第23話『計画を邪魔する者 5』

 立花を家に招待した土曜日が終わり、日曜日が何事も無く駆け抜け月曜日。

 いつもよりも少し早く家を出て、お馴染みの公園へ向かう。通学路とは少し離れるがそれほど影響は出ない場所だけど、時間ギリギリに着くのは避けたかった。理由は単純に待たせたくなかったから。


「おっ、早いね」

 

 それは立花も同じだったようで、オレが着くと既に彼女はブランコに座っていた。


「ナンパとかされなかったか?」

「不安なら明日から私の家集合でもいいよ」

「それでもいいけど不慮の事故で彩華さやかのお母さんに会う事になるかもな。もしかしたらお父さんにも」

「その場合、困るのはとおるも同じだね」

「明日からも集合場所はこの公園で」


 オレが手を差し出すと立花────彩華がその手を掴み、立ち上がった。

 

「さすがに手馴れてるね」

「そんな事ないさ、女の子の手を握るのは緊張する」

「本当だ、ちょっと手汗かいてる」


 慌てて手を放そうとするとぎゅっと彩華の手に力が込められた。

 放す気は無いらしい。


「そ、そういう彩華はどうなんだ?」

「外で手を握るのは慣れないけど、まあ、緊張感はそんなにないかな。それなら土曜の方が緊張したし、恥ずかしかったから」

「確かに、そうかもしれないな」

「それに、そういうのよりも幸福感の方が強いから」

「……そう言われるのは照れるな」


 頬が熱くなるのを感じた。

 この前まで彩華の言動でこんな気持ちになる事は無かったのに────自覚したからこんな気持ちが生まれた、きっとそうなんだろう。


「さっ、行こ。手は流石に放しておこうか、先生に注意されるのも面倒だし」

「名残惜しいな」

「一緒に帰るでしょ、なんなら寄り道でもする?1時間くらいなら私の家、誰も帰って来ないし」

「それは魅力的な話だな」


 それが放課後のイベントとしてあるのなら、今日1日頑張れるだろう。女子の家に、しかも他に誰も居ない家に招待されると変に期待してしまうけど、そうじゃなくても彩華といれる時間が約束されているのは嬉しい。


「それと、久しぶりにお弁当作ってあげたから楽しみにしてて」

「涙が出るくらいに嬉しいよ」

「ふふっ、感謝して食べるがよいぞ。そして今度は徹が私の為に弁当を作ってくるがよい」

「へいへい、期待せずに待っててくだせい」

「うん!楽しみに待ってる!」


 そんな会話をしながら登校し、教室に入ってからも会話は止まらない。今日の授業の事や、最近見たアニメ読んだ漫画、ライトノベル、そんな他愛もない話を続けている。

 今までと特に何も変わらない会話だけど、本人は気付いていないが彩華の表情が柔らかくなっている事をオレと、オレの隣の席の女子生徒はすぐに気付いた。

 その証拠に以前と同じメンバーを集めてこちらをチラチラと窺いながら話を始めた。

 それを気にすることなく担任がホームルームを開始するまで話を続けた。そして、午前の授業が終わり、楽しい昼休みが終わり、眠気が襲ってくる午後の授業を終えて放課後。

 彩華の下駄箱に入っていた手紙を読み、時が訪れた事を知った。 

 



 

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