第7話 ギルドにて心当たりありすぎます。 後半

そんな感じでお姉さんは挨拶してくれたものの、私の外見をまじまじ確認したあと首を傾げて訪ねてきました。


「えっと…迷子ですか?」


初手これは辛い感じがします。

フィニーには離れておいてと頼んでたのできっと子供に見えたのも身長110センチという外見のせいですね。(実際0歳、中身60歳)


「えっと、名前はナツメと申します。ギルドカード作るためにきました。」

「あ、…あ〜失礼しました。ここの村の子供達はギルドカードを作ることが少なかったんでつい…。」


確かに平和になったので親も死ぬことがないと考えると、これも平和になったことによる必然なのでしょう。

でも私は早めに登録しておきたいんです。

お金がないですしその母親も神様なんですよねー。困ったことに…。


「えっと、年齢はお伺いしても?」

「12歳になりますね。(嘘である)」


簡単な質問に答ると受付のお姉さんが席を外し受付場から奥の部屋へ行きました。そして20分くらいたったころ、再び戻ってきた時に事件が起こりました。

ギルド入口のドアがものすごい音を立てて開くと、息を切らしながら入ってくると民族的な衣装をまとった男性が大声で叫びました。


「た…大変だ!ぜぇ…どっ毒の沼地が浄化されてる!」

「なんですって!?」


あ~何ということでしょう。

ものすごい心当たりがあります。


「えっと…毒の沼地って?」


だめもとで聞いてみることにしました。


「え…えぇ、20年前錬金術士たちが危険な薬物を作ってしまい置いとくだけでも二次災害を引き起こしかねないのでそれを投棄した沼が近くにあったんです。」


週三で状況を記録していて今日は偶然確認する日だったのだとか。

場所を尋ねると地図を取り出しその場所に指をさしてくれました。

そしてその沼地から目で川に沿っていくと、私が服を洗濯していた場所にたどり着きました。

伏線回収がこんなに早いなんて…こら、フィニー笑わないでください。


「光る柱に神狼の大移動…毒の沼地の浄化と一体どんな奇跡が起ころうとしてるのでしょう。」


いや、ほんとにそうですよね。

私のせいです。ごめんなさいで済む話じゃないですよねー。


周囲がざわついていると突如高身長で美青年、黄緑長髪で白く綺麗なローブをまとったエルフが入ってきました。


「どうしたんだい?そんなに騒いでしまって…これじゃ綺麗な子たちが不安がるでじゃないか。」


そこには英雄の一人フェイルが立っていました。

先ほどまでざわめいていた空気が一瞬で静まり返ったあたり相当な権力者になったのでしょう。それにしても…相変わらずちょっとチャラい言動が慣れないです。


「ん?君は…」

「お初にお目にかかりますフェイル様、ナツメと申します。」


注目されるのは少しまずいのですが、逃げ場がないので私がそのようにしゃべるとフェイルは眉毛をピクリとあげました。

周囲からは一瞬なんでわからないと思いますがわたしが見逃すはずない動作ですね。


英雄の一人フェイル。

偽装を得意としたエルフで暗殺術、性格偽装、変装に長けていました。

そのわりに素の性格は一見チャラく見えますが計算高く、情熱にあふれた男ではあるのですが…冒険中擬態して女湯を除く変態でもあったんですよね。

当時鑑定持ちの私が毎回とっちめてたのですが楽しい思い出でした。

別れの時は普段泣かないくらい大泣きしてたのを思い出します。


「これはこれは美しいお嬢様ではないですが。こちらにどのようなご用事で?」


視線を合わすこの素振り…、今度はあなたが私を試してますね。


「そうですね。ギルドカードを登録したのち、資金の準備をしたあと南南西へ向かおうと思っております。」

「そうですか。見たところここでは見ない顔だったもので…」

「先ほどあそこの素敵な獣人様に助けていただいて、連れてきてもらったところなんですよ。」


あ、素敵という言葉でフィニー照れてますね。


「…あの方とお話しても?」

「構いませんよ。」


笑顔で対応することにしました。

エロフのことですから神狼とわかってるんでしょうね。

…何か久しぶりの心の読み合いで疲れちゃいました。


これでまだ一日目なんですよね…。


「はぁ~…やっぱりフェイル様は素敵だわー。」


うん顔が良いのは分かるのです。

でも…受付のお姉さんお願いだから仕事してくださーい。


「え…と受付のお姉様、改めてギルドカード登録したいのですが。」

「おら、いやだーお姉様だなんて…あ、こほん。かしこまりました。」


その後、書類に簡単な項目のチェックを終えると半透明の板に手を置きました。

これは職業が分かる魔石盤で、基礎職業の文字が浮かびあがりそれを映すことでギルドの登録が済むのですが…。


「…占術士ですか!」

「え?はいそうですが…。」

「あ、ごめんなさい。ちょっと占術士の方が最近人手不足でして…。」


何かまずいことになったのでは?っと思ったがどうやらそうではありませんでした。

理由を聞くとどうやら最近職業に悩む人が多いらしく、各地で自分がどの基礎職業がおすすめなのか分からず無職でがんばる人が増えてしまったらしいのです。

ちなみに基礎職業の獲得と補助職業の変更は教会できるのですが、人生に左右されるため迷ってしまいなかなか教会に足を運ぶ勇気出ないのだと聞きました。

基礎職業の獲得は無料な分慎重になりすぎるのだとか。


「それで占術士を雇おうとも思ったのですが。過去に私欲で人の人生を操る占術士が出て以来信用できる方が少なくなってしまったんですよね。」

「そうですか…。」


これはなかなか厳しそうですね。

本来占術士は他人の幸せを願って占うものなのですが、私欲目的でも活用できてしまうためなかなか解決できない問題でもあります。


「話は聞かせてもらったよ。お嬢様。」

「うわぁ!」


フェイルは油断も隙も無いんだから…フィニー怒ってますよね。


「…カリナさん、彼女は信頼できるとギルドマスターに伝えておいてください。あとこれの手紙も渡してもらえると。」

「え、は…はい!」


あら、真面目な雰囲気になりましたね。

おそらくフィニーと話して私を誰か気づいたのでしょう。


「さて、お嬢様取引をしよう。」

「…言わなくてもわかりますよ。私の持ってる情報を渡してほしいんですよね。」

「んー、話が早くて助かります。できればあなたの下着も欲しいのですが。」


余計なことを言わないでください。

あー、もう周囲がざわついてるしフィニーが怒ってるじゃないですか。


私はすぐに紙に書いた後手渡しをしました。


「これが私の知っている情報になります。」

「…ふふ。ありがとうマイハニー!」

「私はあなたのハニーじゃないです。ですよ!それにその言葉は紙の方に書かれた方に言ってあげてください。」

「は!これはすまない。じゃまたどこかで!」


その後颯爽とフェイルはギルドから立ち去りました。

…正直疲れました;あと数年は顔を見ないことを祈りましょう。


「えっと…、フェイル様とはどのようなご関係で…。」

「ある人からあの人に情報を渡してくれと頼まれたんですよ。それで容姿を確認できたのでその情報を渡しただけです。」(大嘘)

「なんて書いたんですか?」


さすが受付嬢だけあってさっきやり取りを疑ってますね。


「そうですねー。『南南西に美しい菜園を作っている目的のドワーフがいますよ。』と書きました。幼馴染なので農業していること知ってるんですよね。」

「そうなんですね。なんだか今日のフェイル様とてもうれしそうだったので…」


そういう意味で疑ってましたか。

しかし下着を要求するあたり…むっつりスケベはかわっていませんでした。

まあ、私と美菜以外の下着は興味ないのがいまだに納得できない部分ありますが。


「しかし、さすがにフェイル様から信用できるといわれても…先ほど来たばかりの方を信用するのは厳しいものがあります。」

「それは大丈夫ですよ。明日まで待ってもらえれば実績は取れるので。」

「え、そうなんですか?」


それに下手するとギルドマスターが大慌てになりそうですからね。

手は打っておきましょう。

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