第43話 体は少女、心はお婆ちゃん その1

現在、私はフィニーと一緒に宿『夢羊のやすらぎ』のキッチンにいました。

キッチンは木で柱で壁は石で作られ、道具は一式揃っておりさらにピザ窯まで揃っていました。冷蔵庫はないのですが地下室が常に低温であるためそこが冷蔵庫・冷凍庫がわりなのだとかで一番低い時で-10℃まで下がるとメルウが説明してくれました。


そこで私は何をしているかと言いますと、この世界では茶葉の風味に近い『カラカラ緑草』を錬金で使うすり鉢で粉状にしていました。

カラカラ緑草は西部の砂漠で生えており、緑色なのに常に乾燥しているためその名がつけられたのだそうです。まぁ…本当の命名者は私なのですけど別の人にお願いしたのですよね。

ちなみにカラカラ緑草は乾燥しているためすぐにお茶にしたり粉末にできたりと、即席でお茶を作るときは便利な緑草なのですよね。


朝方その緑草を私が取りに行こうとしたのですがフィニーが引き受けてくれました。なんでも北西部はいまだに熱気がすごく少し歩くだけで脱水症状を起こすのだとかで…フィニーはもともと風と雷を操れるので熱気は平気なんです。


「ほんとは自分で取りに行きたかったのですが。ごめんなさい。」

「いや、儂のためとはいえまだ無茶はするな。魔素がまだ安定してない体では北西砂漠の奥は危険すぎるからな。」


私が謝るとフィニーはそのように言ってくれました。

その後、私に気を使ってかフィニーは喋らず耳を傾けていました。

今キッチンは葉をすり潰すような音が鳴り響いており、その音は決して嫌悪感が無く心地の良い音で私はすり棒を行ったり来たりと動かし奏でていました。

するとキッチンの入り口から声が聞こえてきました。


「キッチン借りるって言ってたけど、お母さん何してるの?」


メルウが音につられるように入ってきました。


「あぁ、今カラカラ緑草で抹茶作ってるのです。」

「抹茶?」


メルウが首を傾げました。

そういえばメルウは飲んだことなかったのでしたっけ?昔のことなので細かい部分は忘れてしまって嫌ですね。


「メルウは知らなくて当然だな。当時は草をお茶にするという発想がなく、抹茶は旅の道中で儂らしか飲まなかったからな。」

「あぁ、そうでしたね。お茶というものがなくて私達落ち着かなかったのですよね。それでるぅちゃん…当時の美菜と茶葉探し奮闘してたのでしたっけ。」


当時は瘴気のせいで水も貴重品だったので王都マリン以外は水不足が凄まじかったのでしたっけ…、確かに状態で水を台無しにする行為は確かにしたくないはずですよね。

それに草にも瘴気が含まれる可能性があったため、お茶にして飲むというのは毒を飲むのと変わらないという悪循環でした。

私が過去のことを思い出しているとフィニーが説明しだしました。


「それでナツメ達が茶葉の代わりになるものを探し回ってたどり着いたのがカラカラ緑草だったのだが…。ふふ、はじめ抹茶差し出されたときは正気か?と思ったものだ。」

「そうそう、フィニー含めた三人とも濁ったの緑色の液体見て『絶対毒だろ!』って反応してたんですよね。」


その時のライルの顔と言ったら爆笑もので青年の若いお顔が疲れ切ったおじいちゃんになるほどだったのですよね。


「へぇーそんなことがあったんだ。」

「そうそう抹茶といえば…過去に私と美菜が茶葉探ししている時、片っ端に道中の草を確保してたら王都マリンに入るときに問題がありまして…。」


その言葉を聞いてフィニーも思い出したように喋りだしました。


「あぁ、あの件か。確か持ち込み禁止の毒草が複数あったんだったな。」

「そうそう、私達ってこの世界に来て間もない時でしかもフィニーもフェイルも草の種類わからなかったのですよね。だから最終手段で美菜がその毒草全部食べちゃったんですよ。」

「え?美菜お姉ちゃん毒草たべちゃったの!?」

「そうですよ。即死する草もあったから門番の人がそれを見て大慌てで医者呼んでですね…。でも本人ケロってしてるからみんな驚いてたんですよ。私は笑ってましたけど。」


毒耐性あること知らないとみんなびっくりしますよね。と思いながら私はすり棒を回しながら緑草が粉末になるまで昔話をしました。

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