幕間 英雄ナツと神狼の恋物語 中編

「この力で力が無い人もみんな当たり前に生きれる世界に私はしたい。そのために私は何をすればいい?」

「ナツ…。」


この時、英雄へと続く物語が始まったのです。

世界を変える力を持っていた彼女達は王都マリンにいる初代聖女マリアニアと謁見をし、異世界にから来たことを伝えました。

その時に彼女達は元凶が瘴気であることを知り、そしてそれを操る邪神がいることを初めて知ったのです。

そして瘴気の力とは憤怒と欲望を揺さぶるものでした。

しかし本来であれば魔物を食べ続けていたナツとミナは瘴気にまみれ暴走していたはずなのですが、その瘴気が反転していたのだとこの時わかり希望となったのです。


しかしその希望も長くは続きません。

魔物の大進軍の報告を受け二人の少女は皆の反対を退け、100体に及ぶドラゴンの軍勢に特攻を仕掛けたのです。

王都マリンを守るため、竜の尻尾や首をちぎっては投げちぎっては投げと鬼神の如く倒す姿を見て人々は戦姫と呼ぶようになったのです。ですがナツはこの戦いのあと深い眠りにつき、ミナも度重なる戦いが影響し体を動かせなくなりました。


人々は二人の戦姫を失い嘆きました。

そんな中でもエルフの青年と狼は諦めることをしませんでした。

治す手立てはないかと聖女マリアニアに青年と狼は尋ねたところ大陸東にある世界樹の葉が必要だということがわかり、新たなる仲間人間の魔術士とともに世界樹を目指しました。

険しい冒険を終え、世界樹の葉を入手した三人はミナとナツの体を癒すことに成功しましたが、それでもナツの方は目を覚まさなかったのです。


「ナツは頑張ったんだ。王都マリンに置いていってもいいのでは…。」

「…いや、俺が運ぼう。そして目覚める方法を見つけよう。」

「いいの?…ありがとう」


狼の提案にミナがお礼を言い狼の体にナツを縛り、冒険を再開したのです。

そして半年が経った頃でしょうか魔術士はあることに気がつきました。


「二人の時間が…止まっている?」


少女達の体型に変化がないことに気がついたのです。

ミナは動けのでご飯も食べて体にあまり変化がないのはわかるのですが、何も食べず眠り続けているナツの体は全く変化していなかったのです。

四人は驚きましたがそれ以上にまだナツに希望があることを喜び、冒険を続けました。


そして砂漠のオアシスで奇跡が起こります。

狼はナツを優しくおろし、満月の月に照らされた湖の前で考えていました。

ナツにどうしてここまで執着するのだろうと、自分は狼なのに人間であるナツに惹かれるのだろうと…。


「俺は弱いな…ナツ。君の気高さに俺は惚れたのかもしれないな。」


誰かを守る強さを手に入れたいと狼は強く願いました。

その願いが届いたのか月の光に照らされて女神が姿を現したのです。


「あなたは?」

「私はこの世界の創造神。」


狼はナツをかばうように立つと唸るように言いました。


「ナツは連れて行かせないぞ!」

「いえ、まだ連れて行きません。二人の少女はこの世界の希望…私が最後にかけた希望なのです。」

「希望…。」

「えぇ、今は邪神によって世界に強く干渉できずにいました。ですが私は瘴気に蝕まれ、諦めかけた時に瘴気を取り除いてくれた方がいたのです。」

「それは…誰なのですか?」

「あなたの隣で眠っている方です。」


狼はナツの方を見て驚きました。

四人にとって半年間ただ静かに眠っているだけにしか見えなかったのです。


「とても強い方ですよね。こんな少女が本気で皆を救おうとしてますもの…」

「ナツ…。」

「そして、狼さん私はあなたの願いを叶えるためにここへ来ました。」

「俺の?」

「ですが同時にあなた…いえあなた達に残酷な決断を委ねなければなりません。」


狼は考え込み、決心したように頷いた。

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