第11話 ギルドにて心当たりありすぎます。 その1
「ところでフィニー、その姿で街歩いたら流石にまずいのでは?」
私は村に近づこうとしたとき思い出したように伝えました。
「おぉそうだな。うっかり尻尾で建物を壊しかねん。」
フィニーがそう語ると光に包まれた後身長2メートルになり、狼の獣人族になりました。
その状態でも全身毛に覆われていて顔は小さくなっただけでそのままですが、神狼なだけに気品を隠しきることは難しいようでした。
それでもデリカシーはないんですけどね。
服も魔力で自由に変えが効くそうです。
後で聞いてみましょう。
「それでデリカシーがあればなー…。」
「すまない。儂は嘘つくことが苦手なのだ。」
100年前もそうだったんですよね。
確かー…そう、魔王のことを頭の聞かぬ小娘がと言って怒らせてたんでした。
その時は大変だったんですよねー…。
魔王が『この駄犬が躾し直してやる!』っていって聖獣vs魔王が勃発した後、魔王城半壊して二名とも魔王の秘書に怒られてましたね。
「ふふふ、でもなんか昔を笑い話にできるって幸せですね。」
「そうだな。」
◇◇◇
会話をしながら街の入口に来ると木材でできたアーチ状の門が出迎えてくれ、門の向こう側は石材の建物が段差に沿うように並んでいました。
門の上には村の名前の看板がついてるみたいで、サーマ村というそうです。
『サーマ』とは太陽神鳥を指しますのでここから南西にある砂漠の都市サーマ王国の民がここを開拓したのでしょう。
種族は確かー…主は鳥人族でしたね。
人族からは『ハピィ』と呼ばれているんで呼びやすかったのを覚えています。
ちなみに飛べるハピィと飛べないハピィがいるのですが、おそらく多分人族と混血した事による血の多さの違いなのだと思います。
本人たちは気にしていないそうで性格は温厚な方が多い印象を受けていました。
「それにしても…流石に村でも見張りの一人はいそうなのですが。」
「確かに見張りもいないし人々もいないな。確か入り口前でも行き交う人は多かった記憶があるのだが。」
フィニーが鼻を動かして目を瞑ると、人々が今どこにいるのか確認することができました。
おそらく探知魔法を使ったのでしょうね。
「中央広場にたくさん集まっているな。」
「…行ってみます?」
フィニーが頭を縦に振ったので徒歩で中央広場に向かっていると、遠くからでも賑わった声が聞こえているのがわかりました。
同時に中には怒号の声も聞こえてきたので、建物の陰から声のした方に頭を向けると何やら看板に向かって人々が群がっていました。
「ふむ、確かあそこはギルド前の看板だったか。」
そう言われ、後方の方に視線を向けると赤い屋根に暗めのレンガで壁が綺麗に作られ、見張り窓からいくつかの国旗や旗が垂れ下がっている大きな建造物がありました。
遠目から見た時目立つ建物があるなと思ったらあれがギルドだったんですね。
看板を確認するため人々の前に私たちは近づこうとするとこんな声が聞こえてきました。
「おいどういうことだ!神狼がここに来るって被害が出たらどうすんだ!」
あらー…、私のせいですねごめんなさい。
そういえばたくさんの人々で見えなかったけど演説用の台がありますね。
もしかしたらこれから演説が始まるのでは?と人々の声を聞きながら少し待機しているといかつい人間のおじ様が台に上がってきました。
「おほん、皆の者静粛に。」
おぉ、威厳のある声ですね。
「先ほど王都マリンから念話魔法で情報が入ったのだが、南東と南南西に光の柱が出現して消えたという目撃情報と報告が入った。」
その後再び周囲ざわつき始めました。
「そして、その神狼はその南東にある光の柱に向かったあと消息を絶ったという。」
あ、光の柱は多分私たちのせいですね。申し訳ありませんでした。
あと神狼様は私のすぐ横にいますね。
フィニー笑わないでください。
「その怪奇現象を調査するため有力な錬金術士や冒険家の同行を願いたい。そして念を押すことになるが聖獣クラム様がおられるため動物たちを襲わず慎重な行動をお願いしたいと思う。」
別に少しなら狩っていいと思いますけど狩りすぎは確かにダメですね。
ダークエルフも怒っちゃいますしね。
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