第14話 今日は宿屋探しでも私はママだった。

私達はギルドに戻り石版を受け取りに来たのだが、仕事終わりがかぶったのが受付嬢の方達が石版の上の小人達に夢中になっていました。

現在は小人達も仕事が終わったこともあり遊んでいるのだが…。


「なんか石版、持って行きにくいです。」

「…そうだな。」


ひとまず私達に気付くまで待つことにしたのでしたが、早い段階でギルドマスターが降りてきたのでので無事回収することができました。

あと稼いだ金額は20金相当なのだとかで、流石に多すぎるので半分の10金まで受け取ることにしました。

受付嬢達はめっちゃ喜んでたんできっと給料になるんでしょうね。


その後、宿を探すことをしたのですが…。


「いやー;念のため100銀に立て替えてもらってよかったです。」

「王都は1金で泊まれる場所もあるのだがな。」


宿屋は一泊食事付きで3〜5銀のところが多く、1金だとお断りという注意書きがある場所が多くそれだけ稼ぎにくいということなのだろ思いました。

ちなみに薬草一個で3銅、食材などは5〜10銅が目安となる感じになります。


しかし村の看板の地図を確認すると宿屋は結構あるみたいで、どこに行くか悩んでいると妖精さん達がある右端のある一箇所に集まっていました。

『夢羊のやすらぎ』という名前が確認できました。


「羊人ですかね?ここから近いのですが…。」


街の入り口からずっと東にある場所にその宿屋があるらしいのですが、そこは…深い森なのですよね。


「フィニーどう思います?」

「ふむ…、妖精達に従ってみるか。」


フィニーも森の中だと羽伸ばせそうですしそこにしてみましょうか。


そして歩いて20分でしょうか。

私達は深い森の前に立っていました。

そこには小さな看板があり、確かに『夢羊のやすらぎ』と書いてあるのですよね。でも目の前は深い森なのですが…。


「これは…結界だな。」

「結界?」


フィニーが鼻を動かしているあたり魔素の動きを見ていたのでしょう。

しかしなんの結界なのでしょうか。


「ひとまず森の中に入ってみましょうか。」


フィニーが頷いた後、一緒に森の中に入ると道が浮かびあかり街灯が優しい光で並んでいました。


「うわー…。」


と喋った瞬間たくさんの妖精達が私の上半身めがけ、埋め尽くす勢いでくっついてきました。


「うわー!」


一瞬で感動から驚愕に変わってしまいました。

うん、目の前には可愛い顔の妖精しか見えないですね。


「ごめんね目の前見えないから頭からは離れてね。」


そういうと素直に頭から離れてもぞもぞと胴体の方に移動していきました。

よし、これで見えますね。


「…なんか面白いな。」


フィニー笑わないでください。


たくさんの妖精をくっつけたまま、道を歩くことにしたのですが…他人からはどう見えるのでしょうか。

気持ち悪く思われないかな…、いやでも気持ち悪いと言われたらちょっとその人殴りそうですね。

こんなに可愛いのに…。


「うわ!なにそれキモ!」

…ブチッ。

「ナツメ!ダメだ!抑えろ!」


は、ちょっと自我失ってました。


「あははー…ごめんね。ちょっとびっくりしちゃった。」

「いえ…、いきなり襲いかかろうとしてごめんなさい。」


目の前には銀髪で褐色肌のスタイルのいいダークエルフのお姉さんが立っていました。

うーん、ボンッ!キュッ!ボン!ですね

…ボンと言ったらあのドワーフ思い出しちゃいます。


「僕のことはマルンって呼んでよー。」

「マルンさんですねわかりました。」


すると近くの妖精がマルンの方へ飛んでいき何か喋りました。


「うんうん…お母さんは気持ち悪くない?え、この子達のお母さん!?」


とうとう妖精の言葉わかる人来ちゃいましたか。

うーん…、どうしましょう。


「マルンさんどうしました。そんな…おおごえだしちゃ…て?」

「あ、メルウさん聞いてよー。この子さ…どうしたの?涙流しちゃって。」


メルウ…え?あのメルウ!


「かあさーーーーん!」

「だから、私はメルウの母じゃないよ〜!」

「ええええええ!」


私は今後何人から母親判定食らうのでしょうか。


メルウ、羊人で桃色のふわふわした髪と大きな角が特徴で体は大きく170cmほどのむっちり体系。

私が初めて彼女に会ったときは3歳児くらいで亡くなっていた両親の前で泣いていた所を保護して、よくお世話していた子でもありました。

私がどこかに行こうとするといつも泣いて困らされていましたね。

おかあさんと言われた時、笑顔で『私はあなたのお母さんじゃないよ。』と抱きしめるやりとりを毎回するのが楽しかったのをよく覚えています。

本人もわかってたと思うのですが、お互いに嫌じゃなかったんですよね。

そして彼女が9歳になった時、当時18歳くらいだった私はこの子をほっといて元の世界に帰ることを渋りそうになりましたが、フィニーが親代わりを引き受けてくれたことで戻れたことをつい先日のように思い出します。

別れの時にメルウの名を与えたのも私でした。


◇◇◇


メルウが泣き止んだあと、私は諦めたようにマルンさんに正体を明かしました。

しかしメルウもすごい美人さんになったようで特に胸がすごいことになっていました。

ところでメルウ思いっきり抱きしめないで、ちょっとお胸で息苦しいです。


「いやー…、意味わかんないね。」

「そりゃそうですよね。」

「かあさんは意味わかんなくないもん!おとうさんもなんか言ってよ!」

「いや、そこは何も言えんが…。」


ちょっとメルウ、幼児退行してない?ところでフィニー、お父さんと言われてしっぽ振ってますね。

その様子を心配になりながら私はマルンさんに質問をすることにしました。


「この先にある宿屋に泊まりたいのですが…、もしかして経営者はあなたですか?」

「あ、それならー…。この人。」


マルンさんが人差し指を私の方に指を向けました。

いや、少しずれてますね。…え?


「あのぉー…おかあさん。私が経営者です;」

「メ…。」

「メ?」

「メルウが立派になって私嬉しい!」

「お…おかあさん!」


マルンさんが変な目で見ていますが関係ないですね。

メルウが成長して嬉しくなるのは仕方のないことです!


ゆっくり歩きながら宿屋につくとそこには幻想的な風景が広がっておりました。

おそらくここは巨大な切り株の中で光るキノコで明るさが確保されており、綺麗な池には小魚が元気よく泳いでいました。

宿は木造建築で洋風を意識しているのか風景に溶け込んでいるように見え巨大な蔓で固定されてるように見えました。


デザインはマルンさんがやったのだとか。

私が見惚れていると、メルウが次のように述べました。


「今は観光シーズンから少しずれてるので泊ってる人はいませんが。観光シーズンになると満室になって人の行き来がすごいことになります。」


ちゃんと仕事していてほっとしました。

ただちょっと気になったことがありましたので聞いてみることに…。


「メルウ、どうして私だとわかったんですか?」

「あ、…えっとですね。私が神狼のおとうさんと旅していた時なんですが。」


メルウが16歳になった時、フィニーと大人になったことを祝して世界を見て回ったらしいのですが。ちょうど呪われた大樹のところで足を止めたそうなのです。


「それで『あぁ…、この杖おかあさんが残してくれたものなんだ』って思いおとうさんと相談して少しの間、呪われた大樹付近に住んでいました。それでかあさんの魂の感覚を覚えれたというか。覚えちゃったというか…。かなりの力をあの杖に込めてましたよね?」


メルウはそういうところ天才肌でしたね。


「そうですね。元の世界に帰る時に少しでも大樹が癒えるように私の全てをあの杖に託しましたから。」

「ひぇ…、それでまだ効力あるって人間離れして魔族からもかけ離れてる。」


マルンさんの言う通り当時人間離れしてたなぁー…。


「それでもう一つの理由は…私が30歳の時に一人で頑張ろうと思い、おとうさんと別れて大樹から移動して東側に住んでたんです。」

「うんうん。」

「そこで、そのー…聖獣クラムって知ってます?」

「ん?」


あの熊さんですよね。


「聖獣クラムにその…20年前に求婚されたんです。そ…それでOKしちゃって…ここに住み始めて…。」


うん…ん?うん…んん?

メルウもじもじしながら頬を染めないで、私聞いてない。あ、フィニーも聞いてない?

つまりあの土下座って『あなたの娘をください。』っていう意味?

私はいいんですよ。私はいいのです…。


ちょっとフィニー行こうとしないで、神狼のあなたが行ったらみんな死んじゃう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る