第6話『仲間 1』
三鈴と別れ、2週間が経過した。
「なあ、お前、
別れたのか、と同じクラスの
野沢の質問に頷き、肯定する。
「どっちだよ」
「別れた」
「……あんなに仲良さそうだったのになんで────ってのは聞かない方が良いよな」
話したくないという雰囲気を出していると、それを察してか、元々そういう性格なのか、詳細は聞いてこず退いてくれた。
これで、オレと三鈴が別れたという認識はクラス全体、いや、学年全体が持つだろう。興味を持ち接触してくるやつもいるだろうが、その時は適当にあしらうつもりだ。
「話、聞こえちゃったんだけど、やっぱり別れたんだ」
前の席、帰り支度を終え立ち上がろうとしていたが、野沢の話に興味を持ち、座り直した
「言い方的に偶々って風に聞こえるけど、がっつり興味持って聞いてただろ」
「さあ、なんのことだか。もう、そんな嫌な顔しないでよ。大好きな彼女と別れた哀れな男の子に、その理由を聞くなんて野暮な事私しないわよ。野沢以下になりたくないしね」
「酷い言いようだな。野沢、そんなに悪いやつじゃないだろ」
現にさっきも、興味というより心配の方に重点を置いて話し掛けてくれたように見えたし、特別仲が良いわけじゃないオレにもそんな気遣いをしてくれるんだから、優しい人間だ。
「いつもコソコソ女子の格付けしてるやつは悪いやつって事で相違はないと思うけど?」
「ああ、それは悪いやつだ」
あいつそんな事を高校生にもなってしてるのか────いや、高校生の方がそういう話題で盛り上がるのか。
「あいつと同じ感想を抱いている事は不快だけど、でも、私の目から見ても2人は仲良さそうに見えたんだけどね」
「仲が良いから別れないって事も無いだろ」
「いや、まあ、それはそうなんだけどね。だから気になるんだよ」
「なにが」
「津山さんは落ち込んでるみたいだけど、
立花が鋭い視線を向けてくる。
言っている事は理解できるし、持つ疑問としては正しいと思う。しかし、それは自分で見たものを、自分で見たものが正しいと判断しているからに過ぎない。
「単に、葛西くんが別れ話をしたってだけ?」
「そうだな」
「ふぅん、そうは見えないけどなぁ」
「どう見えるんだ?」
「さあ。分かるのは、葛西くんが些細な事で別れ話を切り出す人じゃないって事だけ。だから、それなりの理由があるって、そう思うだけ。ただ別れるのとは違う、なにかがあるんじゃない?」
「なにか……」
「浮気でもされた?」
ふざけている訳では無いし、かまをかけている訳でも無い。どこか、確信をもった目を向けられ、思わず言葉が出ずに詰まってしまう。
そしてその一瞬で、立花は確信を持ったようだ。
「やっぱり」
「まだ何も言ってないだろ」
「葛西くんの全てがそう物語ってるの。というか、現状見たら、それ以外考えられないし」
現状だけ見てその結論に至るのは凄い事だと思うが、立花は何でもないかのような、そんな態度しか表にしない。
「……ダメだな、この状況を覆す上手い言い訳は、オレには見つけられない」
「じゃあ……」
「ああ、それで合ってるよ」
教室内にはもう誰も居ない。この事実を知る唯一のクラスメイトに、立花はなった。仕方なく、あの日の詳細を語ることにした。
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