第31話 忍者な聖獣クラムと神狼 その3

私達は宿である夢羊のやすらぎを後にし、ギルドに向かい石板をおいて聖獣クラムに会いにいったのですが…。


「マルンさん無理してついてこなくていいよ?」

「あははー、ついて行くというより僕の長に報告しないといけないから里に戻らないとなって…。」


そう言われると私と神狼という不確定要素がこの場にいるのですから確かにそうですね。

そういえば調査団の方々はどのルートから南東に行くのでしょう。


「フィニー、今調査団の方々はどこにいますか?」

「匂いからしてもう現場辺りではないかな。」


あら、ずいぶんとお早い。

確かに神狼から許可とれたとなれば早いに越したことはないですね。


私達(特に神狼)がこの場に来てからというもの危険な魔物が身を隠したらしく、ここ三日間魔物に村が襲われていないのです。

それを見越して許可とれたんですぐ行動に移したのでしょう。


「それじゃ、僕はここから東に行くからお別れだね。」

「はい、また会いましょう。」

「またな。」


マルンと聖樹から少し離れたあたりで別れたあと、狙っていたかのように聖獣クラムが姿を現しました。

そして、様子から見てさっきまで鍛錬してたのか息が荒くなっている印象でした。


「周囲に気を使うとは出来た熊だな。」

「ガウ。」


おっと?周囲の空気が変わったような気がします。


「ふむ、儂を囲えるほどの結界か。わっはっは、さすがナツメの杖の力を使った聖樹から生まれただけあるな。」

「結界…。」


あーなるほどそうですか。

要するに鍛錬の時間が惜しいから別の空間に作ったと…。


「えーっと…。メルウから聞いてますよね?クラム」


すごく頷いてますね。

それでもやってみたいと…。


「フィニー、念のためですけど全力はダメですよ。たぶんクラムは聖樹の力を借りてるんで。」

「あい、分かった。」


フィニーは煙を吹き出しながら獣人から元の姿である神狼になった瞬間。


「ガアァァァ!」「来い!坊主!」


4メートルと5メートルによる聖獣と神獣の戦闘が始まりました。


初手組付きから始まり、爆音と共に大地が割れるほどのひっかきの応酬のあと動いたのは聖獣クラムの方でした。

忍術『空虚』でその場にいなかったことにして上空に移動し忍術『鉄塊落とし』(自身が鉄塊になり、込めた力具合で重さが変化する)につなげたのですが、フィニーはそれを見越してか天雷術『羽衣の纏』で空間を軽くすると、すぐさまフィニーの右殴打が炸裂し轟音とともに吹っ飛びます。


「わっはっは!筋はいいが相手を見極めろクラム。」

「ガウ!」


クラムは答えるように爪と爪を交差させ、忍術の最高位の奥義、忍術『天動地』を使用しました。

この術、私は見てないからわからないのですよね。

しかしフィニーはすぐに何か感じ取ったようにつぶやきました。


「ふむ、強いな。」


忍術が発動したかと思うと大地が揺れ亀裂ができ上がりました。

そして石や土が大小さまざまな立体四角形のブロックに掘り起こされ空中に止まり、クラムが腕を動かすとそのブロックがあらゆる方向に操作できる術でした。


「聖獣の中でも規格外ですね。」


そんな感想を言っている私はというと出来上がった大小様々なブロックの中の一つに座って見学しました。

それにしても結構精密操作要求しそうですねこの術。


その後、数十分間に渡り結界が壊れることもなく天動地の中でブロックを破壊しながら戦っていた二名は疲労はあるものの深い傷を負うことなく戦闘を終えました。

あの様子から見るとクラムは相当頑丈みたいですね。


「いやー、久々に骨のあるやつで楽しかった。お前なら娘を任せられそうだな。」

「ガウ。」


少しクラムも照れてますね。

そんな様子を見ていたら私は気配を感じたので後ろを向くとなんかすごく汗や涙、そして鼻水をたらしながら怯えた表情をする鎧を着た人が足をすごくガクガク震わせて立っていました。


「ひ…ひぃ~…。」


この様子は多分見られてましたね。

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