天を恨む
ゆる弥
天を恨む
カップラーメンを啜る音が住むのが一人になった家に鳴り響く。
隣の部屋には仏壇があり、妻の遺影が置かれている。先程立てた線香独特の匂いが部屋に香っている。
私は妻を愛していた。妻を亡くした今絶望に打ちひしがれている。
生活していく上で必要な家事というものをしてこなかった私は、カップラーメンを作る事しかできない。
娘と息子は家を出てそれぞれで家庭を持っている。最近は二人で暮らしていた。妻は末期のガンだった。
妻はマメで私の事も子供のことも全て一人で面倒を見てくれていた。
脳裏に、ある時の会話が蘇ってきた。
「困った時は戸棚を見てね」
そう言われていたのを思い出して、食べ終わった後にゴミ箱へ投げ捨てると。戸棚を漁った。
手紙だ。
中には料理本のある所、洗濯の一回の洗剤の量、お風呂のため方、トイレは毎週掃除すること。家事に関しての注意事項が書かれていた。
「ようこ……有難う……」
天よ。なぜ連れていくのが俺じゃないんだ。
天を恨む ゆる弥 @yuruya
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