第19話 石版も全力を出したいのです
石版はゴンと音を立てながら尻餅ついた私の方に優しく倒れてきたので、応えるように私は石版を受け止めました。
「だ…大丈夫かの?」
「…あはははは。まるで本当に生きてるみたい。」
私に会えたのが本当に嬉しかったのでしょうか。初手転ばされたあたりかなり拗ねてますね。
おっとおじいさんが心配してますね。
「もう大丈夫です。この石版の感覚を覚えましたので…。」
そう言って立ち上がると、私は石版を平らに置ける机があるか見渡しました。
「おじいさん、すいません。図々しいですができるだけ水平における大きめの机はありますか?あと布もお願いします。」
「あ、あぁ。こっちになら。」
私たちはおじいさんの後ろを歩くようについていくと、大きな作業台のようなものが見えてきました。そこには綺麗な布がたくさんあり、壁にもヤスリも様々な種類と同型の数が飾ってあっりました。
そして内装の整い方からして常に綺麗にしているのでしょう。
そう思っているとふとおじいさんが喋り出しました。
「驚いた…。そうやって持ってると普通は何度も転ぶのじゃがな。」
「じゃじゃ馬には変わらないですよ。そう…じゃじゃ馬にはね。」
私はそのように返事をすると作業台の上に石版を置きました。
地面でもよかったんですけど、この石版は余程のことじゃない限り地面で占術することを嫌うんですよね…。
「さて、おじいさんに初めて名乗りますが、私の名前はナツメで職業は占術士です。」
「そして、儂はフィニーだな。」
「な…なるほど。しかしその占術士のお嬢さんはなせその石版を欲しがるのじゃ。」
そう占術士には基本石版がいらないのですよね。
正確にはタロットがメインなのですが。私が使うのはレーダーチャート占い、くもの巣グラフとも呼ばれていますね。
そういう他者から見てもわかりやすいのが好きだったので特注で作ってもらったんですよね。要は正角形という形が重要だったわけですがこの世界の人たちにはこの形は馴染みないかもしれないです。
「それにこれを扱えるのは私と親友しか扱えないでしょうしね…。」
「?」
おっと、石版を拭きながら呟いてしまったのか、おじいさんが首を傾げてますね。
「これからこの石版の扱い方を実演するので見ててくださいね。」
「わ…わかった。」
「すぅ…占術『占い師の箱庭』」
私は石版の中心にある窪みに人差し指を添えながら魔力を込めて占術を唱えました。すると石版の周囲から膨大な光の球体が集まり始め、光は小さな粒子となり半透明の家を形成していきます。
その後、家が完成したと思ったら10cmくらいの三角棒を被った小人達が九人ほど出てきました。ちなみに触れようとすり抜けます。
それにしても…よっぽど正しい使われ方して嬉しかったのか家が豪邸になってますね。前はもっと小さかった気もしますが。
おじいさん驚きすぎて固まっちゃいましたね。
「こんな感じでこれが石版の正しい使い方ですね。」
「…こ…これは神の御技なのか?」
「え、違います。」
あぁ、これは現実逃避したいような表情ですね。
ふむ…小人達は遊び始めちゃいましたし、せっかくなんで補助職業について占ってみましょうか。
「私にオススメの補助職業はなんですかー。」
私が小さい声で呟くと小人達はピクリと反応したのか。九人それぞれ定位置にたどり着いたあと看板を取り出しました。その看板には職業がそれぞれ書かれており、中心の小人から離れるほど適性が高いのですが…。
高め判定で格闘家、薬士、錬金術士、農家、魔物使い、呪術士でした。
他は0の近いのですが、なぜ転生してもトップ適性が格闘家なのですか…拳から逃げちゃダメなんですね。
「…これが神の御技か。」
だから違いますって。
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