第2話 異世界は空気美味しい!
神様からの細かい注意事項を聞いた後、私達は降り立つ場所について確認をしていました。
『本当にそれで良いのお二人とも。』
「ずっと一緒というわけにもいかず、やりたいこともありますし…」
「あと魔族と人族それぞれで活動しようと思ってて…互いに知覚したから遠距離念話魔法は使えるんだよね?」
前回の旅でそういう魔法を知っていたため確認をしてみると、神様は答えてくれましたが…。
『そうですね。確かにこの場所で知覚したので可能ですけど…。』
「何か問題あるのですか?」
『いえ、問題というのはないんですが、離れすぎると使えないのです。』
初耳ですね…。そういえば二人で旅している時は一緒に行動していたため距離を気にしていませんでしたが、まぁなんとかなるという思いで行きましょう。
「そこも実験してみるのも面白いかもね。」
「そうですね。」
『ふふふ…、二人とも相変わらず前向きだわ。』
それに生前も一年連絡取らないこともありましたしね。
『さて、名残惜しいですがそろそろお別れしないといけません。』
「ありがとう。神様」
「ありがとうございます。神様」
『いいのよ〜。良き旅に楽しい暮らしをしてくださいね。』
そして、神様が消えたのち私達は何もない真っ白な世界を後にしました。
◇◇◇
目の前が暗くなった後、数分後でしょうか明るい月に照らされる中私は目覚めました。
とりあえず目を覚ましたので一呼吸を…。
「ああ!空気が美味しい!」
おっと真夜中でしたね。
睡眠中の動物達が目を覚ましてしまいますから静かにしないといけません。
ひとまず軽めに装備や身だしなみを整えた後、場所を確認しました。
「さてここでは大陸の北北東の魔族領だと思うのですが。」
美菜は南南西の人族領に降りる予定なので時差はないと思うのですが…森の中だと思うのでちょっと心配です。
「少しこの空気を堪能しながら散策しましょう。」
急ぐ用事もないですしゆっくり散策していると、歩調を合わせるように動物達が集まり始めました。
「起こさないようにしてたのですが…なんでしょう。」
どんどん集まる動物達の中には魔物の大型種もいたのですが、襲ってくる気配はなくまるでどこかに導こうとしていました。その行動が気になり昔のことを思い出してみることに…。
「あの大陸の北北東ですから〜…あぁ、呪われた大樹付近ですね…え?」
改めて周囲を見回すと100年前とは大違いの光景に私は目を点にしていました。
なぜなら本来この場所には草は生えず、空気も一呼吸すれば生臭い血の匂いが立ち込め枯れた木だけが乱立していた場所だったからです。
「…いやぁー…100年も経てばここまで変わるのですね。」
でも前回とある錬金術師様がいうには500年かかると言ってませんでしたっけ?
邪神を殴って滅ぼしたせい?あぁそうか確かここから北西に邪神封印の場所あったからそれが丸ごとなくなったんですね。あっはっは…
そんなことを考えながら草木をかき分けていくと、大樹の目前にまでたどり着いたみたいで周囲には大小様々な動物が囲んでいました。
「わぁ〜…」
私は目の前に広がる光景に思わず感涙の声を上げてしまいました。
大樹を中心に小さな綺麗な水色の泉が広がっており大樹の木の根元付近には大きな杖のようなものが突き立っており、時折泉から光が湧き上がり神秘的な光景を生み出していました。
そんな風景の中で小鳥達やリスが遊んでいるのを見て眼福と思いながら目で楽しんでいると自分の顔が気になったので覗き込んでみることにしたのですが。
「あれ?見慣れない顔が見える。」
泉を覗き込むとふと羊のツノが生えた桃色髪の美少女が写っていたのです。
試しに右手をあげると同じ動作をしたため、びっくりして私の顔だということに数秒間気づかないでいました。
「あ!これ私!?もうちょっとかわいげなくてよかったのに…」
綺麗すぎると面倒だな思いつつひとまず神様に感謝しとくことにしました。
それでも可愛いのは嬉しいですしね。
その時なぜか神様が親指立ててる光景が思い浮かびました
◇◇◇
私は呪われてた大樹の周辺を観察していると、大きな杖のようなものは間違いなく私が使っていた杖だというのがわかりました。
一年間愛用していた杖ですが最後は拳になって使わなかったけど、今でも常に持って一緒に旅した日を思い出せるくらい相棒に近い杖でした。
「でもこれ持って行っちゃうのは違うよねぇ…。」
今でも周囲を癒してくれているなら手入れだけでもしてあげようと杖に手を伸ばした瞬間でした。
「その杖に手を出す奴は何者かあああああああ!あ、べっぴんさん。」
ドッパーーーン
大樹の上から叫びながら泉の方に何か落ちました。
「だ…大丈夫ですか?」
私は落ちた場所に近づくとびしょびしょになりながら手足が見えないほどの白毛に覆われたの老人が這い出てきました。
「大丈夫じゃ…大丈夫…じゃなーい!お主は何者じゃ!べ…べっぴんさん。」
「あの落ち着いてください。」
「落ち着けるか、あの聖杖は儂が守っておる!いくらお主が綺麗だからと渡さぬぞ!ぜ…絶対に…絶対に渡さぬぞ!あ、綺麗…。」
私はちょっと危うくないでしょうかと思いつつひとまず挨拶することにしました。
「とりあえず落ち着いてください。私はー…ナツメです。昔は夏と呼ばれていました。」
ひとまずここにくる前の名前と前に呼ばれていた名前を話してみたのですが果たして反応は…。
「ナツメで昔の名前は夏か…ん?夏…夏のう…。」
あれ…そういえばこの方の声どこかで聞いたことあるような…。
そういえばここ呪われた大樹でしたよね。ここで会ったのは確かー…。
「あー!まさかあなたは!」
「もしやお主は!」
悪寒を感じたのでひとまず先手必勝することに。
「この変態め!聖拳『シャインドライバー!』」に見せかけたただの拳である。使えないですからね。
「バカなー!…と思っていたのか効かーん!」
「と見せかけた光魔術『ライトー!』」
私の拳が光り輝いて聖なる力が周囲を包み込んだ。
「バカなー!しかし、効かーん!聖霊になったからな!」
「く、変態も聖霊になれるのですね。」
「今度はわしの番じゃなくらえー!」
ボン!ドッパーン!
変態が掴みかかってきたところ巨体の白いビックベアが変態を殴って泉にぶっ飛ばしました。あ、すごく優しい目で見てくれた。そういえば今の私の見た目十数歳くらいだったよね。
その後自分の仕事が終わったかのように定位置に戻っていたあと、再びびしょびしょになった変態が泉から這い出てきました。
「く…邪魔が入らなければ触れたのに…。」
「やめてください。相変わらずエッチなんですから…。」
「変態だからな!」
「認めないでくださいよもう…。」
なんだかんだやりとりを終えた後、私は老人が準備してくれた席に座り真面目な会話を始めました。
「まさか再びお主に会えるとはの〜、通りで動物達がざわめくはずじゃ。杖に込められた魂は忘れぬということかの。ほっほっほ」
「ありったけの力を込めてここに置きましたからね。まさかこんなことになってるなんて…。」
周囲を改めて見回すと大地は生い茂りたくさんの木々は揺れ動いていますし、妖精達もこの場所を気に入ってるということなのでしょう。
「わしが森の主に吹っ飛ばされたということはここでの立場はお主が上じゃろうて…悔しいのぅ。べっぴんさんがすぐそこにおるのに。」
「あの人にバレたら食い殺されますよ。今の私じゃ止められないですし…」
「む、あのお主にぴったりくっついていた狼かの?おぉ…怖いのう。」
そんな会話をしていると私はその狼のことがふと気になったので聞いてみることにしました。
「そういえばあの子はどうしてますか?」
私は軽い気持ちで聞いた時ちょっと後悔することになったのです。
「ん?今は神狼になって駆け回っとるよ。」
うわぁお、これは大変なことになりましたね。
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