第22話 正体を晒け出す者!抹茶は…添えるだけ

「いやー昨日ぶりだ。可愛い羊ちゃん。」


相変わらず返事に困る言葉ですね。

すぐ横でフィニーがイライラしててこっちも別の意味で痛いのですが。


「おいフェイル、兄弟として言わせてもらうが…こっちに転生している美菜を泣かせたら承知しないからな。」

「なん…だと…。」


おーい、フィニー。初手特大のネタ晴らししてギルドマスター硬直しちゃいましたよ。今しまったって顔しても遅いですよ。

もう嘘いうの苦手で可愛いんですから、あとでいっぱい撫でちゃいますね。


「いいね!そのストレートっぷり、さすが兄弟だ。思う存分語り合おう!」

「ごめん、フェイル兄。ギルドマスター置いてきぼりになるから自重してくださいね。」

「い…いや、すまない…。一瞬意識飛びかけてしまった。」

「あ、そうそう。私はナツメって名前ですけど、多分英雄ナツの名前があればそれ私です。」

「ぐふぉ…。」


オーバーキルしてしまいました。

ノリで暴露するのはやっぱりダメですね。(てへっ☆)


少し間をおいて落ち着いた後、改めてギルドマスターは自己紹介を始めてくれました。


「改めましてギルドマスターのバングだ。君たちを呼んだのはフェイル殿の手紙を読んで真実か判断するためだったのだが…。」

「さっきのやり取りを聞いて本物の可能性が高くなったということですね。」

「はぁー…言葉だけでそこまで察するのか。さすが神狼が溺愛するだけある。」


邪神を滅した者ですから。本当はなりたくなかったのですけど…。


「相変わらず察しがいいね。ナツメちゃんは。」

「それはもう、100年前のこの世界でその感覚が鍛えられましたから…。フェイル兄はもう知ってるでしょ?」


裏切られれば死ぬ。期待にこたえなければ死ぬ。

私がバカの天然なんかじゃいられないと悟ったのは早々に早い段階でした。

何より疲れ切った美菜の姿を私は見たくなかったのでしたよね。


「あぁそうだったね…。みんなを元気づけるためにみんなおかしくなった。」

「それでも私はあきらめたくなかったんです。だから元凶の邪神を殴り飛ばしたのですけどね。」


フィニーが鼻で笑うと次のように聞いた。


「それでどうだ?夏。邪神に滅ぼし、比較的平和になった100年後の世界を体験してみて。」

「それフィニーが聞きます?楽しいに決まってます。」


まだ二日目ですけどね!


「はぁー、俺はまだ40歳だ。当時のことはよくわからないがそんなにひどかったのか?」

「北側はすべて呪われてましたからね。」

「おぅ…。」


嘘は言ってないのですよね。

北に行けば邪神封印の場所、北西に行けば体感温度90度を超える熱死の砂漠で北東に行けば呪われた大樹でアンデットが大運動会。

他の大陸に行こうにも海全体が常に20m越えの荒波、大波で逃げ道なかったらしいですしね。


「そもそも魚という存在がいたことも知らなかったしな。」

「あぁ、そっか広めたの私と美菜だっけ?」

「…すまん、頭冷やす時間をくれ。」


もしかしてギルドマスターは魚好きですね。


「ところで全く別の話をして済まない夏…いやナツメ。」

「どっちでもいいよ。どうしたの?フィニー。」


フィニーが少し考えた後、ゆっくりと答えました。


「お前の抹茶が飲みたい。」

「あー…ごめんね。素材ないからまだ作れないのです。」

「そうか…。」


しょんぼりした。

ごめんね。フィニー、頑張って抹茶用意するからね。


「…抹茶…なんだそれは、気になるな。」


ギルドマスターも食いついたー!


「そうだね。夏の抹茶はおいしいからなー。」


フェイルは女の子の作った料理はすごくおいしいとしか言わないから判断難しいな。

ひとまずギルドマスターには少し苦めの飲み物と教えておこうと思いました。


「しかし頭が痛い話だ…。そうそう、一つ聞きたいのだが毒の沼地の浄化が進んだ現象については何か知らないか。」


ぴぇん

答えたくない質問を投げかけてきました。

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