十六話
太陽が空のてっぺんに昇った頃、俺はようやく森に到着した。ここに入るのはもう三度目。慣れたものだ。側の茂みから葉をちぎり取り、鼻に詰めてから奥へ向かう。前回はタイミングよくミンナと会えたが、今回も同じように、とは行かないだろう。彼女は花の世話をしてると言ってた。花畑で待ってればいずれ来るかもしれないが、確証もなく待ち続けるのもな……その場合は集落のほうまで行って捜すしかないか。先住民達に襲われるかもしれないが、まあ、言葉の通じない相手じゃない。ミンナさえ見つかればどうにかなるだろう。多分……。
木と茂みの間をかき分けて、俺は花畑の側までやって来た。が、やっぱりミンナの姿はない。頭上から光の差し込む幻想的な景色の中に、ただ静寂が漂ってるだけだ。一応十分ほど待ってみるも、感じるのは枝に止まる鳥の動きぐらいで、誰かが近付いて来る気配はなかった。……しょうがない。集落のほうへ行ってみるか。
冷たく新鮮な空気を喉で味わいながら、緩やかに曲がる細い道を進んで行く。確かこの先辺りだったよな。あの祭壇があったのは――そう思いながら先を見ると、道が右へ分かれてるのが見えた。間違いない。あの分かれ道の先に祭壇が――
その時、ガヤガヤと話す声と人が近付いて来る気配を感じて、俺は咄嗟に側の木の陰に隠れた。先住民か。何人かいるみたいだ――目だけをのぞかせて道の先をうかがってみる。
「次も頼むよ」
「ええ。豊作になるどええすな。じゃあおいは花っこ見に行ぐすね」
明るい声で話しながら現れたのは、数人の男女と……ミンナだ! ミンナは彼らと別れてこっちの道へやって来る。集落に着く前に見つかるとは運がよかった。俺は男女の集団が立ち去ってから、そっと木の陰から出た。
「……ひゃあっ!」
突然目の前に出てきた俺に、ミンナは両目を見開いて悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫だから! 俺だよ」
「……ヨハンさん? 何だ、どでんした……」
胸を押さえてミンナは安堵の息を吐く。
「一体どうしたの? もしかして、何がえ話でも?」
「ああ、そうなるかもしれない。……ちょっと聞くが、ここには巫女っているのか?」
「ミコ? それって何?」
ミンナは首をかしげる。そういう概念は失われてるのか……。
「神様に仕えて、そのお告げを聞いたり、祈りを捧げたりする役目の人だ。ここではそういうこと、やってないのか?」
「ああ、そいだば――」
「ミンナ! おいも花の世話どご……」
俺達は振り向く。と、分かれ道から遅れて現れた緑髪の女性が大声で話しかけながらやって来たが、王国人の俺に気付くと、笑顔だった表情は一瞬にして硬く強張った。
「な、何で、王国人がいるの……?」
俺はミンナと顔を見合わす。まずいな。やっと話が聞けるところだったのに。ミンナも突然のことで引きつった笑みになってる。
「あ、これは……」
「勝手さ入って来るなんて……皆さ伝えねば!」
「ま、待って――」
止める間もなく女性は道を引き返して行ってしまった。……面倒なことになるな。
「出直したほうがよさそうだな。話はまた次に――」
去ろうとした俺の腕をミンナは引き止めてきた。
「行がねでえわ。こさいで」
「だが……」
「あだはおいがだどご助げるべどしてけでいるんだべ?」
「まあ、そのつもりではいるが……」
「だったら、もうコソコソするごどねわ。皆にもおべでもらえば、協力でぎるごどが増えるがもしれねし」
「俺があんたを殺そうとしたところを見てるやつもいる。簡単に信じて協力するとは思えないが」
「あー、そんたごどもあったげど……でも話せばわがってけるわ。きっと」
「本当か? 俺は五体満足のまま森を出たいんだが」
「危害加えるべどするふとがいだら、おいが守るわ。んだんて大丈夫」
こんな華奢な女の子に言われてもな……。
そんなことを話してる間に、道の先から先住民達の足音が聞こえてきた。どごだ、という男性の声と共に、数人の姿がこっちへやって来る。
「……本当だ。王国人がいるぞ」
「あいづ、前さ足ひねって、助げだやづでねが?」
「そうだ! ミンナ殺すべどしたやづだ!」
「懲りずにまだミンナ狙いに来だのが? それども詫びにでも来だが?」
男性達の顔と口調に警戒と殺気が湧き始める――思った通りの反応だ。俺じゃどうにもできそうにないな。
「皆、待って。このふとはもうわりぇごどはしねわ」
一歩前に出たミンナは、すぐに声を張り上げて言った。
「何言ってら? おめどご殺すべどしたやづだぞ!」
「そうだんだども、今はおいがだどご助げるべどしてけでるの」
「助げるって、どんたごどだ」
「実は、おい――」
深刻な表情になったミンナの肩を、俺は思わずつかんだ。
「まさか、野営地でのこと話すつもりか? そんなことすれば全員から責められるんじゃ……」
「おいのこどより、皆助がるほうが重要だわ。ヨハンさんはおいがだのごど、助げでくれるすよね……?」
微笑んではいるが、その端々に不安が見える顔がこっちを見つめる。
「そうしようと頑張ってはいるよ。だからここにも来たんだ」
「えがった。じゃあおいはあだ信じで、皆にすべで伝えるわ……」
男性達に向き直ると、ミンナは静かに口を開き始める。
「おい、黙ってだごどがあって――」
まずミンナは自分が決まりを破ったことを告白した。次にその理由、そして俺が今何をしようとしてるか――驚かれ、非難の声を受けながらも、すべては長年続く呪いを解くためなんだと、ミンナは気丈に話して聞かせた。
「……こそごそど、そんたごどしてだのが」
「一人で話しに行ぐなんて、何でそんた危ねごどしたんだ」
親が子を叱るような言葉が次々に飛んでくるが、ミンナは怯まず返す。
「とにがぐ、皆助げだがったの。決まり守り続げでだら、森は焼がれでだがもしれねがら」
「んだども、王国人はこご焼いで、おいがだどご殺すべどしたんだべ? 信じられる相手でね」
「それは誤解があったがらよ。でも今は大丈夫……そうべ?」
振り向いたミンナが俺に聞く。
「ああ。俺達は長年、呪いはあんた達の仕業だと思ってたから、かけた犯人を仕留めようとして、それで目撃されたミンナを狙った。だが状況が変わって、誤解をしてたってこともわかった。実は、本当の犯人も見つけてるんだ」
これにミンナの驚いた目が向く。
「それって本当なの? じ、じゃあ、そのふとさえどうにがすれば、おいがだの呪いも……」
「あんた達の呪いも、王妃の呪いも、全部消えてなくなる……が、そう簡単な話なら俺はここに来てない」
「何が問題があるの?」
「その犯人も呪いにかかっててね……その影響で殺すことができないんだ」
男性達がざわめく。
「そんたごどがあるのが?」
「おいがだどごぬが喜びさせで、どんたつもりだ」
「ばしの話で騙してらんでねが? おいがだどごちょして――」
「騙して得することなんかこっちにはないよ。だから事実を言ってる。協力してくれないか? 話を聞きたいんだよ」
男性達は皆渋い顔を浮かべてる。警戒心は根強いな。
「……ミンナがらもう話聞いぢまってらみだいだし、話ぐらいならえんでねが?」
「話聞いだら、さっさど出で行ってけるが……?」
「ああ。聞ければ用は済む」
そう答えると、男性達は小声で確認し合う。そして俺の正面に立つ背の高い男性が代表するように言う。
「そいだばえべ。で、何聞ぎでゃんだ?」
「さっきミンナに聞いたんだが……」
視線で問うと、ミンナはニコリと笑う。
「あだが言ったミコっていうのは、おいがだは神仕えって呼んでらわ」
「その、神仕えをしてる人はどこにいる? 一つ頼みたいことがあって」
「もうおめのまなぐの前にいるよ」
背の高い男性の指がミンナを指す。……え、彼女が?
「おい、神仕えして二年になるわ。頼みでゃごどって?」
事情を知ってるミンナなら頼みやすくて助かる――俺は努めて真摯に言った。
「あんたの血を、くれないか?」
ミンナの怪訝な眼差しが一瞬の静けさを生む。その直後、男性達の怒声が響いた。
「おめ、やっぱりミンナ殺すつもりなのが!」
「そんたの許さねぞ! 今すぐ出で行げ!」
襲いかかって来そうな勢いの男性達を俺は手で制する。
「勘違いするな! 別に大量の血が欲しいわけじゃない。指先をちょっと切って、数滴貰えれば十分だ」
「殺さねでも、傷は付げるんだべ。そんたの――」
「指先切るぐらい、おいはどうってごどねわ。畑仕事してればよぐあるごどだし。……んだども、何でおいの血だばが欲しぇの?」
「別の方法で呪いを解くにはいくつか材料が必要でね。その一つが巫女の血らしくて」
「へえ……んだども何でおいなの? 王国人じゃやざねの?」
「王国内に巫女はいない。だからそれを捜しにここへ来たんだ。もしいなかったら、王国を出て遥か遠くまで捜しに行く羽目になってたかもな。一安心だよ」
「おいの血で呪いが解げるだば喜んで指切るんだども、別の方法って一体どんたごどなの?」
「簡単なことだ。木を育てるんだよ」
これにミンナは不思議そうに目を丸くする。
「木どご? そいだげ?」
「ああ。木を育てると、聖なる力でここら一帯の呪いを解くんだと。だがそうなるには最低でも五年はかかるらしいが」
「苗木がらおがれれば、確がにそのぐらいはかがるべね……」
「怪しぇもんだな、そんた話」
男性達の目に疑念が浮かぶ。
「何で呪い解ぐども木おがれなぎゃならねんだ」
「そんたの、聞いだごどねぞ」
「やっぱりおいがだどご騙してねが?」
「だから騙してないって。聞いたことがないのは、古い時代の方法で、あまりに時間がかかるから忘れ去られてただけなんだよ。信じてくれ」
とは言ったものの、俺も正直、半信半疑なところがある。材料を集めて、木を植えて、それを育てただけで本当に呪いが解かれるのか……だが他の術が見つからない今は、あのジイさんの話を信じて、とにかく動くしかないんだ。
「皆、信じでけで。これがばしだったどしても、おいがだがひどぇまなぐに遭うわげでねんだんて」
「んだどもなあ、素直さ信じでえもんか……」
男性達は顔を突き合わせると、ヒソヒソと何やら話し始めた。二分ほど続けると、話を終えた背の高い男性がこっちに振り向いて言う。
「呪いに関する話、おいがだだげで決めるごどはでぎね。んだんて全員さ話聞いで決めるごどにする」
「それはまあ、いいが、できれば早く答えを貰いたいんだが」
「今がら聞ぎに行ぐがら、おめは動がず待ってろ。……ミンナ、行ぐぞ」
彼女を呼び、男性達は集落のほうへと歩き出す。
「……そいだば、おいも行ってくるわ」
「どうにか説得してくれ。呪いを解くにはミンナの血が絶対に必要なんだ」
「わがった。けっぱってみるがら、しばらぐ待ってで。……向ごうの花さ近付がねようにね」
「大丈夫だ。今は青臭さしか感じてないから」
俺が自分の鼻を示すと、ミンナはふふっと笑い、そのまま道を遠ざかって行った。彼女だけが頼みの綱だ。巫女を探してあっちこっち旅するなんてごめんだからな。
言われた通り俺は動かず、地べたに座って待った。木に寄りかかってると風で揺れる木々のざわめきが心地いい子守唄のようで、最近の疲れも相まって何度か浅い眠りに陥ったが、答えを持って彼らが戻って来る気配は一向になかった。全員に話を聞くんじゃ時間はかかると思うが、それでも一時間ぐらいで終わるだろう。それまで仮眠でもしておくか――そんな考えで眠り、そして次に目を覚ました俺は、辺りの暗さに驚いた。頭上から差し込んでた光は消えて、森全体に薄い闇が広がってる。少し寝過ぎたか。にしても、この暗さは一時間どころじゃない気がする。もう夕方になってるんじゃないか? 日が陰って肌寒いし、腹も減ってる。そう言えば今日は朝飯しか食ってなかったな。腹の虫が騒ぎ出す前に何か食いたいところだ。でもまだ仕事が済んでない……話を聞くのにここまで時間がかかるものか? まさか俺の存在を忘れてるわけじゃないだろうな。念のため集落まで見に行ったほうがいいだろうか――湧き上がった不安から立ち上がり、ズボンに付いた砂を払ってた時、道の奥に小さな光が現れ、俺は動きを止めた。
「……人を待たせ過ぎじゃないか?」
ランプを手にしたさっきの男性達がゾロゾロと歩いて来る。……少し人数が増えてるようだな。その最後尾にはミンナの姿もある。
「遅ぐなってわりがった。意見がながながまどまらねでな」
「じゃあ、そのまとまった答えを聞かせてくれ」
正面に立つ男性はじっと俺を見ながら言う。
「おめの頼み、聞いでける」
思わず拍子抜けした。断られる雰囲気を感じて拝み倒す心の準備もしてたのに、まさか了承してくれるとは。
「いいのか?」
「呪い解ぐだめなんだべ? それはおいがだも望んでらごどだ。それに、ミンナ本人も血あげでえっつってらしな」
そう言って男性が後方へ目をやると、ミンナがスッとこっちへ近付いて来た。
「必要なだげ、血たがいで行ってたんせ」
「指を少し切って痛い思いをするが……」
「切り傷ぐらい、何でごどねわ」
言葉通りの笑みを見せたミンナに俺は安堵した。
「本当に助かる。協力してくれてありが――」
「ただし、こっちの言うごども聞いでもらうぞ」
男性の低い声がすかさず言ってきた。……すんなり了承しすぎとは思ったが、やっぱりそういうことか。
「あんた達が協力してくれるなら、こっちも協力するよ。で、何をしてほしいんだ?」
「おがれるっていう木は、ごごでおがれるんだ」
「え? この森の中で木を育てろって……何でまた? どこで育てたって影響は大して変わらないと――」
「そんたごどじゃねえ。おめの頼みは聞ぐが、んだんてって全部信じだわげでね。仲間の多ぐはまだ疑いたがいでら。それでも呪いがら解放してける可能性があるだばど協力するごどにしたんだ」
ミンナを殺そうとした俺はまだ信用されてない……それが何時間も待たされた理由か。
「おがれる木も、どんたものがわがったもんでね。花ど同じように、おいがだどご呪う木だったら、わがった時にすぐ焼いで炭にする」
「呪いの木なんかないし、あんた達をさらに呪う理由もないよ」
「そいだば、木こさ植えで、おいがだが見張っても問題ねべ?」
「そりゃ、そうだが……」
「じゃあその通りにしてもらう。これで話は決まりだ」
これを呑まなきゃ巫女の血が貰えないしな……まあいいか。
「……わかった。だがここに植える以上、その育ち具合を見に来なくちゃならない。それは許してくれよ」
男性は一瞬、周りの仲間と顔を見合わせたが、すぐにこっちへ向き直る。
「見に来るのがおめだげならえべ。それ以外の王国人は入れね」
それって、俺が実質一人で木を育てなきゃならないんじゃ……そんな重い責任、背負いたくないんだが。
「こ、これは、あんた達のためにもなることだ。ずっと木の側にいられるんだから、枯らさないようにちょっとは面倒見てくれるだろ?」
「そのぐらいは協力してける。葉食われねように動物除げはしておぐ」
「ならちょっとは安心だ。……それじゃ、俺はひとまず材料を調達に行って来る。ミンナの血は戻った時に頼むよ」
「わがったわ。こっちは木植える場所準備しておぐ」
ミンナと男性達に見送られて俺は足早に森を抜けた。野原に出ると薄雲の浮かぶ空は光を消して群青色に染まってた。はあ、今から城へ行かないと。朝から晩まで仕事続きだ。だがこれも自由を得るため……上手く行くと信じて進むしかない。この苦労はきっと報われる。そうならないと困る。俺も、ミカも、王妃も。あとあのジイさんもな……。とりあえず街で腹ごしらえしてからミカに報告しに行くか。
空腹を満たしたその後、俺は城にいるミカに巫女の血を確保できることを伝え、材料集めを進めるよう言った。しかしミカはそんなことを言われるまでもなく、残り三つをすでに揃えてた。植木屋でシロガネノキ――通称破呪の苗木を、城内の聖堂で聖水を、そしてジイさんの真っ白な髪の束。術者の身体の一部はこれでいいらしい。木を森に植えることになった経緯を話すと、ミカは予想通り、ならば貴様が責任を持って植え、育てろと言った。どうしても森には近付きたくないらしい。先住民が呪いをかけるっていう怖い迷信をなかなか忘れられないんだろう。困ったやつだ。やっぱり俺一人が働くことになるようだ。
朝を迎えた翌日、俺は材料を載せた荷馬車でスレカンタの森の手前まで送られ、そこからは自力で運んで森の中へ入った。するとすぐに先住民達に出迎えられ、木を植える場所へ案内された。そこは以前に見た、祭壇が置かれた場所だった。その真ん前の開けた空間に植えろということらしい。地面にはすでに先住民が掘った穴があった。俺はそこに苗木を植え、根元に聖水を振りかけ、ジイさんの白髪の束を置く。そして最後に――
「……ミンナ、頼む」
仲間と共に側で作業を見てたミンナに言うと、彼女は少し緊張した面持ちで苗木の横にかがみ、持ってたナイフを取り出す。
「数滴で、えのね」
「ああ。根っこに垂らしてくれればいい」
ナイフを握り締めたミンナは、左手の小指の腹に刃を押し付けると、意を決して切った。シュッと撫でるように刻まれた赤く細い線からじわりと血が滲む。それが玉となり、小指を伝うと、真っ赤な雫は苗木の根に吸い込まれていく。一滴、二滴、三滴……と、ミンナは傷口を締め付けて血を流してくれる。
「……もう十分だろ。ありがとう」
痛みに顔をしかめるミンナを止めると、すぐに安堵の表情に変わる。これで材料は全部入れた。俺は先住民と一緒に土をかけ、しっかり植わったのを確認して一息吐く。
「これで終わり……?」
傷口を布で押さえながらミンナが聞いてきた。
「俺ができるのはな。だが終わりじゃなくて始まりだ。本当に呪いが解けるのか……それまで枯らさずに育てなきゃならない。五年以上は」
「おいは花ど野菜おがれでいるがら、この木もしっかりおがれで見せるわ。んだんて心配しねで」
「そう言ってくれると心強いよ。俺は植物なんて水あげて日に当てることぐらいしかわからないからさ。あんた達を頼りにさせてもらうよ」
「ええ、任せで。……五年後、おいがだの望み通りになってらどえんだども」
足下で伸びる枝に優しく触れながらミンナは言う。その声には不安と期待が入り混じってる。俺もまったく同じ心境だ。五年後、王妃と彼女達の歓喜の声を聞けるのか、それとも、何一つ変わらない無駄な時間になるだけか……今は誰にもわからない。だが俺はやれることはやったんだ。あとは気長に待つしかない。五年後を……はあ、自由を取り戻すのが、こんなに時間のかかることだとはな。だが無実の人間殺すよりはましか。呪いから皆を救って、俺は悠々自適に隠居暮らしができるのか……それは神のみぞ知る、だな。
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