第44話 体は少女、心はお婆ちゃん その2

「今思うと…たった数年間にしてはかなり濃密な時間過ごしてましたよね。」


カラカラ緑草を細かく潰し終えると私はそう言いながら粉ふるいで硬い芯の部分を取り除いていました。


「儂もそう思う。」


フィニーが同感するように頷いきました。

色々聞いた感じですと彼はずっと魔物の選定してたくらいで、100年前みたいな死闘に身を投じることが少なくなったみたいなのですよね。

苦戦することといえばメルウの子育てくらいだったとか?ですがその苦戦すると言うのはわがままという理由ではなく別の理由でした。


「そもそもメルウはいい子すぎてなぁ…。儂の言う事を聞きすぎて独り立ちできるか心配になる程だったからな。」

「あはは…、私がいうのもなんですが甘えん坊だったからね。」


私がいなくなったせいなのもあるのですかね。

そのことを考えるときっと我儘を言えばフィニーがいなくなるのではとずっと思っていたのでしょうか。


「でも私もいつまでも甘えるわけにはいかないですからね。だってもう100歳以上なんだもん。」


100歳というと私の世界だともう老人なのですよね。


「…メルウの子供…見てみたいですね。」

「お…お母さん!?」


メルウが真っ赤になって驚いた声をあげました。

あらやだ、つい無意識に私は呟いていました。

フィニーは少し難しい表情をしていましたが…、孫出来たら出来たで溺愛しそうなのですよねこの狼さん。


「ふふ、やっぱり歳をとるとお婆ちゃんになっちゃって嫌ですね。」


本来そこまで嫌ではないのですけど体は子供なのですよね。

うーん、心境的に複雑になってしまいますね。


「お母さん…私…が、頑張ってみるね。」

「あ、いやいやそんなに慌てなくていいのよー。メルウがしたいようにすればいいの、まだまだ時間はありますしね。」


私は会話をしながら粉末のゴミを撮り終えると錬金術で作った小さな陶器に緑色の粉を並々入れ、机に陶器を軽く小突きました。


「ん〜!ふぅ…これで完成ですね。それにしてもカラカラ緑草はすぐ使えて楽できますね。」


私は伸びをしながら小言を言うとメルウは気になったのか質問をしてきました。


「他の草だと何か違うの?」


その問いに私は間を置いて答えました。


「そうですね…。私のいた世界だと一年前から茶葉にする葉の下準備しないといけないのですよね。他にも種類や品質、一番茶とかうんぬんもあるのですが…。」

「そう言えば儂が聞いたときは葉から茶にするだけでも数日かかると言っていたが…、カラカラ緑草はその工程を省けると言っていたな。」


簡単に言えばちょうど北西の砂漠が作業工程に似た環境なってるのですよね。


「あとはそうですね。一番抹茶に近い風味がカラカラ緑草だった感じですかね。」


私は片付けをしながら器を三つ取り出し、水を沸騰させ始めた。

その後棒状のもので粉末をすくい出して器の中に入れたあと、茶筅を取り出して器の前に置いた。


「うわ、なにこれ。」

「茶筅(ちゃせん)と言って抹茶の粉末とお湯を混ぜる道具ですよ。」


私は粉末の量に合わせてお湯を入れたあと手首で茶筅で泡立つように混ぜ合わせ、二人の前に完成したものを差し出した。


「…本当に緑色だ。怖」

「ふふ、メルウそんなに怖がらなくても毒は入ってないですよ。」


メルウは警戒心を出しながら見ている中、フィニーはゆっくりと器を手に取り啜りました。


「ふぅ…、歳を取るとこの味の良さが分かるのも不思議なものだな。」

「え、お父さん大丈夫?」

「メルウも飲んでみたら分かるぞ。」


メルウはそう言われおそるおそる緑の液体の入った器を手に取り、ゆっくり啜りました。


「不思議な味、苦いけどそこまで嫌な苦みじゃなくてほんのり甘くて…。」

「落ち着くでしょ?」


私がそう言うとメルウが頷いて、ペースを早めて飲み始めました。

その様子を見て微笑むと私も器を丁寧に持ち、ゆっくり楽しみ始めました。

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