第7話『仲間 2』
同日午後10時、自室でアニメを見ているとメッセージが届いた。パソコンで再生していたため一時停止し、内容を確認する。
「立花か」
今日連絡先を交換したばかりの立花からのメッセージ。内容は三鈴絡みだろうと思い開くと、少し予想外なものだった。
『無理矢理聞き出しちゃったみたいでごめんね』
それを見てまず思ったのは立花らしくない、だった。席が前後という事で話すことが多いが、こんなに塩らしく、わざわざ謝罪のメッセージを送ってくるようなイメージは無かったから、素直に驚いた。
『気にしなくていい。誰かに話したい気分ではあったから』
これは嘘だ。ただ最もらしい事を言って、気を遣わせない為の。
『その言い方で噂になってないって事は、話したくても話せない理由があるの?』
当然そういう返事が来る事は予想していた。だから、用意していた答えを返す。
『話せない理由はないけど、三鈴も女の子だから。様子を見るに、浮気相手とも別れたみたいだから傷心中だろうし、加えて周りから咎められれば精神的に追い込まれる』
だけど、という前置きでもう1文送る。
『向こうが嘘を言い回れば、オレは真実を広める』
『それで良いと思うよ。ただ、甘い気もするけどね』
別にオレは三鈴を許したわけじゃないが、だけど、復讐をするとか、痛い目に遭わせたいとか、そんな思いは無い。
関わらない、それで良いと思ってるだけ。
『まあ、好きな人に嫌悪感を向けられて過ごすだけでも辛いか』
『それなんだけど、三鈴がオレの事をまだ好きってのが、どうにも腑に落ちなくて。言って悲しくなるけど、あの男を優先してたんだから、オレの事なんてもう何も思って無いと思うんだけど』
『まあ私は津山さんじゃ無いからね。正確には分からないけど、葛西くんとすれ違う時、普通は視線を外すのに、向けてたから、未練があるって思っただけ』
今回の件、当事者である三鈴自身が自分に非がある事は分かっているはず。だからその意識を持っていればオレと不用意に視線を合わすような事はしないだろうし、出来ない。なら、立花の言う事も理解できる。
『私は葛西くんの味方って認識で居てもらって良いけど、今回の場合、そんな面倒な事にはならなそうだね。口止めも済んでるみたいだし。問題は妹さんだけだね』
『事情を知ってるだけに今回頼りにさせてもらったけど、もうこんなことが無いよう祈るだけだ』
姉の嘘を訂正し、真実である姉の罪を言わすのは心苦しい。だけど、一番の説得力を持ってしまうのも事実。それだけ、2人の仲の良さは知れ渡っている。
『1つだけ気になることがあるにはあるけどね』
『気になること?』
それは正直オレが目を背けていた事実。三鈴がどう思っているかは知らないが、確かに、もう1イベント起こさないと、完結には至らない。
溜息を1度吐いた後、オレはメッセージを送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます