第25話 今日も一日妖精さんがくっついてくる。

ギルド内で細かい制約を決めた後、とりあえずあの石版は夜までギルドに置いておくことにしました。

小人達には私かギルド受付嬢の言葉を聞くことと、未来予測や運勢占いなどそういう占いはしないことをお願いしておきました。

そういうのはなぜか魔素を大量に消費するらしく、数回占っただけで拗ねて帰っちゃうのですよね。しかも一回拗ねると今日一日は占術『占い師の箱庭』は使えない制限付きなので慎重に制限しないといけません。

逆になんでオススメの場所とかの占いは消費しないのでしょうね。

そこは今だに謎なのです。


そんなこんなで村内を散策しているわけですが…。


「迷路みたいですね。」

「そうだな。」


要所は普通の建物が多いのですが邪神封印の場所の近くに行くほど上り坂になっており、豆腐状な石の建物が乱立していました。

建物と建物の間にはほぼ隙間なく隣り合っている状態でよく行き止まりに当たり本当に迷路に迷い込んだ感覚でしたが、人の手によって作られた大きな川が流れていたり、生活を豊かにする細かい工夫があったりと小さな発見があったので退屈はそこまでしませんでした。

ちなみドアはたくさんあるのですけど多分住宅だと思います。

そして、色々動き回った結果。


「妖精さん達が私の体にくっついた状態で歩いてるわけですが…。」

「ぶふ…。」


幸い足にくっつかないのはありがたいのですが、頭から腕、背中に腹部までくっついてるのですよね。

可愛いからいいのですけどたまに見える人に遭遇するとまじまじ見てくるんです。

え〜…この状態で発掘現場まで向かわないとダメ?あ、泣きそうになりながら横に首を振ってるってことは離れたくない?

可愛いですねー。お母さんと一緒に行きましょうか。

私は甘えてくる子には弱いのです。


「ところでフィニー。」

「なんだ?」

「フィニーにも頭に妖精くっついてますよ。」

「…そうか。」


…しっぽ振ってますね。


◇◇◇


私は邪神との決戦の跡地が見える場所に着いたのですが…。


「わー…すごい。」


村の坂道が終わり、大量のクレーターが目の前に現れました。

確か前見たときはほぼ崩れかけた神殿みたいなものがあったのですが、邪神とド派手に戦いましたからね。

跡形も無くなっているのは知ってましたが…。


「視界が良くなるといかに私がやったことが異常なのかわかりますね…。」


視界が見えない状態での戦いでしたから拳で範囲攻撃連打してたんでしたっけ、だいたい拳でクレーター作るって…当時の私相当ヤケクソですね。


「それはまぁ…否定できないな。」


確かに目の前でみてましたからね。

もうあんな死闘は勘弁したいのですが身構えながらのんびり生きましょう。


「あ、フィニーのつけた爪跡も見えますね。」


確かあの傷跡は私をかばった後に反撃した時の傷跡ですね。

それがきっかけで私はキレ散らかしたのですよね;


「英雄達が行ったことがいかに偉大だったか残したかったらしくてな。定期的に魔術で保護しているらしい。」

「そこまでしますか。」


恥ずかしい限りである。

…そういえば今朝から頭部の角がムズムズするのですよね。

そう思いながら頭部の角をぽりぽり掻いていると、フィニーはそれを見て知っていたのか教えてくれました。


「今は季節の変わり目だから羊人はもうすぐ角が生え変わる時期だったか。心配しなくとも角が取れたら一日で元の状態になるから気にしなくて良いぞ。」


なるほど、面白い体なんですね。


「しかし…大人になっても角が取れてびっくりしておろおろする羊人がいるのは今だに不思議ではあるのだがな。角が取れることを何回も経験してるのにだ。」


…なんかその光景みたいですね。

そんな羊人の会話をしながら私とフィニーは決戦の跡地の中心へ続く道を進んでいったのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る