤児院で育った子供達に悪影響出てないか心配で…。メルウはいい子なので嫌いにならないですよ。」
「ほんと?よかったぁー。」
うーん、50年経っても100年経っても親にとっては子供なのでしょう…子供の時に別れて何年も生きてる親に会えないってどんな感覚なのでしょうか。
そう考えると少し心苦しいですね。
「それで『とことん甘えても良いよ』言うと大量の妖精さんたちも抱きついてきそうなのですよね。」
「え?」
小さい声で呟くきょとんとした表情でメルウが反応しました。
「いえ、ちょっと言葉選んでました。」
「うむ、難儀よな。」
いつの間にか妖精がフィニーの体で遊んでますね。
「…ふふ、何気ない幸せってこんな感じなのでしょうね。」
「お母さん…そうかもね。えへへ」
私はその様子を見て過去のことを思い出しながら無意識に言葉を結んでいました。それはとても自然で昔に失くしていたものを大事に確認するかのように。
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