牧地 幻妻
正直、どの先生が自分の担任かなんて……。いやわかる、あいつだ。明らかに周りはハゲのおっさんや、いかしてない男性教師、普通の容姿の女性教師に対し、そいつだけは少し長い紫髪を緩くひとつにまとめた髪型に、お世辞でもお洒落とは言えないど派手なカラフルなシャツを着ている。
あの見た目だと、どうやら先生も攻略対象に入るらしい。生憎俺からすれば、攻略対象外になるのだが。
「あーっと、先生……?」
「ん? あ、御竿ちゃんじゃない。どう、体調は。元気にやれそうかしら?」
なんだこの話し方は。こんな(失礼)奴も攻略対象なのか? 女子の趣味はよくわからん……。
机の上に数学の教科書が並べられているのを見るに、どうやら俺の担任は数学教師らしい。これもよくある設定だ。教科書にはご丁寧に名前も書かれていて、
ちなみにこれが女性教師だと、大抵は現文か保健医か。俺の好みは音楽教師だが、そのどれもに共通しているのは、デカいということ。何が? それはお決まりのアレである。
「ま、まぁ、それなりに。そうだ、プリントがあるって聞いたんですが」
「そうそう。大したことじゃないんだけどね。生徒会に出す生徒を決めないと駄目だったんだけど、皆の推薦でね。今年は御竿ちゃん、貴方に決まっちゃったの。そのことで生徒会からお知らせが」
「ままま待ってくださいよ! それ推薦じゃなく、ただの押しつけですよね!? なんで俺、じゃなく僕が!?」
一応ゲームといえど、相手は先生で俺は生徒だ。敬語を使うのが当たり前とはいえ、勝手にそういうことを決めないでほしい。てか、俺いつ復学するかわからないのだし、そこは慎重に決めるべきではないだろうか。
「だって御竿ちゃん、部活に入ってないでしょう? 太刀根ちゃんは剣道部、猫汰ちゃんも柔道部で忙しいし。帰宅部の御竿ちゃんにはうってつけな役割じゃない? 本当は帰宅部のままだと嬉しいんだけど。ね……?」
その含みのある言い方はとりあえず無視して、俺は自分に言われた言葉を繰り返す。
「帰宅部……っすか」
一応友達? らしい二人は部活に入ってるが、自分は入っていなかったようだ。確かに体つきからしても、運動部に入っているような感じではなかったが、それだけで生徒会に抜擢されてしまうとは。
「あの、俺、生徒会とか、よくわかんないんすけど……」
先生は「大丈夫!」と何枚かのプリントを俺に渡してきた。なんだ? “生徒会年間行事表”?
「今日の放課後、今期の顔合わせがあるから出席しましょ? 安心して。会長ちゃんは頼れる子だから。ねっ?」
「あ、はは……っす」
年間行事の紙とは別に、生徒会会議の日程も記載された紙を渡されて、俺はもうどうにでもなれと苦笑いをするしかなかった。
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