第5話 狼について…ひぇ…

さてどうしたものでしょう。

神狼になったと聞いて急激に会うことが不安になってきた私がいます。


「どうしたんじゃ。悩んだような可愛らしい格好をして…」

「あぁ、いえ急にあの子に会うのが怖くなってきました。」


簡単にいえば私の行動一つで街一つ滅ぼしかねないのです。

あぁ…絶対どこにいても魂の匂いでバレると思うしもうすでにバレてると思いますし…、どうしましょう。神様事前にそういうこと教えてくださいよー…。

あの子が生きてるのは心臓張り裂けそうなくらい嬉しいのですが。


「なんというかその…迂闊な行動できなくなりました;」

「あ〜…うむ、うまくはいえぬが…がんばれ♪」

「むぅ、人ごとだと思って。今日のこと言っちゃいますよ。」

「そそそ…それは勘弁願いたい!」


その時は覚悟を決めましょ。うん。


「ひとまず今後はナツメという名前で行動すると思います。改めてよろしくお願いします。」

「ほっほっほ、こちらこそよろしく頼む。ところであの杖はどうするのかの?」


視線の先には私の杖があったがそれをどうするか私の中でもう答えは決まっていました。


「手入れだけして置いていくつもりです。この場所が好きになりましたので。」

「そうかそうか。それはありがたい。」


椅子から立ち上がり杖に近づいて触れてた瞬間から待った杖がほどけていくのがわかりました。

きっと私のやろうとしていることがわかるのでしょう。

杖を手に持ち近くにある泉へ杖を浸しました。


「今まで頑張ってくれたんですね。できればこれからもよろしくお願いします。」


転生したてで前回より力は随分減っているものの、あるだけの少しの力を杖に込めて丁寧に手入れを行っていると、杖は光り輝き小さな光の玉が踊り始めました。


「おぉー、やはり相棒に会えて嬉しいのじゃろうの。」

「この杖の手入れはいつも丁寧にやっていましたから。」


輝きが止まると杖を泉から引き上げハンカチで拭き取った後もとの場所に置くと、すると大樹のツルが再び巻き付き始め再び同じ状態に戻りました。

その様子を見終わると頷いて離れ、今後の予定を考え始めました。


「私は西へ抜けようと思います。」

「もう行くのか?夜が明けてからでもよかろう。」

「動物たちが気が付いたということは遠目から何か見えたということでしょうし、それに…多分あの子が夜明けまでには来ますから。」


神狼になったということは嗅覚・走力共にけた違いでしょうし、どこにいようとすぐに来そうですからね。

森の動物たちが怯えてしまいます。


「わかった、気を付けて行くのじゃぞ。ダークエルフ達にも会わせたかったんじゃがの。」

「ありがとうございます。機会があればまた来ますね。」


そう言って私は月を目印に、西へ草をかき分けて進むことにしました。

道中私を守ってくれるかのように同じペースで動物たちが歩を合わせてくれるのですが…。


「童謡の『●のくまさん』思い出しますね;」


理由はすぐ真横に巨大な白いビックベアがのしのし歩いてるからです。

おそらく聖獣なのでしょうがあまりに大きいので襲われないか心配なんですよね。

主に私がですが。


「え…えっと…、疲れてないですか?」


そう質問するとそのビックベアはコクコクとで頷きました。

うーん、大きいのだけど反応が可愛い熊さんですね。現実逃避をしておきましょう。


歩いて30分でしょうか。

道中木の実などを取りながら進んでいくと木々が減っていくのに気が付いたので、もうすぐ平原に出れそうなところで振り返るとビックベアが足を止めていました。

きっとこの森の主なためこの森から出られないのでしょう。


「ここまでありがとうございました。これ、みんなで分けて食べてくださいね。」


今まで両手で拾ってきた木の実の半分くらいを渡すと、ビックベアは嬉しそうに頷くと森の中に戻っていきました。

さて…本当の冒険の始まりですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る