第1話 選り好みの出来ない、新卒で入った企業

 ……


 俺が新卒で入った企業は、機械の制御盤内に据え付ける、各制御プリント基板を作る企業で有った。

 言葉の通り。機械を動かす為の制御基板を作る企業だ。


 パソコンで言えば、マザーボード。

 エアコンやTVを動作させる為にも、制御基板は使われている。


 制御基板の製作流れは……プリント基板に電子部品を差し込み、その基板を槽に通して、プリント基板に電子部品を半田はんだ付けして作っていく。

 だが、大きい電子部品は半田ごてを使って、手作業で半田付けをする。


 その企業は大手電機メーカーの下請け企業で有り、制御盤基板をほぼ専業で製作する企業で有った。

 俺が配属された部署は、ライン作業でプリント基板に、電子部品を手作業で差し込んだり、また、大きい電子部品を手作業で半田付けをする仕事がメインで有った。


 ☆


 俺は地方工業高校出身だが、当時はバブルが既にはじけており、引く手あまたの就職活動は出来なかった。

 A4用紙1枚で収まる10社ぐらいの企業から、少しでもマシな企業を探し出しての就職活動で有った。


 希望の企業は採用活動すらしておらず、両親は俺がフリーターに成るのを全力で拒否して、また脅迫もしてきたので、その数少ない企業から就職活動をするしか無かった。

 工業高校の就職担当をしたのは、ハローワークで有った。


 これが、俺とハローワークとの出会いに成る。

 そして……俺の不運の始まりと、長い付き合いと成る瞬間でも有った。


 ……


 運が良いのか悪いのかは分からないが、俺の工業高校での、採用枠一人の所に三人が採用選考に応募して、俺が今の企業に採用された。

 採用理由は当然聞けないが、俺は一回目の就職活動で見事に内定を勝ち取った。


 望む望まずでは無く、両親もこれを凄く喜び、俺もこれ以上の就職活動をしたくなかったので、俺はその企業に就職する事を決めた。

 だが、俺はその企業を一年と少しで退職してしまう///


 もちろん、自己都合退職で有る。

 退職した理由は、同期に入った奴からの嫌がらせ及び、其奴そいつの息が掛かった同僚から心理的ストレスを与えられた。


 同期は俺以外に二人居て、その一人は俺と同じ部署に配属された。

 其奴の名前をAとするが、Aは俺と比べて陽キャラで有り、人懐っこい顔をしていた。


 Aの仕事は雑で有るが、スピード自体は早いので、同僚達はAを賞賛した。

 仕事が出来るの意味である。


 俺はAと比べれば、仕事が遅いが丁寧な仕事をした。

 だが、同僚達はスピードだけを見て、俺の仕事が遅い事を馬鹿にし始めた。


 また、手先が器用ではないので、ライン作業では、同僚達から度々苦言を言われていた……

 そんな俺を見ていたAは、Aの中では俺を要らないと判断して、俺に嫌がらせをしてくるように成った。


『俺の作業が遅い!』と、Aは横やりを入れたり、他の同僚達と話していると勝手にAが割り込んできたりと……俺の対する嫌がらせは日増しに増えていった。


 ……


 俺の仕事が遅い事は上層部にも伝えられて、遂にはAとの賃金格差も起きてしまった///

 会社に上手へ馴染んだAを上層部は褒め称え、その対価で賃金アップがされた。


 俺の方は賃金アップどころか……ライン作業から外され、基板をハケでコーティングする作業や雑用に回された。

 良い意味で言えば配置転換であるが、俺の中では左遷と感じていた。


 Aの評価は日増しに高くなるにつれて、俺の評価は日増しに下がっていった……

 当然。俺は面白くないから、退職を決意する。


 当時はまだ、ハラスメントが浸透していなかった。

 なので、Aを巻き込んでも無意味で有ったから、性に合っていない等の適当な理由を付けて、俺は直属の上司に退職を申し出た。


 俺の上司は形式上で引き留めたが、Aや同僚からの引き留めは一切無かった……


 ☆


 これが、俺が新卒で入った企業物語で有る。

 今でもAの事を凄く憎むが……どんな形であれでも、その企業がAを選んだのだから仕方ない。


 次に入った企業の話は、次回にしよう。

 でも、そんな話をするが有ればの話だが……

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