第15話 王都へ

アルベルトは相変わらず、男爵の旗を抱えたまま、王都まで行進を続けた。

ここまで1週間ファーナとアルベルトは話す事は無かった。

ファーナがアルベルトだけを特別扱いをしている事に兵士が不満を持ち始めたからだ。

アルベルトはその辺りの空気は読める。

ファーナも大司祭としての地位にあるので、不満などに関しては敏感だ。

だから二人は話す事無く、王都までの1週間を過ごすのだった。

アルベルトは王都に着くと、門番に話しかける。

王都の門を通る時に小さいなりにも軍隊を率いているために門番を務める騎士に質問を受けた。

「ヘンドリック男爵様の一行です。連続神官誘拐事件の犯人を捕らえました。国王陛下にお目通りを願います」

門番役の騎士は、兵士に紋章官を読んで来いと命令を出した。

紋章官は貴族の紋章と名前を覚えておく重要な役回りだった。戦場で誰が功績を上げたのか、貴族の軍勢はどこにいるのかを確認するための役職だ。

約束を取り付けていない謁見、確認と連絡が面倒なことなので、兵士たちも慣れている。

約束を取り付けるためのヘンドリック男爵の軍勢には騎士がいなかった。

最低限の兵士を連れてきたためだった。

そこにファーナがやって来る。

「門番さん、私は大地個の巫女にして命の刈り取り手、大司祭のファーナです。国王陛下に謁見を求めます」

ファーナも強権を使って謁見をしたい訳では無かった。アルベルトが困っているので助けてあげたいなと思っての事である。

紋章の魔法を使い、自身の身分を明らかにする。

そこへやってきた紋章官がヘンドリック男爵の軍勢である事とファーナの紋章を見て間違いない事を確認した。

「ヘンドリック男爵様にお伝えもらえますか?重ね重ねの無礼を申し訳ありませんが、王宮に送った伝令が帰ってくるまで城の外でお待ちいただけないでしょうか?」

「はい。分かりました。伝えてきます。ファーナ様はどうなさいますか?一度神殿に戻られますか?」

「いいえ、この事件の証人でもあり、被害者でもありますので国王陛下に謁見したいものです」

ファーナも大司祭だった。国王の権力に神殿の権威が落ちない様に対処するのも大司祭の仕事なのである。子供の様でもこの辺りは抜かりが無かった。

アルベルトはヘンドリック男爵に事態を伝える。

やはり、いつもの事なので、街道から外れて、兵たちに大休止の命令を出した。

これからが一仕事だぞとアルベルト言い聞かせて休むのだった。   


                                  続

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る