第40話 親友と鶏と鶏と鶏

私達が遊具に関して試行錯誤していると、どこからかエコーの効いた声が響き渡りました。


『も…、もし……』

「…フィニー先ほど何か言いましたか?」

「いや、儂は何も。」


フィニーでは無いですか。

念の為私は周囲を見回しましたが、遠方に見える穏やかな魔物以外に誰もいませんでした。


『こ…いじれ…』


この感じ念話ですね。

私が声を聞き取るため集中した瞬間。


『コケコッコー!!』

「うるさ!?」


不意打ちを食らったかのように鶏の鳴き声が頭の中に響き渡りました。

あまりの爆音だったのでつい声を出して頭を押さえていると、フィニーが心配そうにみてきましたが大丈夫と合図しました。


『おー、届いたー?』

『誰です?』

『あら、ごめんなさい。別の人につながったのかなー。でもなっちゃん以外に指定した覚えはないしなー…。』


うん、察してましたけどこの喋り方と状況的に美菜ですね。

そういえばお互い声変わってましたよね?…ちょっとイタズラしてみましょうか。


『いやー、いきなり念話が届いたのでびっくりしました。私が今念話できる人って真っ白な空間であった人にしかできないんですよ〜。』

『奇遇ですね。私も同じような部屋にいた人に念話をできるように繋げたのですが…待って、そのとぼけ方なっちゃんでしょ!』

『さっすがみっちゃん。』


フィニーに念話の相手がわかったので、地面に書いて伝えるとフィニーは頷いて周囲の警戒を強めてくれました。

念話中は無防備になるから仕方ないですね。


しかし念話なのにバックからすごい鶏の声が聞こえるのですがどんな場所から繋げてきてるのでしょうか;というか外部の声聞こえましたっけ;


『みっちゃんはもしかして今コココ街にいるの?』

『うん、今はルルーという名前でコココ街にいるよ。』


ルルーですね。覚えました。


『さっきフェイルの故郷から戻ってきたところ。彼からなっちゃんに会ったよって聞いたからほっとしたよー。フィニーにも会ったんだよね。』

『そうだよー。すぐ駆けつけたから周囲に問題が生じたみたいですが。』

『あははー、神狼だもんね。そのせいでこっちも大変だったけど…。』


あの存在感の塊を無視できる方がおかしいですからね;

うん、お漏らししたことは黙っとこ。それにしても相変わらずバックの鶏がうるさいですね;

距離もあるのにどうやって念話繋げてるんでしょ。


『みっちゃんさっきから鶏の声が聞こえるのですが普通の念話とは違うのですか?』

『あ、そうだね説明する。』


美菜は一息間を入れた後、説明してくれました。


『実は試験的に『念話増幅装置』作ってさ、そのテストをやってるんだ。ただ周囲の声も拾うみたいで安定はしないけど、なっちゃんのところまで届くかなーって思って試したの。』


相変わらず開発に関しては美菜は手先が器用だから天才肌なんですよね。

このまま念話増幅装置が完成すれば遠距離電話みたいなことが可能になり夢が広がりそうです。

そんなことを考えていたら向こうからため息が聞こえました。


『でもまだ実用的じゃ無いんだよねー。離れるほど魔素で繋げる線と線の間に魔素や瘴気が通ると切れるみたいでそこを改良中かな。』


あれ、それじゃ今の状況おかしいような…。


『それじゃ今安定して繋がっているのは?』

『それは繋げてみて仮説立てれる程度には理解できたけど、私達は神の愛し子という加護で繋がってるからみたい。』


なるほど。発信者と受信者が桁違いからスムーズにつながるのですね。

携帯で例えるなら発信機と受信機が強力だから安定してつながる感じで、発信機がいくら強くても受信機の方も強くないと電波を捕まえにくいという感じでしょうか。

もしくは専用回線でつながってる感覚?


『じゃあ今は私たちや他の愛し子以外にはこの距離は無理ということですね。』

『だねー。まあ、なっちゃんと情報交換するために作ったような物だからひとまずの目的は達成したということで。』


その後、鶏の鳴き声を無視しながら美菜と情報交換をすることにしました。

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