第15話 妖精たちの親は存在していた

私達が抜けだした後も色々もめ事があったらしいのだが、耳や視線が痛いのでひとまず早々にギルドから立ち去ることにしました。

それから素材を売って占術士の道具を買うために素材取引場を目指していたのですか。


「フィニー…いい加減イライラするのはやめて~。チクチクします…。」

「すまん…。どうにも久しぶりにあの性格を見ると歯止めが利かなくてな。」


フェイルに出会ってからというもの彼が私にセクハラ発言したせいか現在進行形でフィニーが不機嫌でした。

周囲からはその怒気で当てられる人も少なくなく、すれ違うたびに驚かれているしまつです。


「大体あやつは女を見ると鼻の下伸ばしすぎなのだ!兄弟として説教したいくらいだ。」

「まぁまぁ。」


そういえばフェイルとフィニーは種族が違えど昔は兄弟のように育ってきたと聞いたんですよね。名前が少し似ているのも兄弟になる証としてフェイルがフィニーに名付けたのだとか…。

でもいまだにわからないのはなぜ従獣の契りという契約をフィニーはフェイルでなく私にしたのでしょう…。

それも追々わかるのでしょうね。


「ここを…右でしたっけ?」

「あぁ、そうだな。」


私達は迷路のような街並みを楽しく探索していると目的地に着いた頃にはお昼になっていました。それにしても魔族の体というのは本当に便利でこの世界に来てまだ何も食べなくてもお腹空かないみたいなんですよね。

空気に漂っている『魔素』が餌だからなんでしょう。

まあ初日から魔素の濃い場所に行ったからなのもあるんですけど…。


ひとまず素材取引場に着いたのですが、すごい人々の活気と熱気でむせ返りそうになりました。

フィニーによると場所によっては王都などは生肉、毛皮、植物など乾燥に弱く痛む物は大きい建物内で取引を行ってることが多いのだが、ここは石材の取引が多いため鉱石取引所は開放的な取引所となっていました。

確かにこの人数だと『サウナ状態になりますよ…。』と思いながら私の目的である植物・薬草取引所へ向かうことにしました。


植物・薬草取引所は木造の建物になっており外見は大きめの洋館、内装は木をメインとして作られた棚や壁が特徴的でした。

雰囲気的には冒険者の集うBARの雰囲気が強くどうやらお酒も作っていそうでアルコールの匂いがほのかに漂ってきますね。

活気もそれなりにあり棚に陳列された薬草など真剣にみている人や、買うか悩んでいる人等様々で鉱石には劣るもののかなり賑わっていました。


「おう、いらっしゃい!」


場所に似合わないターバンをして黒いメガネをかけ、ひげを生やしたイカツイ男性が店員をしていました。

まぁ、ぱっと見かなり高価な植物を取引していたので防犯対策なのでしょうね。

しかし体も店員服が筋肉のせいでぴちぴちですね。

ふと何か引っ張られる感じがしたので周囲を見回すと羽の生えた手のひらサイズの女の子たちが興味津々でこちらをみてきました。


「あ、ここは妖精さんもいるんですね。」

「ほう…嬢ちゃんわかるのか?」


普通の人は見えないのですが心穏やかな人や優しい人には見えるみたいなのですが…。やっぱり妖精さんたちには私が神の愛し子だとわかるみたいで、たくさんの妖精がぴったりくっついてきました。


「あっはっは、人見知りの妖精たちがこんなに心許すの初めてだな。」

「そ…そうなんですね。」


なんか前世も妖精たちに懐かれてたんですが、ここまで懐かれることはなかったのでそれも神の愛し子だからでしょうね。

見える人はこちらをみて驚いてますけど気にしないでくださいね。

そういえば…、お店の植物は主に南東の物なのでしょうか。


「店主さん、これらの植物って南東の森が主なんですか?」

「そうだなー…。八割はあの森からだな。」


そんな会話をしているとフィニーが近づいてきて耳打ちしてくれた。


「妖精からかすかに夏の欠片を感じるからもしかしたらこの子たちはナツメを親同様に思ってるかも知れんな。」


あ、神の愛し子関係なかった。

…私、子沢山になってました。

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