第33話 邪神も穏やかに過ごしたい

聖獣クラムがお辞儀して去った後、私達は師匠であるマーゼさんと弟弟子?であるニービスさんと共に村へ戻ることにしたのですが。


「これは重症ですね。」

 

彼とはものすごい距離が離れていました。


『これ!ニービス。なぜナツメとそんなに距離置くのじゃ。』

「ななな…なんかわかんないですが殺されそうで…。」


そっかー…私そんなに怖いのですかー…。


「あっはっは。邪神とあろうものが弱腰でどうする。」


フィニーはフィニーでめっちゃ機嫌よいですね。


『そうじゃぞ。犬っころの言う通りじゃ。』

「まあまあ、お二人ともいじめないであげてください。」

『何を言うかナツメよ!お主も可愛い女子であろうに怖いと言われたくなかろう?』

「フィニーに何度も可愛いと言われてるのでそれで満足です。」


おっと、フィニーの尻尾が扇風機になりそうな勢いで動いてます。


そんな会話をしているとふと気になったことがあったので聞いてみることにしました。


「そういえばニービスさん邪神なんですよね?ということはご結婚なさってるんです?」

『あぁ、確かにしてるぞ。確かー…そうマルンシル?」

「違いますよ師匠!マリンセルです。」

『そうじゃそうじゃ、マリンセルじゃ。』


マリンセル…確か聖女マリアニア様のご息女でしたよね。


「聖女マリアニアはお元気ですか?」


私がそう聞くと3名は少し顔を曇らせました。


『すまん…。マリアニアは8年前にお亡くなりになったのじゃ…。』

「あ、ごめんなさい…。」

『よいよい、だが…もしできればお主達と会わせたかったのう。』


私も会いたかったです。

何せ私を様々な権力から一番に守ってくださった人だったのですから…。


少し沈黙が続くとマーゼさんが口を開きました。


『それにニービスとの結婚を認めたのもマリアニアだったからのう。魔族と人間が手を取り合えたように邪神とも手を取り合えるはずだと言っての。』

「そんなことが…。」

「はい…、僕が今生きていけるのもあの方のおかげでした。」


うーん、ちょっと湿ってきたので話変えましょう。

きっとマリアニア様も自分の死での暗い雰囲気は嫌いなはずですしね。


「ところでニービスさんはマリンセル様のことどう思ってます?」

「ふぇ!え…えっとですね。」

『おぉ、ナツメよ。その話は我が一番詳しいぞ!こやつらは休みの時は膝枕し合っての…』

「うわーー!やめて師匠!」


その後マーゼさんから色々語られました。

私の聞いた感想を述べますとうーん…ものすごく優しくてなんでもできる青年ですね。

ちなみにフィニーはちょっと嫉妬してます。


『しかしまぁ、どうしてこうなったのかのう。』

「ん?何かあったのか?」

「最近、マリンセルが不調でして…僕を暗殺する計画が持ち上がったんです。」


うわぁ…物騒ですね。


『それでの、暗殺理由が邪神からは瘴気が出るからそれで聖女の力が弱まってるのではないかという『聖女教会連合』が出した理由でなぁ…。』

「いや、ありえないな。」

『じゃろうな。』


やっぱりフィニーとマーゼさんはこの世界をたくさん生きてるだけあって即決できる当たりさすがですね。


「瘴気というのはあくまで心や魂に作用するもので力そのものには作用しない。さらに言えば邪神の意思が関与しない限りはただの魔物を生む空気みたいなものだ。」

『そうじゃな。それに前邪神が滅んだ後に大陸の北側が調査可能になった理由も説明がつかなくなるしの。』


簡単に言えば瘴気は今では魔物を生み出す空気としかなっていないということなのですよね。


「うーん、マリンセル様の体調はどのような感じで?」


私が気になってふと質問するとニービスさんが答えてくれました。


「えっと…、マリアニア様がお亡くなりになり最近忙しくて過労なうえ寝不足気味だと…。」


うん、私の前世界で言うこれは社畜ですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る