間章・村のNPC達

これは君達が冒険に出ている時の、村での出来事である。

ただの読み物だ。暇なひとが暇なときに読むといい。



村の工房、鉄を叩くスミロスに近寄るアクシズ


アクシズ(以下水)「ねぇ寿太郎、あなた魔動機は扱えないの? 直してもらいたいものがあるんだけど」

スミロス(以下ス)「構造の理解は多少できるが、難しいもんは無理だ。何でも直せると思うな。あとその呼び方をやめろ」

水「いやよ、寿太郎は寿太郎っぽいもの。そっちこそ水妖って呼ぶのやめなさいよね。そしたら、ちょっと村の南に来てもらえないかしら」

ス「南、畑の先か、蛇が多くて近づくなと言われていたな」

水「そそ、ちょっと手伝って欲しくて」

ス「やるのはいいが、丁度今巨大な鎧を制作中だ。俺も暇じゃないんだ、手を止めるからには報酬はいただくぞ」

水「えぇ、良いわよ。多分、気に入るだろうし」

ス「…?」



その後、村の南、畑の先にあるいつの間にか綺麗になっていた空き家の前


水「メルー? いるかしら、起きてるかしら」

メルクレア(以下メ)「…一応隠れ住んでるつもりなんだ、昼間に平然と呼んでくれるなよ。その人は?」

水「なんでも直せる鍛冶ヤロウよ。メルのバイク、直してもらおうと思って」

ス「おい、誰だこいつ、魔物友達か?」

水「だーかーらー!私もメルも魔物じゃないから!」

メ「まぁ、僕は似たようなものだけど」

水「はいそこっ!卑屈にならない! それでね寿太郎、これ、彼女のなんだけど」

ス「魔動バイクか。この程度なら簡単だ、直してもいいが…」

メ「すまない、僕はメルトレア、暫くここに住まわせてもらってる。一応、人族のつもりだ。村を襲う気なんてないけど、見た目があれだし他者と触れ合うのもちょっとね、極力距離を取っていたかった…」

ス「のを、この水妖に絡まれたってわけか、お前も災難だな」

水「この村に住んでるなら、私の誇りにかけて良い生活を送ってもらわないとね」

メ「要らないっていってるのに、余計な世話ばかり焼いてきて。壁や床を直してくれたのは感謝してるけど」

ス「…このバイクはどうしたんだ? 普通の魔動バイクではないな?」

メ「昔、世話した人間に貰ったのを、色々いじったんだ。魔法で改造したから、元の魔動機部分の故障は分からなくて。直せるかい? 寿太郎さん」

ス「待て、俺の名前はスミロスだ。間違ってもその名を広めるな。…なるほど、魔晶石の回路をハンドル部分に当てたか。これは面白い…さながら魔"導"バイクか」

水「どう?直せそう?直せそう?直ったら乗せてくれるって言うのよ、早く風に乗って疾走したいわ」

メ「だから、僕はそんな事一言も・・・」

ス「数日待て、部品を仕入れてからだな。そこの白いの、御代はこの魔法を用いた改造方法でいいか?」

メ「ん、そんなことで良ければいくらでも。助かるよ、この前、久々の戦闘で少し高ぶりすぎて無茶させてしまって。これでまた遠方まで移動できる」

水「ツーリング楽しみね~!」

メ「……はぁ」



同時刻、広場前、黒い服の女性を見送り、井戸でのんびりするワークマンと村長


ワークマン(以下ワ)「いやー、良い子でしたな、村長」

村長(以下長)「突然『ご挨拶に来ました!』と言われた時は驚いたが、レントくんのお連れの方じゃ、住みたいと言われて断る理由などないの」

ワ「そうだべな。あの冒険者さん達がアルグさんの偽物倒してくれなきゃ、今頃クレイ村は無くなってたかもしれないべ」

長「ワシやワークマンは平気じゃろうが、他の者は戦えんしのぉ。戦うすべを記したこの村の伝書が残っておれば良かったのじゃが。しかしいまや、無くなるどころか住人が増えておる。ここで努力すれば、昔のような"教導の地"と呼ばれる日がまた来るかもしれん」

ワ「それはオラも頑張らねばいけないべ! みんなの為に、使える道具屋になるよう考えなきゃ。こうしちゃおれん!」

長「ほほ、まだまだ若いのぅ。さて、ワシに出来ることは・・・」



一方、食事処エッダ、テーブルに座るセレンとフェルトー


セイル(以下帆)「いらっしゃいませ! ご注文は何にしますか?」

フェルトー(以下Fel)「おお! セイルちゃん! ここで働いてるの?」

帆「そうなの!じゃなかったそうなんです! 最近は村に住む人も増えて、結構繁盛しだしたんです! のんびりしてたエッダおばちゃんも最近張り切ってるの!」

セレン(以下Ser)「それはそれは。仮に冒険者ギルドが出来たら、もっと沢山の人が訪れる事になります。もっと忙しくなりますよ」

帆「うわぁ、それは大変なの。繁盛しすぎて、おばちゃん倒れちゃうの」

Fel「にゃはは、そうなる前に他の飲食店が出来るんじゃない? ギルドの周りは常に大盛況さ! おっきな街になるんだろうねぇ」

Ser「ふむ。そうなるとこの自然と調和したのんびりした空気は無くなってしまうかもですね。静かなのも好きなのですが。」

帆「えー! 動物さん達が住めなくなるのは嫌なの!そんなのダメなの!反対、はんたーい!」

Fel「あらあら、持ち主に反対されちゃいましたね、セレンさん」

Ser「…そうですね。まぁ、仮に期限付きの守りの剣となれば商人達は反応しないでしょう。今のところ大丈夫ですよ。ではおにぎりをお願いします」

帆「そうなの? ふぅー、良かった。おにぎりは私が握るの、待っててくださいね!」

Fel「あっアタシのもー!・・・セイルちゃん、この村が好きなんですね。ん? セレンさん? 何か、気になりました?」

Ser「いえ、そうなのかなと思っただけです。となるとあの剣は・・・」


物思いにふけるセレン。冒険者のいないクレイ村は、平和に時を過ごしていた。

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