第11話 クマは正座もするし土下座もする?

さて転生してから二日目が立ちましたが私は元気です。

今日は南東の森の洞窟からフィニーのふわふわな毛に包まれて起床したわけなのですが、相変わらず全長は大きいです。

そして目覚めてなんですが困ったことに尿意をしたくなってしまいました。


「んー…おしっこすると聖域化しそう…。」


神の愛し子は変なところで不便ですね。(半ギレ)

ということでお花を摘んだ後、闇魔術『クリアエリア』を習得できているか確認したところ占術士の熟練度が上がってたらしく無事発動できていました。

しかし…よく考えれば大樹の聖域化が発動しているので気にしなくてよかったのでは?


「まぁ…そこは気にしないでおきましょうか。」


元の場所に戻った後、近くからのっそのっそと草木をかき分ける音がしてきたんで確認してみると前日の白いビックベア、たぶん聖獣クラムが珍しく森のぎりぎり端まで様子を見に来てくれました。

感覚的には神狼が上司にあたるので挨拶しに来たのでしょうか…。

神狼の近くまで行くと約3mの巨体が座り込んだのですが、何と正座をしていました。いや、なんで正座なんでしょう。

気になったのでさらに様子を見ていると…土下座したー!なんて美しい土下座…じゃなーい!

とこんな面白い一面が見れたのですでに今日一日満足した私でした。

その後、別れるときにゆったり手を振ってくれたのでなんかかわいい聖獣さんでしたね。怒ると怖いんでしょうけど…。


◇◇◇


身支度を終えてギルドに向かった現在、フィニーと一緒にギルドにいるわけですが…。


「えっと…カリナさん?」


前日のように占術を発動したのですが相変わらず視線が痛いです。やめて私なんか変なことしたんですか?

カリナさんに至っては頭抱えてる状態で考える像みたいになってるのですが…。

こらフィニー笑わないで!


「…何ですか?この占術…。」

「えーっと、質問をすれば勝手に占ってくれる占術でしてー…。」

「それでなんでこんなかわいい子たちが出てくるんですか!私もこの占術使いたい!」


えー、そっち!

あ、小人達が可愛いといわれて照れてますね。


「こほん、失礼しました。それでこの石板なのですが…どうしてあなたが持てるんですか?」

「あ、もしかしてカリナさんも試したころあるのですか?」

「えぇ、見事に転びました。」


んー…ん~~…。

困りました。

なんて答えればよいのでしょうか。

いっそ『私は転生者で前の名前は夏と言います。』言いたいのですが、言ったら言ったで大騒動起こりそうなんですよね。


「こらこらカリナ殿、熱心になるのもわかるが会員を困らせてはならんぞ。」

「あ、ギルドマスター!すいません。」


声の方に目を向けると前日演説台で報告をしていたおじ様が歩いてきていました。


「お初にお目にかかります。ギルドマスター。」


私がお辞儀をすると首を横に振って次のように語り始めました。


「ご謙遜なさるな。例の方の前だ、私の命が危うい。できれば気を楽にして話そうと思っていただけなのだ。」


ギルドマスターがそのように語ると周囲の者たちがざわめき始めました。

この人、フィニーのことに気が付いている…。

フィニーに視線を送ると頷いていた。

ということは先日の手紙はそういうことですか。


「わかりました。でしたら人目のないところにあの獣人様と一緒に案内してください。私の護衛という立場なので…。」

「それはありがたい。カリナ、やり取りの最中にすまないがナツメ殿達と少し会話をしてくる。」

「はい、わかりました。」

「あ、そうそうカリナさん、その石板は占術を発動してる最中は机から離れなくなるので盗難は気にしなくて大丈夫ですからね。」

「はい…えぇ!?」


あ、ギルドマスターも驚いた。

その後、さまざまな人の視線を浴びながら二階に上がり、事務室に案内されました。

その部屋には、フェイルが座っていたわけですが。

エロフめ、てっきり美菜の方に急いで会いに行くと思ってたんですけどね。


「いやー昨日ぶりだ。可愛い羊ちゃん。」


相変わらず返事に困る言葉ですね。

すぐ横でフィニーがイライラしててこっちも別の意味で痛いのですが。


「おいフェイル、兄弟として言わせてもらうが…こっちに転生している美菜を泣かせたら承知しないからな。」

「なん…だと…。」


おーい、フィニー。初手特大のネタ晴らししてギルドマスター硬直しちゃいましたよ。今しまったって顔しても遅いですよ。

もう嘘いうの苦手で可愛いんですから、あとでいっぱい撫でちゃいますね。


「いいね!そのストレートっぷり、さすが兄弟だ。思う存分語り合おう!」

「ごめん、フェイル兄。ギルドマスター置いてきぼりになるから自重してくださいね。」

「い…いや、すまない…。一瞬意識飛びかけてしまった。」

「あ、そうそう。私はナツメって名前ですけど、多分英雄ナツの名前があればそれ私です。」

「ぐふぉ…。」


オーバーキルしてしまいました。

ノリで暴露するのはやっぱりダメですね。(てへっ☆)


少し間をおいて落ち着いた後、改めてギルドマスターは自己紹介を始めてくれました。


「改めましてギルドマスターのバングだ。君たちを呼んだのはフェイル殿の手紙を読んで真実か判断するためだったのだが…。」

「さっきのやり取りを聞いて本物の可能性が高くなったということですね。」

「はぁー…言葉だけでそこまで察するのか。さすが神狼が溺愛するだけある。」


邪神を滅した者ですから。本当はなりたくなかったのですけど…。


「相変わらず察しがいいね。ナツメちゃんは。」

「それはもう、100年前のこの世界でその感覚が鍛えられましたから…。フェイル兄はもう知ってるでしょ?」


裏切られれば死ぬ。期待にこたえなければ死ぬ。

私がバカの天然なんかじゃいられないと悟ったのは早々に早い段階でした。

何より疲れ切った美菜の姿を私は見たくなかったのでしたよね。


「あぁそうだったね…。みんなを元気づけるためにみんなおかしくなった。」

「それでも私はあきらめたくなかったんです。だから元凶の邪神を殴り飛ばしたのですけどね。」


フィニーが鼻で笑うと次のように聞いた。


「それでどうだ?夏。邪神に滅ぼし、比較的平和になった100年後の世界を体験してみて。」

「それフィニーが聞きます?楽しいに決まってます。」


まだ二日目ですけどね!


「はぁー、俺はまだ40歳だ。当時のことはよくわからないがそんなにひどかったのか?」

「北側はすべて呪われてましたからね。」

「おぅ…。」


嘘は言ってないのですよね。

北に行けば邪神封印の場所、北西に行けば体感温度90度を超える熱死の砂漠で北東に行けば呪われた大樹でアンデットが大運動会。

他の大陸に行こうにも海全体が常に20m越えの荒波、大波で逃げ道なかったらしいですしね。


「そもそも魚という存在がいたことも知らなかったしな。」

「あぁ、そっか広めたの私と美菜だっけ?」

「…すまん、頭冷やす時間をくれ。」


…もしかしてギルドマスターは魚好きですね。


「ところで全く別の話をして済まない夏…いやナツメ。」

「どっちでもいいよ。どうしたの?フィニー。」


フィニーが少し考えた後、ゆっくりと答えました。


「お前の抹茶が飲みたい。」

「あー…ごめんね。素材ないからまだ作れないのです。」

「そうか…。」


しょんぼりした。

ごめんね。フィニー、頑張って抹茶用意するからね。


「…抹茶…なんだそれは、気になるな。」


ギルドマスターも食いついたー!


「そうだね。夏の抹茶はおいしいからなー。」


フェイルは女の子の作った料理はすごくおいしいとしか言わないから判断難しいな。

ひとまずギルドマスターには少し苦めの飲み物と教えておこうと思いました。


「しかし頭が痛い話だ…。そうそう、一つ聞きたいのだが毒の沼地の浄化が進んだ現象については何か知らないか。」


ぴぇん

答えたくない質問を投げかけてきました。

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