第15話『立花と過ごす時間 4』

 立花と遊んだのが土曜日で日曜日を挟んだ今日は月曜日。結局あの日はゲームをしたり、立花が薦めてきたアニメを見たりしただけで解散となった。

 本当にただ友達と遊んだだけ、それだけの一日だった。

 だけ、じゃないか。立花が作ってくれた昼ご飯を頂いたから。

 

「おはよう、立花」


 自分の席にたどり着くと既に立花は前の席に座って読書をしていた。


「おはよう、葛西くん」

 

 昨日の事は2人だけの秘密──そう、決めていた。理由は単に変な噂を立てられたく無いから──特に1ヶ月前とは言え三鈴と別れたばかりのオレにそんな噂が立てばよく思わないやつもいる。

 それはこれからの学校生活を考えれば避けなければならない。

 なのに────。


「一昨日はありがとうね。楽しかったよ」

「……。……え、ああ」


 驚き、思考が止まった所為で返事が遅れた。

 小声でもなく、意識してなくても隣の席の人間には聞こえるくらいの声量で言うもんだから、やっぱり聞こえたのだろう。オレの隣の席の女子が席を立ち、友達の下へと駆け寄り話を始めた。

 こちらにチラチラと視線を送ってくるので、間違いなく話題の中心はオレたちだ。


「どういうことだ?」

「ん?ただの気まぐれだよ。安心しなよ。1カ月も経ってるんだし、誰も気にしないでしょ。それに、私たち付き合ってるわけじゃないんだから。堂々としてれば良いかなって」

「その気まぐれの所為で面倒な事になりそうなんだが……」

「その時はその時。なんなら、本当に付き合ってみる?噂は消えるよ?」

「それこそ別の噂が立ちそうだから嫌だ」


 立花と付き合う為に三鈴と別れた────そんな事を言われるのは目に見えてる。

 

「気にし過ぎだと思うけどね」


 だけど、と少し声を小さくして、囁くように話を続ける。


「噂を想定しなければ、私と付き合いたいって事?」


 頬が赤くなる、オレも、立花も。

 そんなオレたちを遠くから見守り、そして先程よりも身体の動きが増えた隣人含む女子グループ。目の前の甘い展開に身悶えているのだろう。


「揶揄うなよ」

「揶揄って無いよ、本気で聞いてるの」

「教室で、クラスメイトも殆ど登校を終えた騒がしい教室で本気の告白をするような人間じゃないだろ」

 

 思った反応が帰って来なくて飽きたのか、面白くなかったのかいつの間にか近づいていた顔を引き普段通りの表情に戻る立花。

 女子グループがキスでも待っていたのか、残念そうにしているのを横目に見ていると、教室に担任が入って来て、ホームルームが始まった。

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