第8話 妖精たちの親は存在していた
私達が抜けだした後も色々もめ事があったらしいのだが、耳や視線が痛いのでひとまず早々にギルドから立ち去ることにしました。
それから素材を売って占術士の道具を買うために素材取引場を目指していたのですか。
「フィニー…いい加減イライラするのはやめて~。チクチクします…。」
「すまん…。どうにも久しぶりにあの性格を見ると歯止めが利かなくてな。」
フェイルに出会ってからというもの彼が私にセクハラ発言したせいか現在進行形でフィニーが不機嫌でした。
周囲からはその怒気で当てられる人も少なくなく、すれ違うたびに驚かれているしまつです。
「大体あやつは女を見ると鼻の下伸ばしすぎなのだ!兄弟として説教したいくらいだ。」
「まぁまぁ。」
そういえばフェイルとフィニーは種族が違えど昔は兄弟のように育ってきたと聞いたんですよね。名前が少し似ているのも兄弟になる証としてフェイルがフィニーに名付けたのだとか…。
でもいまだにわからないのはなぜ従獣の契りという契約をフィニーはフェイルでなく私にしたのでしょう…。
それも追々わかるのでしょうね。
「ここを…右でしたっけ?」
「あぁ、そうだな。」
私達は迷路のような街並みを楽しく探索していると目的地に着いた頃にはお昼になっていました。それにしても魔族の体というのは本当に便利でこの世界に来てまだ何も食べなくてもお腹空かないみたいなんですよね。
空気に漂っている『魔素』が餌だからなんでしょう。
まあ初日から魔素の濃い場所に行ったからなのもあるんですけど…。
ひとまず素材取引場に着いたのですが、すごい人々の活気と熱気でむせ返りそうになりました。
フィニーによると場所によっては王都などは生肉、毛皮、植物など乾燥に弱く痛む物は大きい建物内で取引を行ってることが多いのだが、ここは石材の取引が多いため鉱石取引所は開放的な取引所となっていました。
確かにこの人数だと『サウナ状態になりますよ…。』と思いながら私の目的である植物・薬草取引所へ向かうことにしました。
植物・薬草取引所は木造の建物になっており外見は大きめの洋館、内装は木をメインとして作られた棚や壁が特徴的でした。
雰囲気的には冒険者の集うBARの雰囲気が強くどうやらお酒も作っていそうでアルコールの匂いがほのかに漂ってきますね。
活気もそれなりにあり棚に陳列された薬草など真剣にみている人や、買うか悩んでいる人等様々で鉱石には劣るもののかなり賑わっていました。
「おう、いらっしゃい!」
場所に似合わないターバンをして黒いメガネをかけ、ひげを生やしたイカツイ男性が店員をしていました。
まぁ、ぱっと見かなり高価な植物を取引していたので防犯対策なのでしょうね。
しかし体も店員服が筋肉のせいでぴちぴちですね。
ふと何か引っ張られる感じがしたので周囲を見回すと羽の生えた手のひらサイズの女の子たちが興味津々でこちらをみてきました。
「あ、ここは妖精さんもいるんですね。」
「ほう…嬢ちゃんわかるのか?」
普通の人は見えないのですが心穏やかな人や優しい人には見えるみたいなのですが…。やっぱり妖精さんたちには私が神の愛し子だとわかるみたいで、たくさんの妖精がぴったりくっついてきました。
「あっはっは、人見知りの妖精たちがこんなに心許すの初めてだな。」
「そ…そうなんですね。」
なんか前世も妖精たちに懐かれてたんですが、ここまで懐かれることはなかったのでそれも神の愛し子だからでしょうね。
見える人はこちらをみて驚いてますけど気にしないでくださいね。
そういえば…、お店の植物は主に南東の物なのでしょうか。
「店主さん、これらの植物って南東の森が主なんですか?」
「そうだなー…。八割はあの森からだな。」
そんな会話をしているとフィニーが近づいてきて耳打ちしてくれた。
「妖精からかすかに夏の欠片を感じるからもしかしたらこの子たちはナツメを親同様に思ってるかも知れんな。」
あ、神の愛し子関係なかった。
…私、子沢山になってました。
うん、100年前のやらかしがボディーブローのように聞いてきますね。
たぶん取引所から出ようとすると妖精たちは引き止めてくるのでしょうか。
私こう見えて子バカなんで絶対甘やかしちゃう。(前世の経験)
まあこんなにくっつかれると周囲の目が気になるので『くっつかなくてもまた会いにくるからね。』と念じると満面の笑みで離れてくれました。
うん、可愛い。
「どうやら満足して離れてくれたみたいです。」
「あっはっは、面白いものが見れて俺は満足だ。…で何を買いに来たんだ?それても売りにきたのか?」
「そうですねー…。ちょっとこちらに慎重にこれを見て欲しいのですが。」
私は人気の少ないところに手招きした後アイテムバックから一枚の葉っぱを取り出しました。
なんか直感でこれをぽんと出すと大事になりそうなのでそのようにお願いしました。
「うむ…。」
言われたように店主は慎重に確認しようとするとみるみる顔色が変わっていきました。
いや、そんな気はしていましたよ。
手入れの時に杖についた葉っぱから異様な気配漂っていたんですけど、鑑定ないんでわからなかったんですよね。
せっかくなんで二枚もらってきたんですが…。
「こ…これ聖樹の!…おっと。」
店主は出そうになった声を抑えながら周囲を見ました。
そして誰も見ていないのを確認すると
「お嬢さんどうやって手に入れたんだ!」
「はぁー…、やっぱりそうなりますよね;」
うーん、これは今入手方法を言わないほうがいいですね。
「ごめんなさい。今はそれをお答えできません。」
「しかしだ…。いや、わかった客の秘密は尊重しないといけないしな。」
「ありがとうございます。」
「それでだ…。これ…『聖樹の葉』売りたいって話なのか?それはここだと無理だぞ?」
ここからが本題です。
道中フィニーが教えてくれたことの中に基本的に高価すぎるものは王都や魔王城付近で売るほうが確実だと言われました。
理由としては特定の場所では高価すぎてお金が足りず一度に買い取れないのだとか。そこで店主にある提案をしました。
「ちょっと早急にお金が欲しいので、契約書で手を打とうかなと思います。」
「…どう言うことだ?」
「そうですね。この葉一枚でいくらですか?」
「そうだなー…。100金くらいか。」
(1金=約10万円・1銀=約1,000円・1銅=約10円と言う単位ですね。)
簡単にいえば約一千万円になるわけですが…。
それにしてもこの世界のお金って六面ダイスに王家の印のついたようなデザインでサイズもサイコロのそれなので、慣れるまで時間かかりましたがコロコロして遊べて面白いんですよね。(お金で遊ぶなとは思いますが。)
ちなみに錬金術で金・銀・銅は作り放題なので、現在は金・銀・銅の価値は少ないですが…電気製品ができたら話が変わりそうではありますね。
「じゃあ8ヶ月間、月に10金払うと言う契約をすればどうです?」
「はぁ?確かに可能だが…残りの20金どうすんだ。それに初対面だぞ?」
「葉の管理費ということで…それに悪い店主なら妖精さん達は集まりませんですから。」
「…ぶ…ぶぁっはっはっは。」
店主は大声で豪快に笑だしました。その音量の大きさにフィニー耳塞いじゃって、狼なのでうるさいのでしょう。
そして笑い終えると何度も頷いて右手を差し伸べてきました。
要は交渉成立ということですね。
「面白い!俺の名はガーベだ。その取引に応じよう。」
「ありがとうございます。私の名前はナツメです。」
その後、契約の魔法紙にお互いの名前を書き終え、取引が完了し終わったので取引場を後にしようとしたのですが…。
「フィニ〜…、妖精さん達がまたくっついて離れてくれないですー…。」
「ふふ、何年も会えなかった親なんだ。仕方ないだろう。」
私が妖精達に解放されたのは夕方になってからでしたとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます