第20話『計画を邪魔する者 2』

 立花との下校は特に何のイベントも無く終わり、あれから数日が経った金曜日の夜。火曜日から今日までの間、立花との会話は月曜同様先週に比べ明らかに増え、昼休みもオレが購買や行きのコンビニで買って教室で共に過ごしていた。


「急接近っていう言い方は誤解を招くだろうけど、それくらい立花と過ごす時間が増えたな」


 元々は軽い挨拶と、軽い雑談程度。電話をしたり、メッセージを交わしたり、休み時間いっぱいに話をしたり、昼休みを一緒に過ごしたり……そんな事は今まで1度も無かった。


「三鈴の件で気を遣ってくれてるのなら有難いけど申し訳ないな。オレならもう大丈夫だし」


 だけどそれを言い出せないのはオレ自身、立花と過ごす時間を手放したく無いからに他ならない。もし、立花がオレと関わるのがただの励ましや慰めが目的なら、それが果たされたのなら離れてしまうのではないか。遊ぶ事も、電話をする事も、昼休みを一緒に過ごすことも無くなってしまうのではないか……そう考えて、言い出せなくなっている。

 友達として一緒にいたいと、そう思っているんだ。


「けど、このままだとクラスメイトは勘違いをするかも────いやもうしてるか」


 時折、こちらを見ながらひそひそと話をするクラスメイトが視界に入る。そこに悪意は感じられないが、心地の良いものでもない。特に女子である立花はその気持ちが強いはずだ。


「ん」


 考え事をしていると、スマホにメッセージが届いた。噂をすれば────そう思ったが、送り主は咲ちゃん。


「『明日、先週と同じでお願いしたいのですが』か……」


 後日話を聞けば、先週は友達と予定を作り回避したと聞いた。だから、その皺寄せ、埋め合わせが明日になったのだろう。

 ここは本来、先週の詫びも含め了承した方が良いのかもしれないが、オレは敢えて頼みを断る。


『明日遊べば、また次の週に流れるんじゃない?そこで同じことをすれば、次の週に。だったら親孝行と思って行っちゃった方が良いんじゃない?』


 それなら来週も同じように予定を作らなくて済む。オレの事を頼ってくれるのは嬉しいけど、ここは大人しく3人で出掛けるべきだ。

 

『そうですね。ありがとうございます。頑張ってみます』


「頑張る、か。オレはもう怒ってないんだし後は咲ちゃんの気持ちの問題だから許してやれ、なんて言えないけど、でも、このままだと辛いのは自分だろうな」


 人に対する怒りがそこまで持続している事に驚くが、まあ、三鈴がした事はそれだけ咲ちゃんにとって衝撃だったのだろうと納得する事は容易い。

 オレは土日をどう過ごすか、咲ちゃんたち同様家族の時間を作るか、それとも1人で過ごすか────そんな事を考えながら、立花からメッセージが届くことを期待していた。

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