第3話 ある日、平原で狼に出会って…失禁しました。
さてどうしたものでしょう。
神狼になったと聞いて急激に会うことが不安になってきた私がいます。
「どうしたんじゃ。悩んだような可愛らしい格好をして…」
「あぁ、いえ急にあの子に会うのが怖くなってきました。」
簡単にいえば私の行動一つで街一つ滅ぼしかねないのです。
あぁ…絶対どこにいても魂の匂いでバレると思うしもうすでにバレてると思いますし…、どうしましょう。神様事前にそういうこと教えてくださいよー…。
あの子が生きてるのは心臓張り裂けそうなくらい嬉しいのですが。
「なんというかその…迂闊な行動できなくなりました;」
「あ〜…うむ、うまくはいえぬが…がんばれ♪」
「むぅ、人ごとだと思って。今日のこと言っちゃいますよ。」
「そそそ…それは勘弁願いたい!」
その時は覚悟を決めましょ。うん。
「ひとまず今後はナツメという名前で行動すると思います。改めてよろしくお願いします。」
「ほっほっほ、こちらこそよろしく頼む。ところであの杖はどうするのかの?」
視線の先には私の杖があったがそれをどうするか私の中でもう答えは決まっていました。
「手入れだけして置いていくつもりです。この場所が好きになりましたので。」
「そうかそうか。それはありがたい。」
椅子から立ち上がり杖に近づいて触れてた瞬間から待った杖がほどけていくのがわかりました。
きっと私のやろうとしていることがわかるのでしょう。
杖を手に持ち近くにある泉へ杖を浸しました。
「今まで頑張ってくれたんですね。できればこれからもよろしくお願いします。」
転生したてで前回より力は随分減っているものの、あるだけの少しの力を杖に込めて丁寧に手入れを行っていると、杖は光り輝き小さな光の玉が踊り始めました。
「おぉー、やはり相棒に会えて嬉しいのじゃろうの。」
「この杖の手入れはいつも丁寧にやっていましたから。」
輝きが止まると杖を泉から引き上げハンカチで拭き取った後もとの場所に置くと、すると大樹のツルが再び巻き付き始め再び同じ状態に戻りました。
その様子を見終わると頷いて離れ、今後の予定を考え始めました。
「私は西へ抜けようと思います。」
「もう行くのか?夜が明けてからでもよかろう。」
「動物たちが気が付いたということは遠目から何か見えたということでしょうし、それに…多分あの子が夜明けまでには来ますから。」
神狼になったということは嗅覚・走力共にけた違いでしょうし、どこにいようとすぐに来そうですからね。
森の動物たちが怯えてしまいます。
「わかった、気を付けて行くのじゃぞ。ダークエルフ達にも会わせたかったんじゃがの。」
「ありがとうございます。機会があればまた来ますね。」
そう言って私は月を目印に、西へ草をかき分けて進むことにしました。
道中私を守ってくれるかのように同じペースで動物たちが歩を合わせてくれるのですが…。
「童謡の『●のくまさん』思い出しますね;」
理由はすぐ真横に巨大な白いビックベアがのしのし歩いてるからです。
おそらく聖獣なのでしょうがあまりに大きいので襲われないか心配なんですよね。
主に私がですが。
「え…えっと…、疲れてないですか?」
そう質問するとそのビックベアはコクコクとで頷きました。
うーん、大きいのだけど反応が可愛い熊さんですね。現実逃避をしておきましょう。
歩いて30分でしょうか。
道中木の実などを取りながら進んでいくと木々が減っていくのに気が付いたので、もうすぐ平原に出れそうなところで振り返るとビックベアが足を止めていました。
きっとこの森の主なためこの森から出られないのでしょう。
「ここまでありがとうございました。これ、みんなで分けて食べてくださいね。」
今まで両手で拾ってきた木の実の半分くらいを渡すと、ビックベアは嬉しそうに頷くと森の中に戻っていきました。
さて…本当の冒険の始まりですね。
◇◇◇
もうすぐ草原に出そうなので状況整理すると、今私の職業は占術士だけで光と闇の初期魔法しか使えない状態です。
詠唱を覚えてても使えないんですよね。基本的に魔力回路を鍛えれば使えるようになるのですが、今は安全とは程遠いので止まれないんですけどね。
「う~ん。いつか戦闘になりそうなので攻撃魔法くらい使えるようにしときたいのですが…。」
あの子が神狼でなければ大樹で特訓もできたんですが、考えても仕方ないですね警戒していきましょう。
そんな気持ちで歩いているとふと風向きが変わった気がしたのでもうすぐそこが草原なのでしょう。
それにしてもさっきから違和感があるんですよね。
「聖獣から離れても魔物が襲ってこないのはなんででしょう…。」
聖なる大樹がある周辺でも弱い魔物は出るはずなのですが、全く遭遇しない状態で光が見えてきました。
「うわー。すごい。」
草木をかき分け月に照らされた見渡す限りの草原を見て私は感動してしまいました。
魔族領は大半は荒れ果てた大地で草木が生えず岩肌ばかり見えており、凶暴な魔物がうろついている世界でした。
今見ているのは100年後の世界で岩肌に沿って植物が生え渡り、月の光の反射で花は光輝いてアーチ状に連なる岩にもこけが付着しているのを遠目で確認できました。
「それにしても魔族だと夜もはっきり見えるって本当だったんですね。」
確かに夜の探索は楽しく感じると魔族の方が言っていたのを理解できる気がします。
「でもやっぱりおかしいですね。」
確かここ周辺は大型の魔物も多いはずなのですが注意を見回してもその姿をとらえることが出来ませんでした。
「うーん、何かから逃げているのでしょうか…。」
好都合ですしそこら辺のキノコとか採取していきましょう。
と考えながら進んでいくとふと空気が重くなってきたような気がしてきました。
全ての感覚が警報音を鳴らすような感じでー…、まるで蛇に睨まれたカエルのような感覚ですね。
「じゃなーい!」
多分私に気づいてますよね。
どうしましょ!どうしましょ!
えーっと対策の道具は?ない。
武器は?置いてきたー!
杖借りとけばよかったのでしょうか。
あまりの空気の重さに大量の冷汗かきながら慎重に歩を進めていくとふと真っ白な毛のようなものにぶつかった感触がありました。
「あ、…ふわふわ…」
気持ちいい…、まるで高級布団のような柔らかさですね。
じゃなくて!これはなんでしょう。
と上を確認すると…
「ひぃん…」
大きい狼さんがこっちをがん見してました。
この感じ化け物ですね。そして私は小物です。
あぁ、やはりここで死ぬのでしょうか…あぁ下から黄色いものが漏れてますね。
恐怖のあまり漏らしてしまったようです。
ごめんね。美奈、先天国へ行ってます。
そんな感情が通り過ぎ、その場で硬直したままでいると急に声が聞こえてきました。
「ん?おい。」
気絶しそうになったところを起こされてしまいました。
あぁ、ひと思いに嚙み殺してほしいのですが。
「あぁ、すまない懐かしい匂いがしたもので、集中力を高めてたもので怖がらせてしまったな。」
「ふぇ!…いえ、だ…大丈夫です。」
我に返って声を聞くと。何だろうもの覇気がある声だけどすごく聞き覚えがある気がします。
「ふむ…。気のせいだろうか、大切な人の匂いがこの近くからするのだが場所が違ったのだろうか。」
「え…え~っと…あなたは…」
少し警戒心を解いてくれたのか先ほどより落ち着けるようになったので質問をしてみることにした。
「む、すまない。我は神狼と普段そういう呼ばれ方をしているな。」
神狼…はて…どこかでそんな言葉を聞いたような気がします。
そう恐怖のあまり吹っ飛んでしまってそれでー、そうそうこの方が神狼と…。
この時全身の体温が上がる感覚を初めて体験しました。
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