第12話 ギルドにて心当たりありすぎます。 その2

「詳細に関してはギルド内で受付嬢が対応する。私からは以上だ。」


おそらくあの方がギルドマスターだったのでしょう。

全体報告が終わると納得いかない者や周囲の顔色を伺う者など様々な反応が見えましたが、困惑している人がほとんどだったのでしょう。

なにせ光の柱を調べるということは神狼と遭遇するリスクが高いことを意味していたのですが…。

報告から十分くらいでしょうか。その場にいた人々は生活に戻るように解散していきました。


「『灯台下暗し』という言葉をそのまま使えるとは思いませんでした。」

「とうだい…もとくらし?なんだそれは。」

「『ことわざ』という故郷の言葉遊びみたいなものです。意味はでしたね。」

「身近では別にないとは思うのだが…。」


そのフィニーの言葉に笑いながら私はジェスチャーで耳を傾けるようにお願いした後小さな声で言いました。


「みんな神狼という意味は知ってるのにどこからもばれなかったでしょ?ばれたらここは大騒ぎしますよ。」

「…なるほど、確かにそうだな。」


フィニーは何度も頷いた後こちらをみながらにこやかに笑いました。


「しかし、ナツメは本当に面白いな。そんな色々な意味を持つ言葉も他にあるのであろう?」

「むぅ、褒められて嬉しいけど期待はしないでね。国語…えっとそういうことわざとかって私苦手だったから。」

「そうなのか?」

「意味と言葉が合わないとか混乱したりするんですよね。『豚に真珠』とか普通異世界の人が聞いたら意味わかんないと思いますし。」

「なるほど、確かに『ぶた』というのは存在しないか確認できていないのも確かだな。」


そもそもこの世界には牛がいて豚がいないのですよね。

あぁ…急に豚の生姜焼きを食べたくなってきましたが、香辛料は再現できても豚がいないんじゃどうしようもないと諦めることにしました。


そんな誘惑を考えないようにしながらちょっと占術を試したくなったので、先ほど使っていた枝を地面にまっすぐ置いて手を離してみました。

人が行き交う場所で投げれないですからね。

結果、倒れは方向はギルドを指していました。


「…なるほど。」


確かにギルドに登録した方が今後活動しやすいんですよね。

でも私には一つだけ懸念点がありました。


「フィニー、過去のギルドカード持ってます?」

「今はそうだな…。次元収納でしまい込んでるが。」

「それ使ったのなん年前ですか?」

「んー…夏がいなくなった後20年くらいはライルと共にギルドで活動していたな。」


四人の英雄の一人、人間のライル君。

桁違いの魔力と数多の魔導本を保有しており、私達と共に冒険していたのですが…なんかやたら年上のお姉様たちに人気ありました。

美少年だったせいでしょうか。

ちなみに私達より年上でしたね。


今はそんなことどうでも良いですね。


「80年も使ってないんですか…。」


頭抱えながらどうするかつい思考を回してしまいました。

しかし、神狼のギルドカードなんて骨董品だったら高く売れそうですね。


「ちなみに君のギルドカードもあるぞ。」


うわー、骨董品が増えちゃったー。


「…もうツッコミはしないですからね。」


私は成長することにしたんです。

これくらいのことでもう狼狽えたりしない!

しないったらしない!


「あと発掘現場からフェイルの奴の匂いがするんだが…。なんであいつがここにいるんだ?」「なんでエロフがいるの!」


おっと、叫んじゃって人々の視線が痛いです…。


「ひ…ひとまずギルドの受付場に行きますね。」

「うむ、そうしよう。」


視線から逃げるように私達はギルドの建物に入りました。

内部はかなり広く内装も綺麗で整えられており、床は赤い絨毯で整えられていました。

それだけ邪神封印の場所は宝の宝庫なのでしょうね。

色々考えながら受付場の前に行くとキャビンアテンダントのような衣装が赤黒く染まっており、長耳で金髪の綺麗なエルフのお姉さんが挨拶をしてきました。


「いらっしゃいませ。総合ギルドにようこそ。」


前はギルドは基本的に職業ごとで分かれていたのですが100年の年月はすごいですね。総合ギルドというのができていました。

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