第19話『計画を邪魔する者 1』
私は
未練。
なら、どうして、浮気相手を優先したのか。
葛西くんが言うには、津山さんとの都合が突然合わなくなり、別れる前の2、3週間程度、彼女と休日にデートする事が出来なかったらしい。それまでは2週に1日、多くて週に1日の月もあった頻度でデートをしていたのに、突然。
浮気をしていなければそういう事もあるで済むのだが津山さんは浮気をしていて、なのに、浮気相手を優先していたのに葛西くんに未練がある。
考えすぎ、そう言われればそれまでだけど、でも土曜日、私は見た。
私の家を見上げ、表札を確認する────津山さんの姿を。
「葛西くん、この後用事ある?」
放課後を迎え、各々が目的の為に教室を後にする中で、私は葛西くんに声を掛けた。
「無いけど、どうした?」
「ううん、私も用事が無いから。だから一緒に帰らない?」
一緒に帰る────その姿を見せつけ、津山さんの反応を確認する為に。
そして、葛西くんの意識を私に向ける為に。
「同じ方向だし断る理由は無いな」
「素直に『オレも一緒に帰りたいと思ってたんだ』って言えばいいのに」
「立花の中で、オレって立花の事大好き設定なのか?」
「違うの?」
「違う」
「えぇ?!」
「わざとらしく海外の通販番組みたいに驚くなよ」
「そういうツンデレなとこ、嫌いじゃないよ」
「興味が無いとか無関心は、嫌いって言われるより傷つくからな」
私はそんなに酷い性格を持ち合わせてはいないのだけど、葛西くんの中での私の設定も大概間違ってる。
私は葛西くんと話ながら何度か廊下を確認した。津山さんの姿、水谷知恵の姿、そして津山さんの妹さんの姿は無かった。
ただの憶測、私と葛西くんが仲良さげな光景を見せても反応が無ければ、それは間違っていただけの事。私は、私の事に集中が出来る。
「さっ、いつまでもツンツンしてないで、帰ろ。遅くなるの嫌だし。あ、もしかして私とお話してたい?なら、今日も私の家に来る?」
「どうしてそうなった。大体、少ししたら母親が帰って来てるんだろ?困るのは立花の方じゃないか」
「それもそうか。まあ、誤解とか勘違いじゃ無くして、葛西くんっていう犠牲者を1人増やせば、私の負担は減るけどね」
「あん?」
「何でもないよ。仕方ない、葛西くんの希望を叶える為に、私は今週の土曜日もキミに時間をあげよう」
「随分と上からだな」
「私は招かれる側だからね」
教室を2人で出て、津山三鈴さんの教室の前を通り過ぎた際、背後から視線を感じて、ビデオ撮影モードにしていたスマホのレンズを後ろに向ける。
男女が歩いていれば、それも一ヶ月前に別れた葛西くんが女子と歩いていれば嫌でも注目を浴びる。
だけど、そもそも葛西くん自体目立つような人では無い為、それほど騒ぎにはならない。騒ぐのは精々クラスメイトたち。
帰宅するまでの間に私が目を付けている3人の内、誰が映り、なにをしているか……。
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