第46話 薪割りは拳でするもの
私達は抹茶を飲みメルウにお昼をご馳走になった後、宿の手伝いをするため薪割りを手伝うことにしたのですが。
「ここを…こう!」
私が地面に置かれた薪用の原木に拳を突き立てると、パカーンと爽快な音を立てながら割れました。
現在私も素手で薪を作っていました。
いやー、久々にやると楽しいものですね。特に魔法や魔素使えなかったので冬の薪割りを楽できないかなーっと思ってあっちでは試行錯誤していたものですが…。
やっぱりこっちだとこれができて楽です。
「やっぱりお母さんすごいなぁ。一回で四等分できないよ。」
メルウが私の方を見たあと、原木に集中し瓦割りの要領で手刀をしました。
その動作は美しく見とれていると、間を置いて音も立てず真っ二つに原木が割れました。
「…私より格闘家としてのセンスが良いのでは?」
「えぇ!?」
私の言葉にメルウは驚いていますが、音が出ないと言うのは結構異常なのですよね。木目に沿って切らなければ歪な音が出るものですがそれすら聞こえないあたりあれですね。
「…フィニー、かなりメルウを鍛えましたか?」
「む、さっきのでわかるのか?」
「あれは私が本気出した時の動作ですよね。」
「わはは、さすがにばれるか。」
「え、そうなの?」
元々小学校の頃は空手もやってましたからどうしてもわかってしまうのですよね。あっちに戻った後はボクシングにも手を出しましたけどね。
それは置いといて…
「そうですね。メルウが今行なっている動作は『空手』と言って一つ一つを集中して行う型みたいなものですが…。そういえばこっちでは流派とかの概念なかったですね。」
「師弟はあるが流派とかそういうのはないな。」
「りゅうは?」
そうなのですよね。
基本的にこの世界では弟子は師の教えを引き継ぐ形にしても『広める』と言う目的ではなく生き残るための技術を教えることに特化してるのですよね。
だから流派とかはなくとにかく師の技術を習得することに特化していると言うか…それにあっち空手は美しく見せることを主としている流派もあるので実用的ではないですし、空手は基礎から溜めがある技もあるので実戦だと素早い魔物には使いにくいのですよね。
「魔物の有無でこうも違と逆に面白いですね。」
「ん、どうした?」
「いや、世界が違うとこうも違うんだなと思いまして。」
「…戻りたいのか?」
「いやーまさか、もうあっちで死んでるのに今更戻るなんて嫌ですよ。それに今の生活気に入ってますから。」
「そうか」
フィニーの尻尾は相変わらずわかりやすいですね。ものすごく振ってます。
…確かに生活は便利で娯楽もあるし魔物の危険もないので絶対戻りたくないと言うのは嘘になりますけど、過去の人たちの努力があったからこそですかし色々作ることもやりがいありますからね。
「…お母さんってさ。優しいよね。」
メルウがそのように語ったので私は思わず微笑んで頭を撫でようとした…が私の手が届かなかったのに気がついたのかメルウが屈んでくれました。
うーん、恥ずかしいですね。
「ふふ、本当に私くらいだった身長が私の手が届かないくらい大きくなりましたね。メルウ。」
「…えへへ。」
メルウが驚いた表情を見せた後すぐにはにかんだ笑顔を向けてくれました。
「いい年した女性が子供に撫でられてる〜。」
撫でるのに夢中になっていると横から声が聞こえてきました。
「え!?マルンいたの!」
「うん、こっそり来たよ。ナツメさんこんにちは。」
「あはは、マルンさんこんにちは。」
私が挨拶しかえすと満面の笑みで嬉しそうに頷いていました。
その後メルウは少しマルンに拗ねてしまいましたが、何か話した後メルウは上機嫌になってマルンはげっそりしてました。なんとなくフィニーに聞いたら何か奢ってもらうとか?
…かわいそうなのでいつかマルンさんに奢ってあげることを決意しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます