第6話 出会って…失禁して…もうだめでぇ…。
もうすぐ草原に出そうなので状況整理すると、今私の職業は占術士だけで光と闇の初期魔法しか使えない状態です。
詠唱を覚えてても使えないんですよね。基本的に魔力回路を鍛えれば使えるようになるのですが、今は安全とは程遠いので止まれないんですけどね。
「う~ん。いつか戦闘になりそうなので攻撃魔法くらい使えるようにしときたいのですが…。」
あの子が神狼でなければ大樹で特訓もできたんですが、考えても仕方ないですね警戒していきましょう。
そんな気持ちで歩いているとふと風向きが変わった気がしたのでもうすぐそこが草原なのでしょう。
それにしてもさっきから違和感があるんですよね。
「聖獣から離れても魔物が襲ってこないのはなんででしょう…。」
聖なる大樹がある周辺でも弱い魔物は出るはずなのですが、全く遭遇しない状態で光が見えてきました。
「うわー。すごい。」
草木をかき分け月に照らされた見渡す限りの草原を見て私は感動してしまいました。
魔族領は大半は荒れ果てた大地で草木が生えず岩肌ばかり見えており、凶暴な魔物がうろついている世界でした。
今見ているのは100年後の世界で岩肌に沿って植物が生え渡り、月の光の反射で花は光輝いてアーチ状に連なる岩にもこけが付着しているのを遠目で確認できました。
「それにしても魔族だと夜もはっきり見えるって本当だったんですね。」
確かに夜の探索は楽しく感じると魔族の方が言っていたのを理解できる気がします。
「でもやっぱりおかしいですね。」
確かここ周辺は大型の魔物も多いはずなのですが注意を見回してもその姿をとらえることが出来ませんでした。
「うーん、何かから逃げているのでしょうか…。」
好都合ですしそこら辺のキノコとか採取していきましょう。
と考えながら進んでいくとふと空気が重くなってきたような気がしてきました。
全ての感覚が警報音を鳴らすような感じでー…、まるで蛇に睨まれたカエルのような感覚ですね。
「じゃなーい!」
多分私に気づいてますよね。
どうしましょ!どうしましょ!
えーっと対策の道具は?ない。
武器は?置いてきたー!
杖借りとけばよかったのでしょうか。
あまりの空気の重さに大量の冷汗かきながら慎重に歩を進めていくとふと真っ白な毛のようなものにぶつかった感触がありました。
「あ、…ふわふわ…」
気持ちいい…、まるで高級布団のような柔らかさですね。
じゃなくて!これはなんでしょう。
と上を確認すると…
「ひぃん…」
大きい狼さんがこっちをがん見してました。
この感じ化け物ですね。そして私は小物です。
あぁ、やはりここで死ぬのでしょうか…あぁ下から黄色いものが漏れてますね。
恐怖のあまり漏らしてしまったようです。
ごめんね。美奈、先天国へ行ってます。
そんな感情が通り過ぎ、その場で硬直したままでいると急に声が聞こえてきました。
「ん?おい。」
気絶しそうになったところを起こされてしまいました。
あぁ、ひと思いに嚙み殺してほしいのですが。
「あぁ、すまない懐かしい匂いがしたもので、集中力を高めてたもので怖がらせてしまったな。」
「ふぇ!…いえ、だ…大丈夫です。」
我に返って声を聞くと。何だろうもの覇気がある声だけどすごく聞き覚えがある気がします。
「ふむ…。気のせいだろうか、大切な人の匂いがこの近くからするのだが場所が違ったのだろうか。」
「え…え~っと…あなたは…」
少し警戒心を解いてくれたのか先ほどより落ち着けるようになったので質問をしてみることにした。
「む、すまない。我は神狼と普段そういう呼ばれ方をしているな。」
神狼…はて…どこかでそんな言葉を聞いたような気がします。
そう恐怖のあまり吹っ飛んでしまってそれでー、そうそうこの方が神狼と…。
この時全身の体温が上がる感覚を初めて体験しました。
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