幕間 脳を焼かれた聖女を見る魔神
我の名はマーゼ、魔神である。
現在、我は頭を抱えているのじゃが…理由は3週間前に遡る。
ニービスと我は王都マリンに戻り北部の報告を終えた後その日まで今まで通り過ごしていたのじゃが、聖女マリンセルがコココ村を訪ねてからか彼女の様子がおかしくなり始めたのじゃ。
他人からは普段のように振舞っておるように見えるのじゃが魂の方が右往左往しておっての、まるで何かを欲しているような欲望が見え隠れし始めたのじゃ。
同時にどう言うわけか神狼とナツメの婚約を公にすることも彼女に止められ、現在に至るのじゃが…。
『マリンセルよ。それらは一体…。』
目の前には部屋を埋め尽くすほどに袋が置かれておって、しかも全て丁寧に包装されておった。
「あ…マーゼ様、これくらいあればお喜びますでしょうか?」
『誰がじゃ?』
「ナツお姉様がですわ。」
うむ。喜ぶじゃろうけど…喜ぶじゃろうけど〜…。
『マリンセルよ。もう少し考えた方が良いのでは?』
「それは…もっと良いものもあげた方が良いと?」
『量の問題じゃ!』
思わず我がツッコミを入れてしまったではないか。
「これで少ないと?」
『多すぎるんじゃ!まず部屋の広さから考えて馬車に乗りきらんだろう!』
「しかし…私のナツお姉様への愛はこれではまだ足りませんの!」
はぁー…そう言えば彼女も母親から英雄ナツの話を毎回聞くぐらいに愛弟子のナツに脳を焼かれた者だったな。本当に罪な愛弟子よ。
この様子じゃとコココ村でミナと会ってナツが来たことを知ったのじゃろう。しかし…まるであの犬っころがもう一匹増えた気分じゃ。
『良いかマリンセル。我が愛弟子はそこまで求めないのじゃ。』
「そんな…、じゃあ私の愛は受け取ってもらえないのですの!」
『違うそうじゃないのじゃ!』
「あの神狼の愛は受け取めているのにですか!?」
『だからそうじゃないのじゃ!』
うーむ、どう説明したら良いのじゃろうか。
そう言えばもう一人の愛弟子ニービスはどうしておるのじゃろうか。
『とりあえず落ち着いて聞いて欲しいのじゃが…。マリンセルはニービスに対してはどうしておったのじゃ?』
「え?何も言わなくても沢山の物をもらったり、料理をしてくれたり申し訳ないなと思ってますの。だから毎回恩返しをしてまして。」
『その恩返しとはなんじゃ?』
「そうですわね。今みたいに一月に一回沢山のお土産を持って行ったり、夜中に…」
『む、夜の話は喋らぬ方が良いぞ。』
「あ、そうですわね。」
それにしてもニービスがやたら我に焼き菓子とかくれるのはそういうことか。
食を司る魔神だから嬉しいがこれらを受け止めるのはさすが邪神だけあって男の中の男よなぁ。普段は頼りなさそうに見えるのじゃが…。
そう思いながら我は部屋に置かれた物品を見回しながら思っているとマリンセルが口を開いた。
「…確かに冷静になると多すぎますわよね。ナツ姉様の婚約の件とミナ姉様に恩返しできなかったことも含めて張り切っちゃいましたわ…。」
うむ、わかってもらえたようじゃな。
「手料理で恩返しをいたしますわ!」
『…いや、それはやめた方が良いと思うぞ。』
「え?」
確かに良い案なのじゃ…良い案なのじゃが〜…。
『その…お主が料理することを周りに見せるのはちょっと問題あるのではないかなと…』
言えぬ…マリンセルが料理すると得体の知れないものができて引かれるとは良心が痛んでとても言えぬ。
いや、味は美味しいのは美味しいのじゃが…なぜパンを手順通りに作っただけで『食べれる生きた白い触手』になるのか意味わからんのじゃ!
「私の手料理は美味しいと言われてたではないですか?」
『いやそうなのじゃが…。』
我の苦悩はまだまだ続きそうじゃ…。
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