第32話 謎の少年とお師匠様
目の前の兵士を見て一瞬来たばかりの私を思い出しましたが、首を横に振り再び兵士の方を見ました。
身長は150cmくらいで外見は黒髪で瞳は深い黒色。鎧は…どこかで見た形状で銀色の風格ある西洋甲冑で兜は転がっていました。
「えー…あなたは?」
「ひぃ!」
あら、優しく問いかけたのですがなぜこんなに怯えているのでしょう。
身長110の少女ですよ〜怖くないですよ~。
「ん?そこに誰かいるのか?」
「フィニー、この子の匂いは引っ掛からなかったのですか?」
聖獣クラムとフィニーが歩いてきたので問いかけると彼の視線は兵士の方に向けられました。
そして目を見開いたあと不敵に笑みを浮かべました。
「ふふ、ナツメよ。そのものは誰だと思う?」
「え?この青年ですか?」
自然そのもので真逆な感じがするのですよね。
まるでそう邪神のような…。
「え!この子邪神!?」
「あぁ、そうだ。」
「ひぇー殺さないで!」
「あーごめんごめん。びっくりしただけ。」
この感じまるで私そのものを恐れてる感じがしますね。
ふむ、試しに両手を挙げてみましょう。
「ひぃ!」
…なんか悲しくなってきました。
そんな風に思っているとふと声が聞こえてきました。
『これこれー、愛弟子をいじめるでないぞー。』
「ん?この声は。」
何かフィニーが渋い顔してる…。
どうやら兵士のぶら下げている本の中から聞こえてきますね。
『クンクンクン、懐かしい匂いがするの。』
そんな台詞を言いながら一人の少女が姿を現しました。
そして、私はその姿何とも言えない表情を浮かべました。
『おお、犬っころか!何年振りかのう。』
「…。」
『それにー…ん?羊人からかこの匂いは…』
特徴的な黒色の帽子には目のように二つの赤いボタンが付きギザギザの模様が描かれており、髪は金髪で目は深紅のように赤く、服は黒と赤をメインとしたドレスを身にまとっていました。
「『暴食の■■■■』あなたはそう言われていましたよね…。」
『はて、なぜお主が我の真名を知っておる。それにそれを喋れるのは一人しか…。まさか!』
次の瞬間その少女は満面の笑みで私に飛び込んできて抱き着きました。
私はそれに応えるように抱きしめ返しました。
『あぁー…、この優しい匂いで確信した。最愛の弟子よ。おかえり。』
「あはは、あなたは魔神なんですから泣かないでください。」
『泣かない師がどこにおるか!お主のおかげで我は自由に旅できるのだ。』
「えっと…師匠?」
『あぁ、すまん。ニービスよ取り乱した。』
そう言うと離れたあと少女は空中に寝そべりぷかぷか浮きながら話し始めました。
『我のことは覚えておろう。いまはマーゼと呼ぶとよい。それでこっちが。』
マーゼが指を青年に指差すとおどおどしながら答えてくれました。
「え…えっと…ニービスです。僕はその…邪神みたい…です。」
『ありゃりゃ、すまんのう。こやつがこんなにおどおどするのは珍しい…。』
これは多分私のせいなんでしょうね。
「気にしないでください。多分私のせいなので…」
『お主の?あぁ!なるほど魂の問題か、ニービスよ。お主が怖がるのもわかるがお主が思うほど怖いやつではないぞ?』
「は…はい。」
この感じはおそらく殴り合った時の恐怖が魂に刻まれてるのでしょうね。
でも、本気出さないと死んでたんで仕方ないのですけどね。
『だがこやつはキレたら怖いがの。」
「一言多いですよ。師匠。」
「…否定はしないな。」
「フィニーまでー?」
「だが滅多にナツメが怒ることはないから安心すると良い。というより怒ったらおそらく前回よりもやばいかもな。」
「前回よりも?」
そう聞き返すとフィニーは空に顔を上げて呟きました。
「神の愛し子が、清き心で悪意あるものに大激怒したら神罰を与えれる許可が下りるからな。ナツメとあいつは元々他者のために怒れるほど清く温厚だっただろ?」
「…うわぉ。」
神の愛し子って改めてやばいんだなとこの時私は再確認するのでした。
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