第18話 規格外と自由神

バングから聞いた話によれば、聖なる鐘の作成者は不明で情報を求めているということだったのですが。喋りにくいんですよねー。

そんなことを考えていると彼は視線をずらしてニービスの方を見ました。


「ところで聖女の婚約者で有らせられるニービス様と師であるマーゼ殿がなぜここに?」

『それは我から説明しよう。』


マーゼが一通り説明するとバングが再び悩み始めました。

頭痛いでしょうねこれ。


「はぁー…、あそこの司祭たちは頭がとことん硬いからな。」

『わかるわー。』


多分神の愛し子だとわかると連れ去ろうとするくらい硬いでしょうね。あそこの組織…なんか神罰が行きそうで怖いですね。


「それにしてもそうか、聖女様がそんな状態だとここの司祭殿がおっしゃっていたことも理解できる。」


そういえばこの村の教会まだ行ってませんでした。

ここの会話が終わったら補助職業選びに行きましょう。


「どのように言っていたのですか?」

「『民を思い続けた聖女様が救われる日がもうすぐ来る』とおっしゃっていたのだ。」


ニービスが質問するとバングがそのように答えました。


「…だから神様は私たちに『私の愛し子になってくれないかしら』と言われたのか。」


私がポツリと呟くとフィニー以外全員こちらに視線を向けました。

やっばー、完全に私無意識でしたね。


少しの間をおいてマーゼはため息をつき次のように述べました。


『はぁー…、だからお主ら…特にお主は『規格外』と呼ばれるんじゃよ。』


うん、懐かしいですねその言葉。


「規格外?なんですかその言葉は…」

『バングよ。英雄ナツとミナの詳細を知っておるならわかると思うが、ミナは確かに勇者や聖女の適正を持っておった。だがナツは違う。』

「違う?」

『神や邪神の分類になるのじゃ。』

「はぁ?」


バング驚いてますけど私をみてますけど私も初耳です。


『よく考えてみろ。普通の人間が神域に行けて素手で神や邪神を殴り飛ばせると思うか?』

「…それはそうだな。」


私も思いましたけど確かに邪神も神様ですからやっぱ殴り飛ばすって異常だったのですね。

フィニーはわかっていたという感じでものすごく頷いていますけど…。


『普通なら職業、能力を持ってしても素手だけで神と邪神には勝てん。だがやってのけてしまったからの。』

「だから規格外なのですね。」

『そうじゃな。それにお主らは特に魔素と瘴気の適性率もおかしかったからのう。まぁ魔素と瘴気が少なければ普通の人と変わらないのじゃがな。』


確か魔素と瘴気は体内に保有できる量は有限でしたっけ?

魂の強さで変わると神様からは聞きましたけど…。


「マーゼ殿、これを聖女教会連合に話すとまずいからひとまずここの話だけにしておこう。鐘の件も…今南南西に向かっているフェイルがなんとかするだろうな。」

『それが賢明かの。』

「私もそうしてくれると助かります。」


私がそう言って頭を下げた後、ニービスが少し考えて口を開きました。


「もしナツメさんが大陸北部の浄化を続けてくれるのなら、マリンセルの体調はかなり改善することになるということですよね?」

「そうなりますね。」

「それで思ったのですが…、いっそナツメさんが神狼さんとの婚約を公にすれば良いのでは?」

「…やっぱりそうなりますよね。」

「そうなるだろうな。」

『そうなるじゃろうな。』

「いや、まてまてまて!ナツメ殿までなぜ納得してるのだ!」


バングだけ納得できてないのも無理ないのですよね。

それにしてもニービスからその言葉が出てくるのは驚きましたが…。


「私は元々そうなることを望んでましたからそれが早くなっただけです。フィニーも私から離れる気は無いですよね?」

「そうだな。」

「だとしてもだ、他の獣人が黙ってないぞ?」


彼がそういうとマーゼが腕を組んで口を開きました。


『そのことだがバング、神様と獣人どっちが上だと思う?』

「そりゃあ…、神様の方が優先になるが。」


そう彼が呟くとものすごい勢いで冷汗が出はじめました。

マーゼは一息つくとバングに簡単に説明しました。


『そもそも神の愛し子は神様が相当気に入った相手にしかつけないことぐらいお主でもわかるだろ。つまり婚儀の時に高確率で主催として降りてくる…ましてや神の愛し子と神獣だぞ。』

「すまん、そういうことか…。確かにそれだと誰にも文句は言えないな。」

『それに我の予想だと…、ナツメよ。だろ?むしろそれが本命か。』

「うん、神様も気がついてると思います。」

「他にあるのか?」


フィニーの目の前でこれいうのはものすごい恥ずかしいのですが、私は恥ずかしがりながら覚悟を決めて語りました。


「…聖獣か神獣との子供を宿すためです。」


フィニーがめっちゃ固まってこっち見てる!

あー…転生三日目にしてすごい恥ずかしいんだけど、やっぱ穴に潜りたい。


私が顔を真っ赤にしているといきなりフィニーが立ち上がりドアの方に向かっいました。


「ふぅー…すまん。ちょっと頭冷やしてくる。」

『おい、犬っころよ。』

「どうした。」

『周りに迷惑かけないようにな。』

「あいわかった。」


会議室から出たフィニーは3時間戻ってきませんでした。

その後、西の砂漠を全速力で駆け回る白い狼を見たという情報が耳に入ってきたのは次の日のことでした。


◇◇◇


私はギルドから出た後、南西側にある教会に足を運びました。

その教会は少し質素で豪華ではなかったのですが庭はきれいに手入れをされ、穏やかな空気が流れており一歩足を踏み入れるだけで違いが分かるほどでした。

この感覚はしっかり聖域化してる証ということでもあります。


教会のドアに近づくと一人のシスターがお辞儀をしながら出迎えてくれました。


「迷える子羊さんこんにちは。」

「こんにちは…。なんかこの姿だとそのままの意味に聞こえてしまいます。」

「ふふ…、そうですね。今日はどのようなご用件で?」


私はシスターへギルドマスターからの手紙を渡すと彼女は中身を確認した。


「時は来たのですね…。少々お待ちを」


彼女はそのように喋るとわかっていたかのように教会内へ入っていきました。

少し時間がたつとドアが開きそこには普通の住民と駆らわない服装のおじいさんが立っていました。


「このような姿で申し訳ない。先ほど買い物をしておったので…。」

「あなたは?」

「わしはアーシル・ラータというもので司祭をしております。」

「家名持ちは珍しいですね。」


この世界では家名持ちは少なく、家業や仕事を継ぎ続ける人が家名を持つことが多数でした。そのためその家名を聞くとどういう職業についているのかすぐにわかるという利点もあるが正体もバレやすいため長所と短所はしっかりあります。


「ほっほっほ、よく言われます。」


アーシル司祭はそのように答えたあと私をまじまじと見ました。


「ふむ…、確かに手紙の通り聖女様と同じ気配がしますな。」

「わかるのですか?」

「えぇ何年も聖女様を見ていますから、外だとなんですし中で話しましょう。」


私は司祭に促されるように教会へ入ると左右には木の椅子が並び、目の前には大きな女神の石像が建てられていました。


「はて、先ほどまであそこに人はおらなんだような…。」


司祭がそのように語ったので私は目を凝らしてみると、そこにはどこかで見たことある姿の銀髪の女性が立っていました。


「あれ…神様?」

『ふふ、来ちゃいました。』

「なんと!」


司祭様が拝みだしちゃいました。


『アーシル様楽にしてください。私は愛し子に会いに来ただけですので。』

「神様、それは無理ありますよ。いきなり来られてはみんなびっくりしちゃいますって;」


先ほどのシスターもびっくりしてちらちらこちら見てますし…。


『それはそれは…変装でもした方が良かったかしら?』


神様は冗談交じりで笑っていました。

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