第16話 拝謁

いくばくの時間が過ぎて、アルベルト達は王宮の外延部にある庭園に通された。

フレドリック男爵のその兵士、罪人たちもいる。

あくまでも公式の拝謁では無いと言う形を取っている。

国王はわずかな従者と護衛の騎士数名を連れている。

「ヘンドリック、久しいな」

「国王陛下にはお変わりも無く」

国王は愉快そうに笑う。

「公式の場ではない。堅苦しい挨拶は無しじゃ。オークとの戦いのとき以来か。あの時の殿になって戦ってくれた事忘れてはおらぬぞ」

「ありがたいお言葉、身に余る光栄です」

「う、そこにいるのはアルベルトでは無いか?殿部隊の再後衛で戦ってくれたと聞いておる。そちにも感謝するぞ」

アルベルトは頭を深々とさげる。国王陛下からみると家臣の家臣、直接会話をして良い身分ではない。

「固くなるな、アルベルト。非公式の面会じゃ。言葉を発して良いぞ」

「あの戦いはヘンドリック男爵の指揮の巧みさ故、私はご命令道理に戦っただけです。全てはヘンドリック男爵の武功でございます」

部下より功績の劣る主君は尊敬をされない。アルベルトは窮地に立っている。男爵からしたら、どのような返答でも面白くない。殿を務めたと言っても、戦ったのはアルベルトだけ。男爵は部隊を整えると言う意味で、部隊を後方に下げていた。そこを褒められてもうれしくない。しかも功績の大きい部下を持つと面白くも無い。国王は分かっているのだが、その様に話すしか無かった。アルベルトは主君とのいらない争いの為に自分を巻き込んでくれるなと言いたいがぐっと我慢している。

「国王陛下、お久しぶりにございます。大地の巫女にして命の刈り取り手ファーナです。今回はアルベルト殿ご尽力があって、助けられました」

「ファーナ殿、ご心配しておりましたぞ。大司祭の身にある方が神殿を離れないでください。政治的にまずい事になりますぞ」

国王は国王としての権利を制限してくる神殿に嫌味を言っている。

「国王陛下のご意向と方が届かぬ所で悪事が働かれているのでつぶしに行ったまでですわ、巡行と何もかわりませんわ。それにアルベルト殿のご助力もありましたゆえ」

アルベルトは内心で汗をかいている。国王と神殿の権力争いに巻き込まれて、主君より功績があるように言われては、ヘンドリック男爵の面目が丸つぶれだし、これからの主従関係に問題が出る。ほんとに止めて欲しいと内心で強く思っている。

しかし、国王も権力と忠誠を中心を生きて来た国王だった。

「ヘンドリックよ、良い部下を持ったな。アルベルト、良くヘンドリックに使えるのだぞ」

ヘンドリック男爵のメンツを立てて、アルベルトを褒める事によりファーナから発言を無効化したのである。

ヘルメットを脱ぎ、フードを降ろした状態のアルベルトにある事に気づく。

「アルベルト、その青色のペンダントはどうしたのじゃ、特別に発言を許す」

家臣の家臣に当たるアルベルトが発言するにはヘンドリック男爵の許可がいる。しかし、国王陛下の答えなければ不敬に当たる。その為に特別な許可を国王は出している。

「ファーナ様から頂いた呪いのペンダントと聞いております」

国王はからからと笑う。

ファーナは涼し気な顔だった。

「呪いか、そうじゃな。呪いと言えば呪いじゃろうな」

そう言いからからと笑う。一通り笑った後に国王は言う。

「ヘンドリック、お主の兵たちに囲まれた薄汚い奴らななにものか?」

「荒野で神官をさらっていた誘拐の実行犯です。何か情報があるかと思い引き渡しに来ました」

「侍従長、警察長官と警察官を連れて庭まで来るように伝えよ。ヘンドリック良い功績を上げたな。後で褒美を取らそう」

「ありがたき幸せでございます」

「そろそろ、執務に戻る。ヘンドリックご苦労だったな」

「全ては国王陛下のために」

「ありがたく思うぞ。侍従長、警察長官とその部下が来て引き渡すまでヘンドリックに付き合ってくれ。お茶でも飲んで行くと良い」

そう言い国王は王宮に戻って行った。

全ての人のメンツを立てて、その上に君臨する。俺にはできない芸当だなと思うアルベルトであった。

                                   s続く

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