007 スキルモジュールって何?

 三十秒ほど待つと、初期化が終わったのか、天使の輪っかのようなアイコンが一瞬だけ表示されて、ゲームでよく見るステータス画面が表示された。

 ステータスウィンドウの左領域には、現在のクロスの3D全身像が表示され、右領域には、RPGで見慣れた筋力(STG)、スタミナ(STM)、かしこさ(INT)などがリスト表示されている。

 ただし、よくある体力(HP)とMP(魔力)などの数値は表示されていない。

 クロスの肉体をスキャンした、評価値というかんじだ。


 クロスは現世でやったことのあるゲームや、スマートフォンの二大OSのユーザーインターフェース(画面をどのように区切って活用するかのデザイン)を思い出して、目の前、体感40センチほど離れたウィンドウを眺めた。

 そして、思い浮かべたそれぞれの特徴が混ざった、ごった煮のようなデザインになっていることに気づいた。


 この世界がよくできた仮想現実のゲームではないかという疑念を、振り払ってクロスは目の前の数値に向き直った。

 現実の一部をゲームと捉えて攻略法を構築するのは有用だが、現実そのものをゲームと思うのは危険だ。

 前世でも今世でも、クロスの命は一つしかないのだから。


 ウィンドウの右下に浮いているボタンを注視すると、吹き出しのように別ウィンドウが展開した。

 ウィンドウタイトルは、『保有スキルモジュール一覧』となっている。アクティブとパッシブにタイプ分けされたスキルリストをそれぞれ展開すると、『NEW』と注記がついて強調された、合計16個のスキルが並んでいた。


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SP2/30


 +アクティブスキル

  - 力場操作

  - ステータス設定

  - 豊穣系統

  - ブレックファスト

  - ランチ

  - ディナー

  - 魔力操作

  - 軍事系統

  - アクロバット

  - 神格精霊召喚


 +パッシブスキル

  - 超健康体

  - スキルボーナス+1全

  - スキルボーナス+1全

  - 魔・聖循環炉

  - スキルボーナス+1全

  - 賢者の芽

  - 女神の加護

  

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 『力場操作』に視線を合わせると、コストとスキルの説明が、スキル名の下に現れた。

- 力場操作

- コスト:10

- 電磁場や重力場の自在に変形することができる。



 探し当てた写真を見せるにはどうすればいいんだろう、と唸っていたヘンリエッタが、虚空を見つめたまま固まっているクロスに気がついて、話しかけてきた。


『どうしたの? なんかやばいスキルあった?』


 クロスはうなづくだけで対応した。ステータスの使い方を把握するためにウィンドウの隅々まで視線をフォーカスするので忙しい。

 どうやら、スキルモジュールという名称通り、コストを消費して、有効化することができるらしい。


 パッシブスキルの『超健康体』に関しては、視線を合わせてもコスト表記がなかった。

 - 超健康体


肉体が毒、病気、精神異常に耐性を獲得する。


 非常にざっくりとした説明のみが書いてある。よくある話だが、毒に麻痺毒は含まれないという判定だったら、危なそうだとクロスはため息をついた。

 効果説明はともかく、コストなしで常時効果を発揮するのは強いと思う。今のクロスは病気を気にしなくていいわけだから。この樹海でサバイバル生活の難易度が下がるというものだ。


 試しに、『アクロバット』を有効化するように念じてみる。三秒ほど集中してみると、スキルリストの上にあるSP(おそらくスキルポイント)の分子が……上昇しなかった。もう一度、今度は『アクロバット』に無効化を念じてみる。SPの分子は相変わらず0のままだ。

 パッシブスキルのスキルボーナスを確認すると、設定したスキル全てのコストを減少させるスキルだったらしい。三つもあるということは全てのアクティブスキルのコストがマイナス3。これは大きい。

 そして、女神の加護のボーナスだろうか、最初に獲得したスキルがなかなかに強力そうだ。

 中でも、素の値で20もコストがかかるものがある。スキルボーナスの恩恵があっても、現在のスキルポイントを半分以上喰らってしまう。

 『神格精霊召喚』だ。

 その効果説明はこうなっている。


 『神格精霊を召喚することができる』


 各スキルの説明は非常にざっくりだ。

 神格生物ではなく精霊なので、召喚しても正気が削られることはない、かもしれない。


「神格精霊召喚、というスキルがやばそうだ」


『え、なにそれ、すごいヤバそうな名前じゃん。え、え、どうする? 使ってみる?』


 スキルの効果を確かめないといけないさそうなスキルではあるが……と、クロスは迷っていた。後回しにしていざという時に使えないというのも困る。

 しばらく考えたあと、クロスは結論を告げた。


「夜が明けたら、スキルの使い方を色々試してみるか」


『そっか〜、じゃあ、もう寝て明日に備え……る前に、クロスさん』


「なんだ?」


 どこからともなく、くぅ〜という音が聞こえた。


『お腹すいた』


「そんななりでも、空腹は感じるのかよ」


 このスキルシステムと同じくらい、いやそれ以上にこの生首の方が不思議の塊かもしれない。




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