第22話『計画を邪魔する者 4』

 何も特別なイベントは無く土曜日になり、前回と同じ公園で立花が来るのを待っている。

 ちなみに今週は当然だが咲ちゃんからの誘いは無かった。予想通り1度行けば満足する、そんな話だった。


「こんな所で何してんの?」


 集合の15分前、前回と同じくらいの時間に立花が来たのかと思ったが違って、そこに立っていたのは三鈴の友達代表の知恵だった。


「見ての通りだ、何もしてない」

「……誰か待ってるの?」


 先日、知恵がオレにメッセージを送って来た事を思い出す。オレが返信をしなかったから見ても居ないと思ったのかその話題には触れないが、この質問は訳せば「立花さんを待ってるの?」だろうな。

 

「なんでそう思った?」

「あんたがこんな誰も居ない公園でブランコに座ってるだけなんて無いでしょ。可能性として高いのが誰かを待ってる、それだけの推理でも何でもない事よ」

「そうだな。じゃあ、そういう事だから」


 そう言ってオレはブランコを降り、公園を出て行こうとする。そんなオレの腕を知恵が掴んだ。


「まだ何か用か?」

「……この前は殴りかかってごめん。あの後話を聞いたらあんたの話を三鈴が認めたから、私が間違ってた」

「そうか、分かってくれたならそれでいいよ」


 あの後特に嫌がらせも接触も無かったからそんな気はしていたし、もうどうでも良かったことだから。


「三鈴の話を聞いて、だけど逆にもっと不思議になった。私はあんたの態度を見て、あんたが一方的に三鈴に飽きて捨てたそう思ってたから」


 無理やり振りほどいて逃げる事も出来たかもしれないが、今後また接触されても面倒なので大人しく話を聞くことにする。


「……三鈴の事に浮気されたって言うのが別れる理由ならさ、悲しんだり、悔しがったり、恨んだり、怒ったり、未練があったり、そういう感情が少しでもあるのが普通だと思うの」

「何が言いたいんだ?」

「あんたを見てるとそういう感情がまったく見えなくて……ねえ、あんたは本当に三鈴が好きだった?三鈴に浮気されて悲しかった?」

 

 思わず溜息が漏れる。


「当たり前の事だけど、オレは三鈴が好きだったし、だから浮気現場を見た時は傷ついたさ。泣きもした。ただ、自分を裏切った相手に感情を割くのが無駄だと思ったから止めた、それだけだ」


 具体的には2度目の正式な別れを屋上で告げた後から、三鈴に対して何も思わないようにした。思わないようになったが正しいか。

 

「……まあ、そうだよね、それだけの事をしたのは三鈴だもんね。じゃあ、咲ちゃんの事は?前話した時事情を知ってたからあんたが話したんでしょ?」

「ああ」

「咲ちゃんは三鈴のした事とは無関係なんだから、嫌いになったり距離を置いたりしないんだよね?」

「オレがそうする理由はないけど、咲ちゃんの方がオレと少し距離を置いている感じだけどな。嫌でも三鈴の事を思い出させるから気を遣ってくれているのかもしれない」

「それ、嫌味?」

「そう思ったんなら解放してくれ」


 渋々、知恵の手の力が緩み、オレの腕を放した。


「私がこんな事お願いするのはおかしいかもしれないけどさ、咲ちゃんの事よろしくね」

「何でオレに」

「私は、あんな事をしても三鈴の友達で居続けるからさ、咲ちゃんにとっては信用できないでしょ」

「そうかもな」

「だから頼れる人はあんたしかいないから。困ってたら助けてあげて」

「気が付いたらな」


 それだけ言い残してオレは公園を出た。するとすぐ誰かに腕を引かれ、脇道に寄せられる。


「聞いてたのか」

「うん、おかげで確信に近かった私の推測がより確信に近づいたよ」


 立花は自信ありげな表情を浮かべながら、そう言った。

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