第13話 今日も一日妖精さんがくっついてくる。

ギルド内で細かい制約を決めた後、とりあえずあの石版は夜までギルドに置いておくことにしました。

小人達には私かギルド受付嬢の言葉を聞くことと、未来予測や運勢占いなどそういう占いはしないことをお願いしておきました。

そういうのはなぜか魔素を大量に消費するらしく、数回占っただけで拗ねて帰っちゃうのですよね。しかも一回拗ねると今日一日は占術『占い師の箱庭』は使えない制限付きなので慎重に制限しないといけません。

逆になのでオススメの場所とかの占いは消費しないのでしょうね。

そこは今だに謎なのです。


そんなこんなで村内を散策しているわけですが…。


「迷路みたいですね。」

「そうだな。」


要所は普通の建物が多いのですが邪神封印の場所の近くに行くほど上り坂になっており、豆腐状な石の建物が乱立していました。

建物と建物の間にはほぼ隙間なく隣り合っている状態でよく行き止まりに当たり本当に迷路に迷い込んだ感覚でしたが、人の手によって作られた大きな川が流れていたり、生活を豊かにする細かい工夫があったりと小さな発見があったので退屈はそこまでしませんでした。

ちなみドアはたくさんあるのですけど多分住宅だと思います。

そして、色々動き回った結果。


「妖精さん達が私の体にくっついた状態で歩いてるわけですが…。」

「ぶふ…。」


幸い足にくっつかないのはありがたいのですが、頭から腕、背中に腹部までくっついてるのですよね。

可愛いからいいのですけどたまに見える人に遭遇するとまじまじ見てくるんです。

え〜…この状態で発掘現場まで向かわないとダメ?あ、泣きそうになりながら横に首を振ってるってことは離れたくない?

可愛いですねー。お母さんと一緒に行きましょうか。

私は甘えてくる子には弱いのです。


「ところでフィニー。」

「なんだ?」

「フィニーにも頭に妖精くっついてますよ。」

「…そうか。」


…しっぽ振ってますね。


◇◇◇


私は邪神との決戦の跡地が見える場所に着いたのですが…。


「わー…すごい。」


村の坂道が終わり、大量のクレーターが目の前に現れました。

確か前見たときはほぼ崩れかけた神殿みたいなものがあったのですが、邪神とド派手に戦いましたからね。

跡形も無くなっているのは知ってましたが…。


「視界が良くなるといかに私がやったことが異常なのかわかりますね…。」


視界が見えない状態での戦いでしたから拳で範囲攻撃連打してたんでしたっけ、だいたい拳でクレーター作るって…当時の私相当ヤケクソですね。


「それはまぁ…否定できないな。」


確かに目の前でみてましたからね。

もうあんな死闘は勘弁したいのですが…何が起こるかわからないので身構えながらのんびり生きましょう。

なんだかんだ言って私は戦うこと嫌いじゃないですしね。


「あ、フィニーのつけた爪跡も見えますね。」


確かあの傷跡は私をかばった後に反撃した時の傷跡ですね。

それがきっかけで私はキレ散らかしたのですよね;


「英雄達が行ったことがいかに偉大だったか残したかったらしくてな。定期的に魔術で保護しているらしい。」

「そこまでしますか。」


恥ずかしい限りである。

…そういえば今朝から頭部の角がムズムズするのですよね。

そう思いながら頭部の角をぽりぽり掻いていると、フィニーはそれを見て知っていたのか教えてくれました。


「今は季節の変わり目だから羊人はもうすぐ角が生え変わる時期だったか。心配しなくとも角が取れたら一日で元の状態になるから気にしなくて良いぞ。」


なるほど、面白い体なんですね。


「しかし…大人になっても角が取れてびっくりしておろおろする羊人がいるのは今だに不思議ではあるのだがな。角が取れることを何回も経験してるのにだ。」


…なんかその光景みたいですね。

そんな羊人の会話をしながら私とフィニーは決戦の跡地の中心へ続く道を進んでいったのでした。


◇◇◇


着いた頃にはお昼を過ぎており、少し大地がオレンジかかってきた印象を受けていました。

そして邪神が封印された場所を中心に周囲からはトンカチの音や、ツルハシが大地を叩く音にトロッコがゴロゴロ縦横無尽に駆け抜けている光景を見てわくわくしました。

そういえばここら辺の洞窟内部って私は見たことないのですよね。


「ん?お前達は?」


私たちが周囲を見回していると大層な髭を生やして鋭い目をしたドワーフが、作業服を汚した状態でのしのし歩いてきました。

失礼だと思いますが重量感ありそうですね。


「む…、ジロジロ見るな恥ずかしいではないか。」


恥ずかしがり屋さんでしたか。


「あぁすまない。儂達は見学に来ただけだ。」

「おう、呼び止めてすまんな。見学をぜひしていってくれ。」


さすがドワーフ、対応が軽いですね。

そんなことを思っていると遠方から大声が聞こえてきました。


「親方ー!この場所どうします?」

「親方というな!恥ずかしいじゃないか!…そこは木の棒で支えろ!」

「あい!わかった!」


あーわかるー。姉御と呼ばれた時の感じと似てますから何となくわかります。


「それにしてもいつもこんな感じで賑やかなんですか?」

「そうだな。俺等はここで寝泊まりして採掘に勤しんでる。」


ちょっと気になったので聞いてみることにしました。


「ここではどんなものが掘れるんですか?」

「ん?そうだなー…。まずは希少な魔物の骨だな。」


そういえばここら辺モンスターハウス状態でしたもんね。


「それでこれが竜の卵だろ?」


うんうん。


「そしてあそこに突き立ってるでかいのが瘴気の極大剣だろ?」


うん…ん?


「んであそこは強固な扉を設置しているが部屋の中には折れた武器の数々があるな。」


ん〜〜〜〜?


「それにして誰があんなもん作ったんだろうな。折れた状態でも相手の寿命を吸い取る武器だとかで禁忌指定される代物だぞ?」


多分その剣は私が拳で折りましたね。

再び別のドワーフから声が聞こえてきました。


「親方ー!それは外に情報漏らさない約束ですよ!」

「そうか?あっはっは、じゃあ忘れてくれ客人。」

「む、そうか。なら忘れよう。」


あ、はい。


「えっと…あの極大剣の方は大丈夫です?」

「あぁ、なんかある人物が機能を無くしてくれてな。瘴気の元があれだったらしいが今はただの極大剣になってるな。」

「それも極秘情報です親方!」

「あれはいいだろ!今は日緋色金(ヒイイロカネ)の塊だぞあれは、加工できるやつここにはいないんだぞ?」

「それが極秘情報なんですって!」


軽いなー、と思いながらふと周囲を見回してみると妖精達が土いじりしながら遊んでいました。

うーん、無邪気で可愛いですね。


「それにしてもお前達何者なんだ?やたら妖精に好かれているようだが。」


ん?そういえば自己紹介まだでしたっけ?

首を傾げてみるとフィニーが頷いてますね。


「私の名前はナツメと申します。今は職業占術士をしています。」

「そして、儂はフィニーと言う。」

「なるほどなぁ…。俺はボン、職業は採掘士だ。掘るのが好きなおじさんと思ってくれ。」


自己紹介が終わりボンが続けて話し始めた。


「それにしてもここはあれだろ?英雄達が最後に全力を出して戦った場所なんだろ。」

「…そう聞いてます。」


実際そうなんですよね。

邪神を滅ぼしてから元の世界に帰るまで弱パンチ一発で魔物が吹っ飛んでたのでかわいそうに思ったほどなんですけど…、やっぱ化物ですね当時の私。


「一回手合わせしてみたかったぜ。」


あのーボンさん。その一人すぐそこにいるんで安易な発言やめてくださいね。

私?私はまだ力のない子羊ですよ。

そんな感じでボンさんとあれこれ会話をしていると日が沈み始めました。


「それじゃ私達は帰りますね。」

「わかった。」


そう言うと妖精さん達はピタリと動きを止め再び私にくっついてきました。


「…あっはっは、これはエルフが見たら驚く光景だな!」

「…ほんとにそう思います。」


でもなんだかんだ嬉しい私がいるのですよね。

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