間章・村のNPC達②

冒険者が未知の土地へ探索を繰り広げている頃の話

これはただの読み物だ。暇なひとが暇なときに読むといい。



道具屋前、荷運び中のスミロスとワークマン


ワークマン(以下ワ)「いんやぁ、スミロスさんのおかげでお店絶好調だべ。アルグさんが消えた時はどうしよ思っとったが、今じゃあんたの作った新作道具目当てで村人みんなうちに来るようになったわ」

スミロス(以下鍛)「ああ、こっちも資金が得られて助かってる。それを元手に色々試行錯誤出来るしな」

ワ「自動で火が付くフライパンとか大好評だべよ。あとあれだ、この前乗らしてもらった魔動バイク。あれはおもろいなあ! ちょいと疲れるが、安定性と速度は抜群だべ! 早く売りだして、皆にも楽しんでもらいたいだ。」

鍛「彼女は蛮族社会の中で自然に思い付いたと言っていたが、やはり敵さんは創造力が強いもんだ、人族が手こずるのも頷ける。・・・そういえば、今のロックウッドまでの街道、つまり仕入れルートはワークマン殿が開拓したと言うじゃないか」

ワ「まぁな、この辺うろついてるような魔物はおら一人でも問題ないべ。だども、時折とんでもない強さのやつが襲ってくるこどもあって、油断ならねぇべさ」

鍛「村長から少し聞いたな、昔は"壁の守り人"並の強い戦士達を育て上げたとか」

ワ「そうだべ、オラは昔ここ出身の冒険者に助けられてな、そんで引退したらここに住む事に決めたんだ。ホントは復興とか手伝えればいいんだがなぁ」

鍛「そんなことが。ならば今こそ、復興の好機という訳か」

ワ「そうだな、セイルちゃんが冒険者さん達引き留めてくれたおかげで、衰退していた色んなもんが動き出した。この身を投じて貢献できることに、感謝しかねぇべ。あと、村全部の建物をあっちゅう間に直してくれたあの水色のお嬢ちゃんもだな」

鍛「…そうだな、今のところは、厄災を呼び寄せてないようだ。何もなければいいのだが」

ワ「お二人さん、仲いいべなぁ。長い付き合いなんだか?」

鍛「はっ、腐れ縁というか、向こうが勝手に押し寄せてくるというか。もうかれこれ20年近いか」

ワ「にじゅう!? …え、そいたらあの嬢ちゃん、いくつなんだべ!??」

鍛「…さぁ、よっぽどの若作りじゃなけりゃ、人間じゃないのは確かだな」

ワ「はぇ~、ヒトは見かけによらんなぁ。ホントに女神様だったりしてな」

鍛「だとしたら、信者はよっぽどの幸運だろうよ。あの駄女神サマが悪運全部吸い取ってくれるんだからな」

ワ「…ちょっと信仰したくなっただ」



採掘場前、休憩するススムくんとスーホ少年


ススム(以下進)「ふう、今日も沢山掘ったなぁ」

スーホ(以下少)「お疲れさまです、ススムさん。これどうぞ」

進「おっ、スーホくん、ありがと。訓練は順調かい?」

少「いやー、頑張ってるんですけど、村長さんとっても厳しくてついていくのがやっとで。でもおかげで、基礎的な体力はついたと思います。皆の事も、早く手伝いたいっす!」

進「おっ、いいね! 鉱山夫は体力あってこそだし、将来あの集落に帰っても活躍間違いなしだよ! 将来が楽しみだね! でも、スーホくんは馬の扱いも上手だし、僕はてっきり冒険者になると思ってたけど」

少「いやー、最初はそのつもりだったんですけど、村長さんとか、一緒に訓練してるセイル先輩とか見ると、こんな強くならないといけないのかなって不安になっちゃいまして。とりあえずどっちも出来ていいのかなって思うようになったっす」

進「な、なるほどね、確かにその通りだ。でも、村長はともかくセイルくんは最近鍛え始めたって言ってたし、同じくらいなんじゃないの?」

少「いやー、セイル先輩凄いっすよ。見た目は僕より幼い気がするのに、ずっしり大剣構えてブンブン振り回したかと思えば、村長仕込の双剣使いでガンガン案山子なぎ倒してて、とても同い年とは思えないっす。村長は『昔から村の手伝いで身体使ってたからのぉ』って言うんすけど、それでホントにあんな風に身体動かせるのかなって不思議なんですよ」

進「へぇー、そうなんだ。なんか、そう聞くとやっぱり、この村が特殊なのかなってボクは思うな。たとえばさ、掘ってる時なんかボクも『なんとなくあそこに鉱石がある気がするな』で進むけど、それって結局経験によるものだし。この村に住んでたら、いつの間にか戦いの術が身に付く経験を得られるのかもしれないよ?」

少「じいちゃんが言ってた、"教導の地"ってやつ?」

進「そうそう、それだ。ここはぱっと見なんて事のない村だけど、絶対なんかあるんだと思うんだ。気になって村の地下掘ってたんだけどさ、やっぱり違和感があるというか、おっきな魔晶石が均等に置いてある感じがして、怖くてそういうのは採掘してないんだよね。なんか起きる気がして」

少「ふーん、、、って、ススムさんまた村の地下掘ったんすか? "地盤大事に!!"ってアクシズさんに怒られますよ?」

進「あっしまった。今の内緒ね!」



スミロス工房地下・魔剣安置所、機器整備中のセレンとフェルトー


セイル(以下帆)「こんにちは! おにぎり、持ってきました!」

フェルトー(以下Fel)「セイルちゃん!待ってたよおにぎり!」

セレン(以下Ser)「いつもありがとです。もう食べれなくなると思うと、少し寂しいですね」

Fel「ですねー、結局剣の全容分からないまま帰る事になっちゃいましたから。悔しいなー、やっぱり、解体した方が良いんじゃないですか? いえ、冗談じゃなく、安全性が担保できないのは駄目ですよ」

Ser「珍しくフェルトーがまとも。雪でも降るかも。でもどうせ、中身が見たいだけ」

Fel「そうですけど! でもセイルちゃんの身に何が起きるか分からないのがなぁー」

帆「だいじょうぶだよ! 剣の近くにいる時、なんだか安心するし!」

Fel「んー、それも不思議なのよねー、中身を見る限り、まるでセイルちゃんだけを守るかのような仕組みで」

Ser「…セイルさん、少し、いいですか」

帆「?」

Ser「いえ、セイルさんは、動物がお好きですか?」

帆「…うん! 好きですよ! 兎さんとか、可愛いですよね」

Fel「分かるー。小動物っていいですよね、小鳥とかリスとかセレンさんとか」

Ser「フェルトー、後でお仕置きです。」

Fel「ええ!アタシ何か言いましたか!? でも、どうしてそんな事を?」

Ser「いえ、昨日村の隅で小鳥に囲まれたセレンさんを見かけまして、とても仲が良いなと。」

帆「・・・あの、」

Ser「ふふっ、ごめんなさい、意地悪でしたね。」

(セレン、セイルの元へ移動し小さく囁く。何を言っているのかは聞き取れない)

帆「は、はい。やっぱり、凄いな、冒険者さんって。」

Ser「まぁ、見た事ないわけではないので。とても珍しいと聞いておりますが。」

Fel「なになに、なんの話です~??」

Ser「フェルトーには内緒…に出来る人じゃなかったです。どうせもう知ってるんですよね?」

Fel「セイルちゃんの事が気になって、ついご自宅に撮影機を~、テヘッ☆」

帆「え"!!!」

Ser「…ご師匠様に報告させていただくので、是非叩き潰されてください。」

Fel「あ"! そ、それだけは!それだけはおやめください~!!」

帆「(家の中に入っちゃったのかな? フェルトーさん、無事で良かった~)」

Ser「セイルさん、本当に申し訳ないです。…何か?」

帆「ううん!なんでもないの! でも、家の中にはお母さんの持ち物がいっぱいあって危ないから、あんまり入らない方が良いよ!」

Fel「えっそれって魔動機ですか!? 見たい! 是非観察をんんんんnn」

Ser「フェルトー、流石に怒りますよ」

Fel「むぐうぅ」

帆「ぁ、あはは・・・」



深夜、村の南にて


アクシズ(以下水)「ねぇメル、ホントに行っちゃうの? 寂しいなぁ」

メルクレア(以下メ)「誰かさんのおかげで、もう隠れ住んでいるとは言い難いしな。少し長居し過ぎたくらいだ。僕みたいなのはひとところに留まるだけ、火種になるからね」

水「そんなことない! ていうかそれなら私なんてグレネードよ! しばらく居たけど、別に何も起きてないじゃない。ねぇ、そんなに種族を気にすることなんてないわよ。お話しして、たまにご飯食べて、それが出来れば十分。この村の人達なら誰も気にしないわ。てゆーか気にする奴に私の作った家住ませないし!」

メ「…そうだね、君は今まであった誰よりも不思議な存在だった。運が巡り合えば、また会う事もあるだろうさ」

水「そう…ね。あ、絵を売るならフランクが良いわ! あそこなら結構良い値で買ってくれると思う! ねぇ、そこまで案内したげるから、最後に、その、」

メ「…ああ、約束だもんな。後ろ、乗るといい」

水「!! んじゃ、行くわよ!!」



冒険者の旅路をよそに、村にも変化が訪れる。小さな村の行く末は如何に…

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