第28話 泣き虫娘とあの熊さん

メルウ、羊人で桃色のふわふわした髪と大きな角が特徴で体は大きく170cmほどのむっちり体系。

私が初めて彼女に会ったときは3歳児くらいで亡くなっていた両親の前で泣いていた所を保護して、よくお世話していた子でもありました。

私がどこかに行こうとするといつも泣いて困らされていましたね。

おかあさんと言われた時、笑顔で『私はあなたのお母さんじゃないよ。』と抱きしめるやりとりを毎回するのが楽しかったのをよく覚えています。

本人もわかってたと思うのですが、お互いに嫌じゃなかったんですよね。

そして彼女が5歳になった時、当時11歳だった私はこの子をほっといて元の世界に帰ることを渋りそうになりましたが、フィニーが親代わりを引き受けてくれたことで戻れたことをつい先日のように思い出します。

別れの時にメルウの名を与えたのも私でした。


◇◇◇


メルウが泣き止んだあと、私は諦めたようにマルンさんに正体を明かしました。

しかしメルウもすごい美人さんになったようで特に胸がすごいことになっていました。

ところでメルウ思いっきり抱きしめないで、ちょっとお胸で息苦しいです。


「いやー…、意味わかんないね。」

「そりゃそうですよね。」

「かあさんは意味わかんなくないもん!おとうさんもなんか言ってよ!」

「いや、そこは何も言えんが…。」


ちょっとメルウ、幼児退行してない?ところでフィニー、お父さんと言われてしっぽ振ってますね。

その様子を心配になりながら私はマルンさんに質問をすることにしました。


「この先にある宿屋に泊まりたいのですが…、もしかして経営者はあなたですか?」

「あ、それならー…。この人。」


マルンさんが人差し指を私の方に指を向けました。

いや、少しずれてますね。…え?


「あのぉー…おかあさん。私が経営者です;」

「メ…。」

「メ?」

「メルウが立派になって私嬉しい!」

「お…おかあさん!」


マルンさんが変な目で見ていますが関係ないですね。

メルウが成長して嬉しくなるのは仕方のないことです!


ゆっくり歩きながら宿屋につくとそこには幻想的な風景が広がっておりました。

おそらくここは巨大な切り株の中で光るキノコで明るさが確保されており、綺麗な池には小魚が元気よく泳いでいました。

宿は木造建築で洋風を意識しているのか風景に溶け込んでいるように見え巨大な蔓で固定されてるように見えました。


デザインはマルンさんがやったのだとか。

私が見惚れていると、メルウが次のように述べました。


「今は観光シーズンから少しずれてるので泊ってる人はいませんが。観光シーズンになると満室になって人の行き来がすごいことになります。」


ちゃんと仕事していてほっとしました。

ただちょっと気になったことがありましたので聞いてみることに…。


「メルウ、どうして私だとわかったんですか?」

「あ、…えっとですね。私が神狼のおとうさんと旅していた時なんですが。」


メルウが16歳になった時、フィニーと大人になったことを祝して世界を見て回ったらしいのですが。ちょうど呪われた大樹のところで足を止めたそうなのです。


「それで『あぁ…、この杖おかあさんが残してくれたものなんだ』って思いおとうさんと相談して少しの間、呪われた大樹付近に住んでいました。それでかあさんの魂の感覚を覚えれたというか。覚えちゃったというか…。かなりの力をあの杖に込めてましたよね?」


メルウはそういうところ天才肌でしたね。


「そうですね。少しでも大樹が癒えるように私の全てをあの杖に託しましたから。」

「ひぇ…、それでまだ効力あるって人間離れして魔族からもかけ離れてる。」


マルンさんの言う通り当時人間離れしてたなぁー…。


「それでもう一つの理由は…私が30歳の時に一人で頑張ろうと思い、おとうさんと別れて大樹から移動して東側に住んでたんです。」

「うんうん。」

「そこで、そのー…聖獣クラムって知ってます?」

「ん?」


あの熊さんですよね。


「聖獣クラムにその…20年前に求婚されたんです。そ…それでOKしちゃって…ここに住み始めて…。」


うん…ん?うん…んん?

メルウもじもじしながら頬を染めないで、私聞いてない。あ、フィニーも聞いてない?

つまりあの土下座って『あなたの娘をください。』っていう意味?

私はいいんですよ。私はいいのです…。


ちょっとフィニー行こうとしないで、神狼のあなたが行ったらみんな死んじゃう!

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