間章・村のNPC達③

PC達がリゾートで遊んでいる頃の話

これはただの読み物だ。暇なひとが暇なときに読むといい。



深夜・道具屋へ魔動機を運ぶトトロット


トトロ(以下ト)「こんばんにゃー、商品の配達でーっす」

ワークマン(以下ワ)「おっ、トトロさん、夜遅くにお疲れだべ」

ト「いぃえぇ、毎度ごヒーキいただいてますからにゃあ。…しっかし、見る限りじゃこの前の戦争被害はあんましなかったって感じかな」

ワ「そうなんだべ。あん日はアクシズさんも出かけてて、まともに戦える人が村長とオラしかいなくてさ。地響きどんどん近づいてきてとんでもなく焦ったども、蛮族の奴ら全然こっち来なかったんよ。とは言えロックウッドが落ちたらここも終わりだべな、固唾を呑んで見守っただよ。」

ト「いやー、良かったよねえ、ホント。アリナっちめっちゃ張り切ってたし大丈夫とは思ってたけどさ。てことで今日は自動補足型警備魔動機持ってきたよ! 穢れた魂が近づくと自動で攻撃してくれる優れものさ! ま、ちっちゃいから玄関に仕掛けるくらいしか出来ないんだけど。今が一番売れると思うんだよねぇ」

ワ「そ、そいつはすげえど。そんなもん、どこで手に入れたべか?」

ト「ふふー、そりゃあ秘密さ! これならココの鍛冶師の品にも負けないかなってね! まったく凄すぎなんだよあのおっさんの作るもん、おかげで仕入もめっちゃ大変よぉ。ま、こんな辺境の村じゃそんな襲われる事ないとは思うけどさ」

ワ「…うーん、それがそうでもないんだな、ほんと困るべよ」

ト「そうなの?」

ワ「この村な、たまーに、もん凄い強い蛮族に襲われるんだべ。理由が全然分からないんだどもな。今は賑わってきたども、昔は消滅寸前だったべよ。」

ト「うへー、そうだったんだ。油断してたわ。あんまり気にしてなかったけど、この村の事、ちょっと調べてみようかな…」

ワ「なんか分かったら、是非とも教えてほしいだべ」



朝方、村の入口で話すスーホ少年(以下少)とガイアメモリ(以下ガ)


ガ「以上だな。概ね、向こうの集落も安定してきたといえるだろう」

少「ありがとう、おっちゃん! 父ちゃん達に伝えておくよ。ここに住みたいって俺の我儘で、迷惑かけてごめんな。」

ガ「いや、どちらの拠点からも魔晶石が取れるのならばむしろ必然だ。君達のおかげで我々は潤沢な石を確保でき、蛮族に拠点と資源を渡さずに済む。君の提案は、結果的に戦略として実に良いものであった」

少「え、お、おぉ、そうなんだ。良く分かんないけど役に立ったなら良かったよ。集落の皆が無事だったの、おっちゃん達のおかげだもんな。おっちゃん達は怪我とかなかったのか?」

ガ「はは、ある程度ならばジェネレーターに少し居るだけですぐ直るから、心配しなくて大丈夫だ。まぁ、直らないものもいたが、我々は都市を守る事が使命だからな、それもまた本望さ」

少「本望、か。ジル爺ちゃんも言ってたな、"己に恥じぬ生き方をしろ"って。今までは全然分かんなかったけど、爺ちゃんが死んで、集落が襲われて、父ちゃん人質になって、住む場所変えてさ、色んなことがあって、沢山考えた。なんとなく分かってきたんだ、生き方ってやつ」

ガ「うむ、そうだな。私達とは違うだろうが、君も"命を懸けてでも遂げる"良い使命を見つけ出せるとよいな」

少「…、ああ、そうだな!頑張るよ!」



お昼時、食事処エッダ・のんびりするセイル(以下帆)とエッダ(以下エ)


帆「おばちゃん、ご飯おかわり!」

エ「はーい、今日もいっぱい食べるねぇ、セイルちゃんは」

帆「おばちゃんの料理が美味しいの! キャベツのお肉巻、サイコーなの!」

エ「あらあら、嬉しいわねぇ。そのキャベツとトマト、モブオ村ってとこからいただいた物なのよ。元々少ししょっぱくて保存も効いて、そのままでも美味しく食べれる良い食材でねぇ」

帆「もぐもぐ、そうなんだ! また食べたいなぁ」

エ「そうねぇ、モブオ村の方と連絡が取れたら、定期的な交流もできるかもしれないわねぇ。お手紙でも書こうかしら」

帆「もぐもぐ。あ、お手紙書いたら届けてあげるの!小鳥さんに頼んであげる!」

エ「ふふ、気持ちは嬉しいけど、小鳥さんは難しいんじゃないかしら」

帆「え~、小鳥さん運んでくれるの。ホントなんだよ」

エ「でも、届けた先にはセイルちゃんいないから、小鳥さん、捕まっちゃうかもしれないわよ」

帆「はっ!! っそれは駄目なの、食べられちゃうの!…そしたら、けいじばんに貼ればいいの! 手紙届けてください~って。すぐ貼ってくる!」

エ「あら、ありがとう。とても助かるわ。……セイルちゃん、本当に元気になったわねぇ。前は時折寂しそうな顔してたのに、運動して、友達も出来て、今は笑顔で活き活きしてるわ。このまま村が平和でいてくれると、いいのだけどねぇ……あら、こんにちは。あなた、確か…」

イスロード(以下イ)「仮設ギルドの事務官、イスロードです。こんにちは。セイル様が、こちらにいらっしゃると聞いて」

エ「あら、あの子は今掲示板に夢中になってるわ。どうかしたのかしら」

イ「はい、スミロス様から『剣が騒めいてる』と連絡を受けまして、蛮族が近くにいる可能性を踏まえて念のためお傍にいようと。前の戦争時ほどではないとの事なので問題はないかと思いますが」

エ「あらあら、言ったそばから早速物騒だわぁ」



一方、村南西、アクシズの家の前


シーナ「こんにちは、回覧版です!あれ、どなたかいらっしゃってましたか?」

アクシズ(以下水)「あ、あら、そんなことないわ、ご苦労様ありがとねー」バタンッ

水「・・・・・・」

水「・・・いったわね。もういいわよ」

?「プハッ。おお。ママぎゅっとしすぎて。頭がくらくらする。」

⁇「ああもう、なんてタイミングで来るんだい、やっぱり集落は危険さね」

水「あの子、妙に勘が鋭いというか、人が集まってるところに来たがるのよね」

⁇「どうでもいいさね。誰に見つかっても叫ばれるのは変わらんえ」

?「ママが弱い奴にビビるの。オモロイ。」

??「全くこの子は……で、わざわざ来たんだ、約束は果たしてもらおうかい。良い場所、見つかったんやろね」

水「それなんだけどね。ここなのよ、ここ。クレイ村。どう?」

??「は、はぁ!? 舐めてんじゃないよ、人族の中で暮らせるわけないだろう!? それによりによってこの場所は…」

水「そんなことないわよ、大丈夫ダイジョーブ!ここから列車で南にいけばドレイクが軍属にいる国もあるし、話の通じるあなた達なら無理な話じゃないわ。前も似たような境遇の子が住んでたのよ。それにこれから村を更に拡張しようと思うのよねー、外にまだ沢山空き家もあるし、あなた達もどうかなって」

??「い、良いわけないさね! ウチ一人ならともかく、この子が住めるわけ…」

?「お。またあの飯が食えるなら喜ぶぞ。美味かったな。あのおにぎり。」

??「え、えぇ……」

?「なぁなぁ。その南の国。ディアボロは暮らしてないのか。暮らしてたらそこでもいいぞ。」

水「あー、残念だけどディアボロが人族の都市に住んでるってのは聞いたことないわね。てかアナタ、だいぶ共通語上手くなったじゃない」

?「ふふん。ディアボロは頭が良いんだ。この本にも載ってた。当然。」

??「(……? ロシェ、なんや様子が変やね、やけに素直や)」

水「ん、その本どっかで見た事あるような……まぁいいわ! とにかく、もう村長呼んどいたから、あとはあなた達次第よ、頑張って!」

??「な、ちょ、ほんま堪忍してぇな…」



同時刻、鍛冶屋スミロフ内、鉄を打つスミロスとお茶を飲む村長


スミロス(以下鍛)「…つまり、守りの剣が反応してたのはその連れてきた蛮族のせいってことか。全く、厄介事引き込まんと気が済まないのかアイツは」

村長(以下村)「ほっほっほっ、まぁ良いではないか。誰とでも分け隔てなく接するのはなかなか出来ない事じゃ。危害を加えるようなものは呼び込まんじゃろ」

鍛「水妖の紹介となれば、ほぼ確実に危険なものを連れてくるぞ。例え本人にその気がなくともな」

村「まぁまぁ、そん時はそん時じゃ。守りの剣が効かないという事は、元々穢れが少ない者達なのじゃろう。蛮族社会に生きる中でも、色々苦労してきたんじゃなかろうて。…それに、少し聞きたい事もあるしのぉ」

鍛「……この村が蛮族に襲われ続ける原因か。ドレイクの幹部級なら確かに知り得てもおかしくはないな。だが本当の事など話すかどうか」

村「内容まで話さなくとも良いんじゃ。少なくとも何かがある、という事実だけで、無差別な襲撃かどうかが判るだけで大きく違う。話の分かる蛮族などそうはおらんからの、この機会を逃すわけにはいかぬじゃろ」

鍛「肝が据わってんな、爺さんは。存外、あんた一人でドレイクくらいなんとかなるんじゃねえか?」

村「ほっほっ、どうかのぉ。それより先程の、剣が反応したという話じゃが」

鍛「ああ、近くに蛮族が…、いや、"剣の持ち主に危機が迫りそうな時"に震え出すんだ。何をどう判断してるかはさっぱりだがな」

村「うむ…持ち主の危機を伝える魔剣であり、変形して戦う魔動機剣であり、結界を張る守りの剣、であると。いやはや、これは思っているよりずっと高度なものなのかもしれんのぅ」

鍛「俺も最初はそう思ったがな。ギルドの専門家と話した後考えたんだが、持ち主を守るという点では共通しつつも、全ての機能が独立してるんじゃないかって説が一番しっくりくるんだ。案外、色んなもんをただ全部くっつけただけなのかもしれん、とな。だとしても、その技術は計り知れんが」

村「そうじゃのぉ。なぜそんなものに、あの子は選ばれたんじゃろうか…」

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