003 ゲームかよ!

スキルモジュールA「ステータス設定」が解禁されました。

スキルモジュールA「豊穣系統」が解禁されました。

スキルモジュールP「健康体」が解禁されました。

スキルモジュールP「スキルボーナス+1全」を獲得しました。獲得済みスキルの効能が+1します。

スキルモジュールA「ブレックファスト」が解禁されました。

スキルモジュールA「ランチ」が解禁されました。

スキルモジュールA「ディナー」が解禁されました。

スキルモジュールA「力場操作」が解禁されました。

スキルモジュールP「スキルボーナス+1全」を獲得しました。獲得済みスキルの効能が+1します。

スキルモジュールP「健康体」が「超健康体」に進化しました。

スキルモジュールP「魔力操作」が解禁されました。

スキルモジュールP「魔・聖循環炉」が解禁されました。

スキルモジュールP「スキルボーナス+1全」を獲得しました。獲得済みスキルの効能が+1します。

スキルモジュールA「軍事系統」が解禁されました。

スキルモジュールA「アクロバット」が解禁されました。

スキルモジュールP「賢者の芽」が解禁されました。

スキルモジュールA「神格精霊召喚」を解禁しました。

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「ぐ、あああっ!」


「な、ナニ、何なんじゃ!? 怖い!」


 突然頭の中に流れ込んでくる声と、脳味噌を内側から炙られているような頭痛で、クロスはもだえ苦しんだ。その体からは湯気のようなゆらめきが立ち上り、見ているそばから、変化していることがわかった。破けた装備の合間から見えていた脂肪で覆われていた体躯は、みるみるうちに内側の筋肉を浮き彫りにしていく。


 しばらくして身体の変化が収まると、頭の中の声はこういった。


 ――――女神の加護の展開を完了しました♪ 解放されたアクティブスキルを使用するには、ステータスからスキルをスキルスロットに配置してください♪

 

 るん、って感じの語尾と、ファンファーレのバックグラウンドミュージック付きだった。


「ゲームかよ!」


 クロスは空に向かってのけぞりながら叫んだ。痛みもだるさもない。自然な力加減の叫び声がびりびりと大気を震わせる。赤竜が二重瞼の目をぱちくりと開閉して、不思議そうに首をかしげる。


「足の頭がおかしくなってしまったのじゃ!」


「誰が足だ!」


 目の前のドラゴンをそっちのけで、クロスは生首に突っ込んだ。こめかみを両の掌で挟み込んで左右からめりめりと締め上げると、魔王は「ぎゃー」と悲鳴を上げた。


「痛いのじゃ、つぶれる! つぶれてしまうからやめるのじゃ! ごめん、ごめんなの……! ああ~」


「……ガァアアアア!」


 無視をするなと言わんばかりに竜が吠えた。そして、長い首を曲げてゆっくりと顔を近づけてくる。

 竜から敵意を感じずクロスが固まっていると、顔の先の鼻腔を大きく開いて、臭いを嗅いでいるようだった。


「な、なんだ?」


「ぐふ~」


「ひっ」


 近づかれて息を止めていた魔王が引きつった声を漏らした。

 視線が合ったらしい。

 ふんすと竜は満足したように鼻息を吐き、クロスの腹に鼻先でとんと触れてから、飛び去って行った。


「何だったんだ」


「と、とりあえず、命拾いしたのじゃ。行くぞ。この魔境からさっさと脱出するのだ!」


 クロスは本当にこの生首を棄てていこうかなと思った。思っただけでできないが。

 すっかり痩せて軽くなった体で、岩壁に片足をかける。踏み込んでもう片方の足をあげた瞬間、びゅおっと音がして、気がついたら眼下に森があった。


「あ?」


「なななな、何をしとるんじゃお前!? あ、あ~~~! 嫌~~~~~!」


 落下する。

 慌てる生首に反比例して、クロスは全くといっていいほど焦りも恐怖も感じていなかった。女神の加護で様変わりした影響は、精神性にまで及んでいるのかもしれない、とクロスは首を捻る。そうだとしたら、スキルというものがすこし恐ろしい。

 着地した。土煙がもくもくと立ち上る。

 

「うわ、ほんとになんともないな」


 衝撃を逃がす屈伸も必要なく。全身全ての関節が軋むこともなく。

 クロスは生首を抱えていない方の手を見て、握り、開く。


「人間……やめちゃった」


 竜には襲われなかったが、この状況を考えると女神の加護が目覚めたのは都合がいい。しかし、この人間の辞め具合を思うと、クロスは言い様もない不安が頭の端にこびりついているのを感じていた。

 もっと若い時であれば、すんなりと受け入れられたのだろうか、と考える。


「う、うう、うぇ……うぇ~」


 と、抱えた生首がうるうる、ぽろぽろと涙を流しながら泣きはじめてしまった。

 魔王のくせに泣き虫なのかよ、と思いつつもクロスは困惑する。だって、顔だけながらこの生首、顔は整っている。おまけに、クロスは生まれてこの方、女性(未成年は含まない)が泣いている場面に遭遇したことがない。そしてその原因になったこともない。だから童貞×2なのだ。

 保護者視点で、嫌いな野菜を残して怒られギャン泣きした勇者をあやすのとは訳が違う。


「お、おい。泣くなよ。俺が悪かった」


 そんなわけで、クロスは涙に留まらず鼻水も垂れている魔王に、内心「うぇ」と思いつつも謝った。


「お前………悪いと思ってないじゃろ……。そういう顔……しておるし……」


「いや、確かにそうだが」


「ううっ!」


「まてまて、落ち着け! そもそもだ。俺は勇者一行の聖騎士(仮)でお前は魔王だったわけだろ? なんで敵に配慮してやらないといけないんだ?」


「い、今は遭難仲間じゃし! ちょっとは気を遣ってくれてもいいじゃろが!」


「どちらかというと、お荷物だろ。首だけで動けないんだから」


「お、お荷物じゃないわ! ちょーっと魔力が足りないだけで、回復したら変身して動けるようになるし!」


「それ、何日かかるんだ? というか……」


 クロスの知識では、魔力を回復、蓄積させるには魔力を持つ動植物の摂取、食事が必要だ。

 周りを見回す。

 根の張り出た立派な樹木はあるが、実を付けそうな種類の木はぱっと見てなさそうだ。そうなると獣を狩って食料を確保することになるが、はたして獲物を見つけられるか。食料を手に入れるのは難しそうだ。クロスは修道院での修行時代に何度か狩りを行ったことがあるが、その時行ったのは犬と大人数で対象を追い込む方式の猟だった。しかも、本職の狩人の監督つきだ。


 クロスの不安はひとまず置いておいて。生首の魔王を見る。

 そう、生首の、魔王を見た。


「それ、食べたものを消化できるのか? 物理的に考えたら飲み込んだ側から首の下にこぼれ落ちるよな?」


 ぐすっと、魔王は鼻をすすって、にかっと白く並びのいい歯を見せて言った。


「……それは大丈夫じゃ。 我はお主の血をもらうからの!」


「足手まといどころか、寄生虫だった」


「き――――!? あんまりじゃ!」


 ギャン泣きした魔王の声が、深い森に響く。機嫌をとるのもとりあえず無視して、まずは自分がどこに居るのかを把握しないと始まらない。そして、つぎは生活基盤だ。判らない事だらけだが、どうにかするしかないとクロスは歩き出した。

 目指すは、跳躍したときに見えた、近くでもっとも高い山岳の頂上だ。



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